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第7回 残留農薬の検査にはどんな種類がありますか【農薬について知ろう】
農薬の安全性が気になる人の不安を解消すべく、残留農薬を中心に、農薬の使用目的や安全性、検出法などについて、サイエンスライターの佐藤成美がシリーズで解説していくこの連載。第7回では、残留農薬の検査の種類を解説します。
行政検査と民間検査がある
平成15年(2003年)の食品衛生法の改正にともない、ポジティブリスト制度が施行されて、基準値を超えた作物や食品の販売・輸入が禁止されるようになりました。消費者の安全志向も高まり、残留農薬の検査がますます重要になっています。
検査では、一律基準が設けられたことから、これまで検査の必要がなかった農薬や、一律基準レベルにあわせた高精度、高感度な分析が求められています。
残留農薬の検査は行政が行う行政検査と民間の検査機関などが行う自主検査に分けられます。行政検査は食品衛生法によるもので、国内を流通する農作物や食品については都道府県など地方自治体が、輸入食品については輸入時に国の検疫所が担当します。これらは、年度ごとに監視指導計画にもとづいて行われています
収去検査
行政が行う検査を「収去検査」といいます。収去とは、とりさること、集めて取り除くことを意味し、簡単に言えば抜き取り検査のことです。保健所にいる食品衛生監視員が、量販店などを回り、販売されている農作物を一部持ち帰ります。それらの残留農薬を調べ、もし基準値を超えていたら、その農作物は流通できなくなります。生産者に対して、農薬を適切に行うよう指導を行う場合もあります。
たとえば、東京都では、令和元年度(2019年度)に、農作物や340品目検査し、71品目から26種類の農薬を検出しましたが、基準値を超えたものはありませんでした。
*令和元年度国内産農産物等の残留農薬検査結果(東京都)
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/z_nouyaku/kekka/files/kokusan31.pdf
また、農林水産省では、国内農家を対象に、農薬の使用状況や残留状況について調査しています。平成30年度(2018年)は、476戸の農家で調査が行われ、476検体の残留農薬が検査されました。うち、残留農薬の基準値を超えたのは2検体でした。
*国内産農産物における農薬の使用状況及び残留状況調査の結果について(平成30年度):農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/press/syouan/nouyaku/200515.html
輸入食品の検査
輸入食品の場合、日本の港や空港に着いた時点で、厚生労働省の検疫所で残留農薬を調べます。担当するのは検疫所に配置されている食品衛生監視員です。
食品を輸入するとき、輸入業者はその都度輸入届出を提出しなければなりません。そこで、まずはその届け出にもとづいて書類審査が行われ、食品衛生法の規制にあっているかどうか確認し、合格すれば輸入が認められます。
過去の違反状況などをふまえ、違反の可能性の高い食品については検査が命じられます。検査命令が出れば、検査に合格するまで輸入は認められません。それ以外の検査を命じられた食品以外の食品は、モニタリング検査が行われます。監視指導計画に基づいた、抜き取り検査です。基準値を超えるなどの違反がみつかれば、その食品は輸入できなくなり、回収されます。令和2年度(2020年度)は、235万件の届け出のうち、20万件の検査が実施されました。違反事例は691件で残留農薬違反は137件でした。
参照
https://www.mhlw.go.jp/content/11135200/000824506.pdf
自主検査
農作物などを扱う事業者が、安全性を確認するために自ら行う検査です。消費者の安全性への関心が高まる中、自分たちの扱う農作物の安全性を確保し、付加価値を高めるために行っています。食品衛生法第3条でも、「食品等事業者による自主検査の実施及び危害の防止に必要な情報の記録保存に関する努力義務」が規定されています。
筆者佐藤成美(サイエンスライター) |