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疑惑のラウンドアップ裁判 – グリホサートの真実とは2【完全版】(vol.2)

食と農のウワサ

生産現場のリアルな声を発信する日本有数の農業チャンネル「トゥリーアンドノーフ」を運営する徳本修一氏が、グリホサート問題の歴史的経緯から背後で蠢くビジネス人脈、科学的評価や対立の解決法まで、食の安全安心の権威・唐木英明氏に聞きまくった1時間。グリホサートの真実とは2【完全版】をAGRI FACT用に再構成してここにお届けする!(vol.2)

疑惑のラウンドアップ裁判

徳本 ここから実際に、我々のYou Tubeチャンネルの番組に寄せられた実際のコメントを見ながら質問させてください。まずよくあるのがラウンドアップは裁判で敗訴している。裁判で危険性が立証されたということではないかという声が多いです。

唐木 米国のラウンドアップ裁判で被告のバイエル(旧モンサント)が負けたのは事実です。しかし実際に裁判の経緯を詳細に見てみると、2015年にIARCがグリホサートをグループ2Aに分類したと発表した数日後に米国の法律事務者が原告の募集をかけ始めているんですね。コロナ禍以前は私もよく渡米していたのですが、「もう何百もの訴訟が起こっています。いますぐ行動しよう」というような宣伝・CMを、テレビ、ネット、YouTubeなどで流していました。

【編集部註】米国の弁護士事務所は先に深刻な人身被害があって、その救済のために訴訟を起こしたわけではない。実はIARCの評価を受けて多額の賠償金が取れそうな案件を見つけたので、訴訟を起こすためにラウンドアップに長年接触した原告を探した「訴訟ビジネス」であった、というのが実態である。

裁判の結果がどうなったのかというと、今まで判決の出たジョンソン裁判、ハードマン裁判、ピリオド裁判の3つでは、最初が320億円、次に88億円、最後は2200億円という高額な賠償の判決が出ています。これは事実です。そしてまたバイエル社は約1兆円の和解金で12万5000件の訴訟を和解しようとしている。これも事実です。

【編集部註】子どもが発症したがんに関してバイエル社を提訴し、和解の枠組みから外れたカリフォルニア州の訴訟で、2021年9月に被告バイエル社勝訴の一審判決が下った。10月5日のロイターによると、 カリフォルニア州の陪審員は除草剤ラウンドアップが子どものまれながん(非ホジキンリンパ腫)の実質的な原因ではないことを認め、ラウンドアップががんを引き起こすと原告が主張する裁判に初めて勝訴したと、バイエル社が明らかにした。原告のクラーク氏はバイエル社が所有するモンサントを、ラウンドアップ使用による発がん性リスクを警告しなかったとして訴え、息子が家族の住居で雑草に散布したラウンドアップに曝露された結果、がんを発症したと主張していた。バイエル社は声明の中で「この判決はラウンドアップの主成分であるグリホサートの安全性を示す数十年にわたる科学と研究と一致している」と述べた。

【出典】バイエル社、子供の癌に関する訴訟で初のラウンドアップの陪審員評決を獲得

 

クラーク裁判の判決に関する裁判所の公開議事録によると判決は、
https://usrtk.org/wp-content/uploads/2021/08/Clark-v-Monsanto-motion-for-summary-judgment.pdf
「モンサントは、製品やラベル内容について、変更が必要となるようなエビデンスを持っていなかった。EPA(米国環境保護庁)から発がん性の警告を入れるような要請もなかった。EPAは2019年にカリフォルニア州に対して、消費者をミスリードするような(発がん性を警告する)ラベル案を止めるように要請している」。以上の理由により、連邦法優先の規定に従い、原告の訴えは退けると結論づけた。

グリホサートの真実とは<2> -「食の安全」の世界的権威に聞いてみた!〜完全版

 

【グリホサートの真実とは2】記事一覧

プロフィール

唐木英明(公益財団法人食の安全・安心財団理事長 東京大学名誉教授)
徳本修一(トゥリーアンドノーフ株式会社代表取締役)

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