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農業に関するデマで打線組んでみた!〈パート21〉【ナス農家の直言】

農家の声

今回も、
「農業に関するデマで打線組んでみた!〈パート21〉」
をテーマに、農家の私が農業に関する誤解やウソを正していきます。

1.(中)泥付き野菜に見せかけて出荷している野菜がある!

「泥のような何かを吹き付けている動画があるから、泥付き野菜も安全ではない。」

という投稿が、SNSにありました。
そもそも農家が泥付きで出荷するのは、

  • 泥を完全に落とそうとして過度に洗うことで、作物の表面が傷つき日持ちが悪くなるのを避けるため
  • 鮮度の良さをアピールするため
  • 農作業の省力化のため

などです。

日本の農家が洗ったニンジンにわざわざ「泥っぽいもの」を吹き付けるなんていう、時間と労力のかかることをする理由がありません。
問題の動画は中国産のニンジンだそうですが、泥付きであろうがなかろうが、日本の野菜は安全ですので、ぜひ安心して手に取ってください。

2.(左)大豆を煮ると泡立つのは農薬のせいだ!

「大豆を水煮にしたら、泡立ちがすごかった! これは農薬かも!?」

おそらくこの投稿主は、私と同じく料理の素人なのでしょう。
大豆の水煮の泡の正体は、農薬ではなく、大豆に含まれている「サポニン」というアクの一種の成分だそうです。

このサポニンには、抗酸化作用(活性酸素を除去する働き)があり、中性脂肪の吸収を抑制する効果があります。体に害があるものではありません。
つまり、無農薬の大豆であろうが、煮れば泡立ちます。
どうぞご心配なく、大豆を調理していただきたいですね。

3.(右)農薬を曝露し続けるとメス化する!

「農薬を曝露(ばくろ)し続けると、環境ホルモンのせいで女々しくなってメス化する!」

と主張する人がいます。
たしかに化学物質の中には、生物のホルモンに影響を与える恐れのあるものもあります。

そこで環境省は専門家による「内分泌撹乱化学物質問題検討会」を設けて緊急性の高いと考えられるものから評価しました。

その結果、いずれの物質にも哺乳動物を用いた試験で環境ホルモンの影響の証拠は見つからなかったと報告しています。

つまり、現時点で農薬が人間のホルモンに与える影響は確認されていないのです。

4.(一)ググれば農薬の危険性はすぐに出てくるぞ!

「【農薬 危険】で検索すれば、農薬のヤバさが分かるページがすぐに出てくる!」

と主張する方がいますが、これは検索の仕方が悪いです。
【農薬 デマ】で検索すれば、デマ屋が流している農薬の嘘がトップページにそれなりに出てきます。
たとえば【農薬 デマ】の検索結果の1ページ目

農薬の危険性を迷信している人は、検索結果の1ページ目に自分と同じ主張の記事がたくさん出る快感に浸りたいだけ!
まだまだGoogleは、農薬に関するネガティブな記事や偏った情報が多く上位に表示される印象があります。
Googleに改善してほしいところですが、アグリファクトの記事も上位表示されるように、私ももっと頑張って記事を書くつもりです!

5.(三)AIも農薬が危険だと言っている!

「AIで検索すれば、農薬が危険だと言っている! 人間はごまかせても、機械はごまかせない!」

と、チャット型AIの検索結果を見せてくる人もこれからは出てくるでしょうね。
しかしチャット型AIの特性からでは、農薬の正確な危険性や未来予測をできません。
チャット型AIの文章生成は、インターネット上で学習したデータを基にして、要約した文章を作ることを得意としています。

つまりインターネットには載っていないような、より専門的でより最新の農薬の情報は拾えていない可能性も高いのです。
「農薬 危険」と検索すれば、デマの情報が上位に並んでしまう現状では、チャット型AIは正確な答えを出せませんし、その返答を簡単に信用すべきではないのです。

6.(捕)とんでもない件数の農薬が登録されている!

農薬全体の登録件数がどんどん増えているとの批判もあります。
農薬取締法が制定されてから令和6(2024)年時点までに登録された農薬の累計件数は24,860件ですが、このうち現在登録されている有効登録件数は、4,059件(有効成分数は592種類)となっています。

これだけ聞けば、多すぎると思われる方もいるかもしれません。
登録農薬について語るには、改正農薬取締法の施行により新たに導入された「再評価制度」について頭に入れる必要があります。

業務の概要 – 独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)

再評価制度とは、登録されている全ての農薬について、定期的(15年毎)に最新の科学的知見に基づき、安全性等の再評価を行う仕組みのこと。
新しい農薬が年々登録される一方で、販売量が少なくなったなどの理由で登録失効させる薬剤も少なくないのです。

現在登録されている約4,000件の農薬の中身も、常時入れ替わっていると考えられます。
農薬取締法がなかった昔はたしかに、人体に影響のあるとされる農薬も使われていました。
しかし今現在使われている農薬は、農薬取締法や様々な安全規制機関による検査によって淘汰され、安全が担保されているのです。
登録件数が多いから危険という非科学的な論理は、通用しないのです。

7.(二)オーガニックでも使える農薬が137種類もある!

「有機JASでも、こんなに使える農薬があるとは、安全とは言えない!」

と無農薬信仰の教祖様が不安を煽っていました。
さすがにここまでミスリードしているデマを説明するのもバカらしいのですが……
使える農薬の数=使用した農薬の数ではありません!
そんなに農薬を使っている暇もないですし、全部買ってたら赤字になってしまいます。
有機栽培=無農薬ではないとはいえ、ただただ不安を煽って自身のビジネスにつなげたいだけでしょう。

8.(遊)有機JASで使える農薬が増えているのは新たな利権がらみだ!

「有機栽培で使える農薬がどんどん増えているのは、農薬利権が絡んでいるからだ!」

と不安になる人もいるかもしれません。
たしかに有機JAS規格で使える農薬は増えていますが、利権団体の圧力があるからではありません。
有機JASで使用できる農薬は、日本農林企画調査会という会議で決定されます。
会議の名簿や議事録、基準も全て農水省のHPに載っており、透明性は高いです。

有機JASの農薬が増えているのが不満なら、消費者の不安を煽るのではなく、調査会に意見を言う方がよほど建設的です。

9.(投)農薬メーカーが訴訟を匂わせて言論弾圧している!

日産化学のX(旧twitter)公式アカウントができて、除草剤ラウンドアップに関する悪質なデマに対して訴訟を検討するという投稿がありました。

これに対して一部界隈では、

「市民をビビらせて、自由な言論をできなくしている!!」

などと、スラップ訴訟(見せしめ目的で言論や運動を威圧して、労力や時間を消耗させる訴訟)と同義かのような印象付けをしています。

いやいや、事実にもとづかず科学的な根拠もない悪質なデマを言わなければいいだけです!
農薬に関するネガティブな情報だけを切り取らずに、ポジティブな情報も公正に発信すればいいだけです。
騒いでいる人たちは、過去に発言してきた農薬のデマで訴訟されるんじゃないかと、ビビっているんですかね?

ともあれ私たちとしては今後、ラウンドアップに関する悪質なデマはスクショして公式アカウントに報告するだけでよくなりました。
農薬メーカー各社がデマへの対応で日産化学に同調することによって、SNSが健全になっていくことを願っています。

まとめ

農薬について不安を煽るような情報があっても、条件反射で拡散せずに、淡々とスクショしておいてください。
自分で多角的に調べて、デマだと分かれば、メーカーに報告してあげましょう。
インプレッションを稼いで有名になりたい人にとっては、それが一番効果的なのですから。

 

【ナス農家の直言】記事一覧

筆者

ナス男(ナス農家&サイト「農家の決断」管理人)

 

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