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農薬に関するデマで打線組んでみた!〈パート10〉【落ちこぼれナス農家の、不器用な日常】

農家の声

このシリーズも、ありがたいことにだんだんとSNSや消費者の間で認知されてきているのを感じます。
しかし、紹介し切れていないデマや誤解がまだまだあります。
ということで今回も、
「農薬に関するデマで打線組んでみた!〈パート10〉」
をテーマに、農家の私ナス男が紹介します!

1.(中)フリマサイトで農薬を買えばお得!

フリマサイト、便利でお得ですよね。
最近は本当に色々なモノがフリマサイトで出品されるようになりましたが……
農薬がフリマサイトで売られていたら、注意してください!
なぜなら農薬取締法により、販売登録のない素人が農薬を売ってはいけないことになっているからです。
先日、フリマサイトで農薬を売っていた方が逮捕されたというニュースがありましたね。
お得だからと言っても、素性の知れない相手から農薬を買うことはやめたほうが無難です。

2.(左)オーガニック=安心安全という定義だ!

有機栽培=安心安全。
よく聞くフレーズですし、言いたくなる気持ちも分かりますが……
実はこのフレーズ、「有機栽培の定義」には当てはまってはいません。
2006年に制定された「有機農業推進法」において、

1. 化学的に合成された肥料及び農薬を使用しない
2. 遺伝子組換え技術を利用しない
3. 農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減する

農業生産の方法を用いて行われる農業、と農水省は定義しています。
安心安全とは、有機JASの定義には一言も書いていません。
つまり、定義とは別に後に付け加えられた文言ということです。
たしかに、このシリーズでも度々言及しているように、昔の農薬は人体に被害もあり危険でした。
それに昔の農薬と比べて今の農薬は、適切に使用される限り人体への影響はなく、環境への負荷も少ないです。
有機栽培を否定する意図は、私には全くありません。
有機栽培の野菜も素晴らしい。同じように慣行栽培の野菜も素晴らしいのです。

3.(右)食物連鎖で、農薬は生物濃縮されるから危険!

「川から海へ農薬が流れ出す! そうなると、食物連鎖の過程で、農薬は濃縮されるんじゃないの? 人間が食べる魚は危険かも」

と不安になる消費者の方もいるかもしれません。
昔に使われていた農薬は、生体内への蓄積性が高いと問題になりました。
しかし、これらはすでに日本を含む多くの国で使用が禁止されています。
現在使われている農薬は濃縮率の低いもので、私たちの体への長期的な汚染、蓄積の心配はないとされています。
適切に使用すれば検知すらされないことのある農薬が、生物濃縮されていくとは考えられないというのが、私個人の意見です。

詳しくは、農薬工業会の記事をご覧ください。

4.(一)賄賂をもらって偽科学を広めている御用学者が存在する!

「政府や研究機関に、都合がいい論文を書いている御用学者がいる!」

科学や論文を信用しない方には、このような考えが根本にあるような気がします。
たしかに、偽科学を元にした論文も、100%ないとは言えないでしょう。
ちなみに論文というのは、以下のような段階を踏んでいます。

第1段階:仮説を実験で証明し、それを論文にする。
第2段階:これを論文として投稿する。科学者の査読を受けて認められれば、科学誌に掲載される。
第3段階:科学誌を読んだ多くの科学者が、その内容を検証し、再現性の有無を確認する。多くの科学者から「再現性がある」と認められて初めて「科学的に認められた」と主張できる。

つまり、多くの科学者に検証されて認められる中で、論文の価値は上がっていくのです。
たとえ賄賂をもらって都合のいい論文を書いたとしても、その論文が科学誌に掲載されたからとしても、再現性がなければその論文の内容が正しいとは評価されないということです。
そして間違い科学や偽科学は、農薬危険派の科学者にも存在します。
グリホサートの危険性を主張した、有名なセラリーニ論文がまさにそれですね。

どの論文が正しくて、どの論文が偽科学なのか。
農薬の安全性に関する論文も、多くの検証に耐えられたものを信用したいですね。

5.(二)鳥にワクチンを打つから、鳥インフルエンザが増える

「ワクチンを打てば打つほど、鳥インフルエンザになって殺処分が増えてしまう!」

国内で鳥インフルエンザの発症が確認されたニュースが出ると、同時にワクチンの安全性に対する疑惑も持ちあがってきます。
しかし、この疑惑は間違いです。

国は鳥インフルエンザ用のワクチンを備蓄していますが、
国内で鳥インフルエンザのワクチンを使用した例は2023年現在まで一件も使用した例はないとのことです(中国などの一部の国では使用例はあるようです)。
農水省のワクチン使用に関しての指針は、以下の通りです。

「現行のワクチンは、本病の発症の抑制に効果があるものの、感染を完全に防御することはできないため、無計画、無秩序なワクチンの使用は、本病の発生又は流行を見逃すおそれが生ずることに加え、清浄性確認のための抗体検査の際に支障を来し、清浄化を達成するまでに長期間かつ多大な経済的負担や混乱を招くおそれがある。

また、肉用鶏については、ワクチン接種した場合に、休薬期間に係る食品衛生法(昭和22年法律第233号)上の問題もある。このため、ワクチンの使用については、慎重に判断する必要があり、我が国における本病の防疫措置は、早期発見と患畜又は疑似患畜の迅速なと殺を原則とし、平常時の予防的なワクチンの接種は行わないこととする。」
特定家畜伝染病防疫指針について:農林水産省 (maff.go.jp)

家畜のワクチンに限らず、色々なワクチンをめぐる情報が飛び交っていますが、その情報が正しいかどうかまでチェックしたいものです。

6.(三)ビニールハウスの野菜は、農薬がこもる!

「ビニールハウスは農薬がこもると思うから、気になる方は避けて!」

という主旨の動画を出しているユーチューバーがいます。
この発言は、施設野菜農家には看過できないものです。

「農薬がこもる」とは、具体的にどういう意味でしょうか? 何か根拠があるのでしょうか? ハウス内から農薬の成分が逃げないということ? 雨風に曝されないから、農薬が取れないということ?

温度管理の都合でハウスの換気はしていますし、紫外線によって作物に付着して残留している農薬は分解されていきます。
ハウス内の野菜だから農薬の残留値が高いという話も、施設でナス栽培をしている私でも聞いたことがありません。
それに農薬がこもって危険ならば、施設栽培農家はバタバタ倒れているはずです。
燻煙タイプの農薬もあり、これは使用する時に密閉して充満させる必要がありますが、農薬のラベル通りに適切に使用すれば安全は担保されています。
このユーチューバーに質問をしましたが、この記事が出る現在まで、回答していただけていません。

7.(捕)さつまいもの苗を農薬に漬けている!薬漬けだ!

「サツマイモの苗を、定植前に農薬にドブ漬けしている農家がいる!」

これは、事実です。
燻煙タイプの農薬と同様に、誤解されやすいのが、ドブ漬けタイプの農薬使用です。
散布以外にも色々な種類の農薬があり、サツマイモのドブ漬けは「浸漬」という処理で、れっきとした農薬登録がある使用方法です。
当然収穫するまでには、農薬の成分はほぼなくなります。
安心して、おいしい焼き芋をたくさん食べてください!

8.(遊)メロンの網目は、農薬を染み込ませたタオルでこすることで作られる!

「昔は農薬を希釈した液を染み込ませたタオルや軍手でメロンの球を拭いて、網目を出していた。」

というツイートが話題になりました。
ネットで調べてみると、ある農薬を希釈した水を布に染み込ませてこする「玉拭き」というという作業を、昔はしていた農家もいたようです。
この作業は、メロンの網目をくっきりさせたり、病気からメロンを守るために行われたそうです。

しかし農薬メーカーに確認したところ、現在も過去もこの農薬のメロンに対しての登録は散布のみであり、玉拭きに使用すると農薬取締法に引っかかります。
この農薬で玉拭きをするというネットの情報は、そもそも登録外の違法な使用法です!

9.(投)消費者に農薬の危険性を気づかせるためなら、多少嘘をついてもいい!

「農薬が危険だと消費者に気づかせるためなら、多少嘘をついてもいい!」

と、オンラインサロン運営者がツイートしていました。
これは、とんでもないことだと思います。
事実を捻じ曲げてまで農薬の危険性を伝えたい? 逆効果だと思います。
SNSでは過激な農薬批判が毎日飛び交っていますが、嘘をついてもいいと考えている方がいる以上、あまりにも過激なものは疑った方がいいでしょう。

まとめ

私は科学者ではありませんが、嘘をついてまで農薬の安全性を広めたいという考えはありません。現場の発信者として、事実や農家の考えを嘘偽りなくこれからも書いていきます。

 

【落ちこぼれナス農家の、不器用な日常】記事一覧

筆者

ナス男(ハイパーナスクリエイター「いわゆるナス農家」)

 

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