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【誤り】検証内容「豚のへその緒に(ラウンドアップの主成分グリホサートが)蓄積するということは、人間にも起こりうることを意味する。もし妊娠している女性が摂取すれば、へその緒を介して胎児にも深刻な影響を与えかねない」山田正彦氏(元農水大臣)

食と農のウワサ

「豚のへその緒に(グリホサートが)蓄積するということは、人間にも起こりうることを意味する。もし妊娠している女性が摂取すれば、へその緒を介して胎児にも深刻な影響を与えかねない」 山田正彦氏(元農水大臣)

AGRI FACTによるファクトチェック結果

科学的根拠なし

その理由は?

グリホサートがへその緒に蓄積するという科学的根拠がないため。

AGRI FACTのファクトチェック【対象と選択基準】
AGRI FACTのファクトチェック【評価基準と判定】


以上の要旨はAGRI FACT事務局が作成したものです。
詳細は以下でご確認ください。

農業にまつわる噂・ニュースの真偽検証サイト AGRI FACT(アグリファクト)は、2019年11月30日、「豚のへその緒に(ラウンドアップの主成分グリホサートが)蓄積するということは、人間にも起こりうることを意味する。もし妊娠している女性が摂取すれば、へその緒を介して胎児にも深刻な影響を与えかねない」(山田正彦氏(元農水大臣)との記述についてファクトチェックを行い、「科学的根拠なし」とする調査結果を発表した。

ファクトチェックした記述内容

「豚のへその緒に(グリホサートが)蓄積するということは、人間にも起こりうることを意味する。もし妊娠している女性が摂取すれば、へその緒を介して胎児にも深刻な影響を与えかねない」

記述内容の原文(検証対象は太字部分)と出典

たとえば17(2017)年にはジフテリア、インフルエンザ、B型肝炎、肺炎球菌、はしか・おたふく風邪・風疹の新三種混合の5つのワクチンからもグリホサート(ラウンドアップの主成分)が検出されたことを公表。ワクチンを接種する対象となる、小さな子どもたちをもつ母親たちを中心に衝撃を与えた。

ワクチンには効能を安定させるためのゼラチンが含まれていて、ゼラチンは豚のへその緒から精製される。しかし、豚の餌として遺伝子組み換えトウモロコシが使われていたことで、へその緒にグリホサート(ラウンドアップの主成分)が蓄積するに至ったことを、マムズ・アクロス・アメリカが検査を依頼したミズーリ州セントルイスの研究機関が突き止めた。

豚のへその緒に蓄積するということは、人間にも起こりうることを意味する。もし妊娠している女性が摂取すれば、へその緒を介して胎児にも深刻な影響を与えかねない。
出典:山田正彦『売り渡される食の安全』(角川新書、2019)171頁

ファクトチェックの検証結果

「ワクチンからグリホサートが見つかった」との記述は科学的根拠が不明で、さらなる検証が必要

マムズ・アクロス・アメリカ(遺伝子組み換え作物に反対する母親の会、ゼン・ハニーカット代表)は、ワクチンにppb(10億分の1)レベルという微量のグリホサートが混入していると発表した(※1)。しかし、同時に、それほど微量な量を測定することは困難であり、測定結果が必ずしも正確ではないことを示唆している。その後、この発表と同様の内容の論文(※2)が発表されたが、これについてはモンサント社の専門家が方法論に問題があると批判したことを英国のファクトチェック組織が紹介しており、本当に微量のグリホサートがワクチンに混入しているのかに関してはさらなる検証が必要である。

「豚のへその緒にグリホサートが蓄積するに至った」との論文はなく、推測に過ぎない

「豚の餌として遺伝子組み換えトウモロコシが使われていたことで、へその緒にグリホサート(ラウンドアップの主成分)が蓄積するに至ったことを、マムズ・アクロス・アメリカが検査を依頼したミズーリ州セントルイスの研究機関が突き止めた」という記述については、文献検索により、そのような科学論文は見つからなかった。マムズ・アクロス・アメリカの報告書1によれば、この記述は「Dr. Stephanie Seneffの推測」として紹介され、そこには「豚のへその緒(umbilical cord)」ではなく「牛のじん帯(ligaments)」と書いてある。他方、報告書1の翌日の2016.9.6付の報告書2には、同じく「Dr. Stephanie Seneffの推測」として「豚のへその緒」ではなく「豚のじん帯」と書いてあり、牛と豚のどちらが正しいか判断できないがいずれも「じん帯」であり、「へその緒」という記述はない。さらに、「ミズーリ州セントルイスの研究機関が突き止めた」という記述はどちらにも見当たらない。

グリホサートが体内に蓄積する可能性はない

食品中の化学物質の安全性を検証する国の専門機関である食品安全委員会の「グリホサート評価書」によれば、ラットにグリホサートを摂取させるとそのほとんどが速やかに糞中に排泄され、投与168時間後には残留していないことから、グリホサートが体内に蓄積する可能性はないとしている。

また、遺伝子組換えトウモロコシに残留しているグリホサートは微量であり、これを食べた豚の組織に、妊婦や胎児の健康に影響を与えるような大量のグリホサートが残留することはあり得ない。ちなみに30000ppmという高濃度のグリホサートをラットに与えても、その影響は体重増加の抑制だけであることが実験的に証明されている。

このように、「豚のへその緒に蓄積するということは、人間にも起こりうることを意味する。もし妊娠している女性が摂取すれば、へその緒を介して胎児にも深刻な影響を与えかねない」という記述は、豚のへその緒にグリホサートが蓄積するという科学的な事実はないことから、「科学的根拠なし」(評価基準と判定)と判断される。

※1:マムズ・アクロス・アメリカの報告書
報告書1. Glyphosate in Vaccines Report 2016.9.5
https://d3n8a8pro7vhmx.cloudfront.net/yesmaam/pages/1707/attachments/original/1473130173/FullGlyphosateinVaccinesReport_(6).pdf?1473130173
報告書2. Glyphosate Found in Childhood Vaccines 2016.9.6
https://www.momsacrossamerica.com/glyphosate_found_in_childhood_vaccines
※2:論文
Glyphosate pathways to modern diseases VI: Prions, amyloidoses and autoimmune neurological diseases. Anthony Samsel and Stephanie Seneff. Journal of Biological Physics and Chemistry 17 (2017) 8–32 doi: 10.4024/25SA16A.jbpc.17.01
https://www.researchgate.net/publication/316601847_Glyphosate_pathways_to_modern_diseases_VI_Prions_amyloidoses_and_autoimmune_neurological_diseases

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