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【誤り】検証内容「(子どもが)理由がないのに突然怒り出すのは、グリホサート(ラウンドアップの主成分)との因果関係があるのではと検査した。腸の粘膜に小さな穴が開くリーキーガット症候群により、真菌クロストリジウムが脳神経の炎症を引き起こしている可能性がある」山田正彦氏(元農水大臣)
「(子どもが)理由がないのに突然怒り出すのは、グリホサート(ラウンドアップの主成分)との因果関係があるのではと検査した。腸の粘膜に小さな穴が開くリーキーガット症候群により、真菌クロストリジウムが脳神経の炎症を引き起こしている可能性がある」山田正彦氏(元農水大臣)
AGRI FACTによるファクトチェック結果
その理由は?
1)医学界には腸の粘膜に小さな穴が開く「リーキーガット症候群」という考え方がないため。
2)健康な状態の子どもで、真菌クロストリジウムだけが消化管から体内に侵入して、脳神経の炎症を引き起こすことは医学的にあり得ないため。
AGRI FACTのファクトチェック【対象と選択基準】
AGRI FACTのファクトチェック【評価基準と判定】
以上の要旨はAGRI FACT事務局が作成したものです。
詳細は以下でご確認ください。
農業にまつわる噂・ニュースの真偽検証サイト AGRI FACT(アグリファクト)は、2019年11月30日、「(子どもが)理由がないのに突然怒り出すのは、グリホサート(ラウンドアップの主成分)との因果関係があるのではと検査した。腸の粘膜に小さな穴が開くリーキーガット症候群により、真菌クロストリジウムが脳神経の炎症を引き起こしている可能性がある」山田正彦氏(元農水大臣)との記述についてファクトチェックを行い、「科学的根拠なし」とする調査結果を発表した。
ファクトチェックした記述内容
「(子どもが)理由がないのに突然怒り出すのは、グリホサート(ラウンドアップの主成分)との因果関係があるのではと検査した。腸の粘膜に小さな穴が開くリーキーガット症候群により、真菌クロストリジウムが脳神経の炎症を引き起こしている可能性がある」
記述内容の原文(検証対象は太字部分)と出典
当時のホダイ君(次男)は理由もないのに突然怒り出したり、騒ぎ出したり、また学校の成績も急に下がったりしており、ゼン(ハニーカット)さん夫妻や兄弟たちは戸惑っていた。小麦とともに摂取したグリホサート(ラウンドアップの主成分)との因果関係があるのではないだろうかと考えたゼンさんは、すぐにホダイ君を病院へ連れて行って検査を受けさせた。
その結果、腸の粘膜に小さな穴が開くリーキーガット症候群を発症し、腸内にはクロストリジウムと呼ばれる真菌が大量に繁殖していることが判明した。腸壁に開いた穴から体内に取り込まれたクロストリジウムが、脳神経の炎症を引き起こしている可能性を医師から指摘されたという。
出典:山田正彦『売り渡される食の安全』(角川新書、2019)166頁
ファクトチェック検証結果
検証プロセス
① 腸の粘膜に小さな穴が開くリーキーガット症候群という考え方は医学界には存在しない。医薬品や病気により腸が漏れやすくなることはあるが、これは医学的には“消化管の透過性の増加”と言い、「粘膜に穴が開く」こととは意味が違う。
② 消化管内には、多種で多数の腸内細菌が生息している。それらが消化管壁を通って、体内に侵入することはない。仮に消化器粘膜に穴が開いて、消化管内に生息する多種多様な腸内細菌が体内に侵入したとなれば、「敗血病」と呼ばれ、時に死に至るような重篤な症状を引き起こす。
③ したがって、健康な子どもで消化管に穴が開いてクロストリジウムが体内に侵入する可能性は、医学的にあり得ない。
腸内細菌と自閉症の関係を文献検索したものであり、タイトルにあるようにグリホサートとの関係は単なる著者の仮説である。具体的には、「クロストリジウム属の腸内細菌の増加と自閉症には関係がある」という論文と、「家畜や実験動物の消化管でグリホサートがクロストリジウム属の腸内細菌を増やす」という論文がある。しかし。この2つをつなぎ合わせた単なる仮説の段階であり、科学的には証明されてはいない。もし証明されていたら、グリホサートの使用は世界的に直ちに禁止になっているはずである。
つまり、「腸の粘膜に小さな穴が開くリーキーガット症候群」と、「腸壁に空いた穴から体内に取り込まれたクロストリジウム」という2つの言説には科学的根拠がない。
ゆえに、「(子どもが)理由がないのに突然怒り出すのは、グリホサート(ラウンドアップの主成分)との因果関係があるのではと検査した。リーキーガット症候群により、真菌クロストリジウムが脳神経の炎症を引き起こしている可能性がある」は「科学的根拠なし」(評価基準と判定)と判断される。