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【誤り】検証内容「(輸入小麦が原材料のパンに)残留したグリホサート(ラウンドアップの主成分)の生殖器官への影響は10億分の1レベルの微量でも出てしまうので、極力体内に入れてはいけない」印鑰智哉氏(日本の種子を守る会アドバイザー))
「(輸入小麦が原材料のパンに)残留したグリホサート(ラウンドアップの主成分)の生殖器官への影響は10億分の1レベルの微量でも出てしまうので、極力体内に入れてはいけない」印鑰智哉氏(日本の種子を守る会アドバイザー)
AGRI FACTによるファクトチェック結果
その理由は?
1) グリホサートは低濃度であれば毒性が見られない(無害)ことが科学的に証明されているため。
2) 10億分の1レベルという低濃度のグリホサートが生殖器官に与える影響を調べた科学論文は存在しないため。
AGRI FACTのファクトチェック【対象と選択基準】
AGRI FACTのファクトチェック【評価基準と判定】
以上の要旨はAGRI FACT事務局が作成したものです。
詳細は以下でご確認ください。
農業にまつわる噂・ニュースの真偽検証サイトAGRI FACT(アグリファクト)は2020年1月31日、「(輸入小麦が原材料のパンに)残留したグリホサート(ラウンドアップの主成分)の生殖器官への影響は10億分の1レベルの微量でも出てしまうので、極力体内に入れてはいけない」印鑰智哉氏(日本の種子を守る会アドバイザー)との投稿についてファクトチェックを行い、「科学的根拠なし」とする調査結果を発表した。
ファクトチェックした記述内容
「(輸入小麦が原材料のパンに)残留したグリホサート(ラウンドアップの主成分)の生殖器官への影響は10億分の1レベルの微量でも出てしまうので、極力体内に入れてはいけない」
記述内容の原文(検証対象は太字部分)と出典
今回(※輸入小麦を原材料とする食パン9製品・菓子パン2製品から0.05ppm~0.23ppmのグリホサートが)検出された残留量は低いではないかという人もいるかもしれない。しかし、たとえば生殖器官への影響はbpm(10億分の1)という単位で影響を与えてしまう。低いから安全ではなく、極力体内に入れない、としなければならないものである。
特にこれから子どもを作ることを考えているカップルはなんとかして輸入小麦を避けていただきたい。
印鑰智哉氏(日本の種子を守る会アドバイザー)のブログ(2019年4月16日)
http://blog.rederio.jp/archives/4114
※AGRI FACT事務局による補足
ファクトチェックの検証結果
文献検索サイト「PubMed」※で検索したところ、人のモデルとして広く用いられているラットの生殖器官に対するグリホサートの影響を調べた論文は21報見つかった。それらの実験に使われたグリホサートの濃度を調べたところ、約半数の実験で0.5㎎/㎏から5㎎/㎏(0.5ppmから5ppm)、残りの約半数で50㎎/㎏から500㎎/㎏(50ppmから500ppm)を使用していた。
ブログに書かれている「bpm」という濃度単位は存在しないので、これはppm(100万分の1)のさらに1/1000の量であるppb(10億分の1)の誤りであろうと推測される。ppbであるとして検証を進めるが、見つかった論文の実験においてppbレベルという低濃度のグリホサートを使用した例は見つからなかった。
化学物質には「用量作用関係」というものが存在し、高濃度では毒性があるものであっても、低濃度であれば毒性は見られない(無害)のが通例である。多くの実験からグリホサートにもこの原則が当てはまることが科学的に証明されている。
以上の理由から、「生殖器官への影響は10億分の1という単位で影響を与えてしまう。低いから安全ではなく、極力体内に入れない、としなければならないものである」「特にこれから子どもを作ることを考えているカップルはなんとかして輸入小麦を避けていただきたい」という記述には科学的根拠がないと判断される。
なお、世界中の規制機関が繁殖試験を経て農薬としての使用を認めているグリホサートの親・子・孫3世代にわたる影響に関しては、ファクトチェックの【科学的根拠なし!】検証内容「グリホサート(ラウンドアップの主成分)はラットの実験で2代3代と、代を重ねるごとに異常が増幅される」を参照されたい。
※PubMedは米国国立医学図書館(NLM)が作成する、MEDLINを含む医学分野の代表的な文献情報データベース。MEDLINEでは世界中の5,600誌以上の雑誌に掲載された文献情報を検索できる。