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農業に関するデマで打線組んでみた!〈パート25〉【ナス農家の直言】
今回も、
「農業に関するデマで打線組んでみた!〈パート25〉」
をテーマに、農家の私ナス男が農業デマを紹介していきます。
1.(中)グリホサートで鼻炎の症状が出た!
「グリホサートを使うから、田んぼのあぜ道では鼻がムズムズしてくしゃみが止まらない!」
という投稿を見ました。
断定はできませんが、おそらくイネ科やブタクサなどの花粉症だと思います。
グリホサートの影響で、鼻炎などのアレルギー反応に近い症状は一通りググった限りでは見当たりません。しかもグリホサートは散布すると短時間で土壌に吸着され、太陽光や微生物などにより急速に分解され消失していきます。
本当に田んぼのあぜ道にいる間中、鼻炎の症状が治まらないのであれば、病院でアレルギー検査をすることをオススメします。
2.(二)袋に保存した米から虫が湧かないのは不自然だ!
「食べ物なのに、米に虫が湧かないのは、農薬や添加物を収穫後にかけているからでは?」
このような疑問を投稿する前に、まずはググってみましょう!
自宅で保管している米は、保存状態が悪いと虫が湧きます。農薬を使用しても使用していなくても虫が湧くのは同じです。
精米された米を買ったら、密閉度の高い容器や袋に移し替えて、冷蔵庫で保管し、なるべく早めに食べきりましょう!
3.(三)コシヒカリⓇは食べてはいけない!
健康情報を発信するインフルエンサーが、Ⓡのついた米を食べてはいけないという主旨の投稿をしていましたが、勉強不足が過ぎます。
そもそもⓇマークとは、商標登録のマークです。
Ⓡマークがついていれば、その商品には商標登録がされているということですが、コシヒカリという名称には商標登録はされていません。
つまり、コシヒカリⓇなんかありません!
ただ私には、一部界隈がⓇを危険視したい魂胆はお見通しです!
ずばり、放射線育種米を親に持つ「あきたこまちR」を連想させて、海外メジャーの陰謀のせいにしたいのでしょう!
しかしあきたこまちRの「R」も、レーザーのRではないんです!
詳しくはこちらの記事で。
「僕をフォローして、健康の情報を勉強しよう!」というお決まりのセリフで結んでいますが、デマを流す方をフォローする必要はないです。
4.(一)令和の米騒動は政府の陰謀だ!
令和6(2024)年8月現在、全国的な米の品薄がニュースになっています。
この米不足について、
「スーパーに米がない! 一般庶民は政府に兵糧攻めされている!」
という主旨の陰謀論を最近よく見かけます。
しかし米農家の方によれば、米の品薄の理由は簡単に説明がつくそうです。
今回の米騒動の原因は、
1. 令和5年夏の猛暑により、米どころの米の品質が落ちる
2. 不作でも契約がある外食産業の米の量と質は確保しないといけないから、一般流通分から米を買う
3. 災害や地震警戒などで、買い占めが一部で起きる
4. メディアが米不足を報じる
5. スーパーで米を買い求める消費者が増えて、米が品薄になる
という経緯だそうです。(地域によって、微妙に実情は異なる。)
9月になれば、新米の稲刈りが本格的に始まるので、米不足は解消される見通しです。
ここで消費者にお願いしたいことは、米が多少値上がりしていたとしても、米農家を応援する気持ちで気前よく買いましょうということです。
米の需要は食の多様化により減少し続けていて、今までの販売価格が安すぎたのです!
美味しい米を、安定的に米農家に作ってもらうために、たくさんご飯を食べましょう!
5.(左)マイコス米は危険!
「マイコス米は田んぼに水を張らなくても出来てしまう! 農薬や除草剤が水で流れなくなる!」
という投稿を、上記4と同じインフルエンサーが言ってました。
ちなみにマイコス菌とは、農業の新しい植物との共生菌で、植物が環境変化に強くなるとされる比較的新しい菌資材のことです。
田んぼの水稲に使うと、水を張らなくても稲が育つということで、少しずつ日本の農家も取り入れだしています。
農薬は地面に落ちると、太陽光や水分などにより急速に分解されます。
正しく農薬を使用していれば、残留農薬が基準値以上に出ることはありません。
健康の情報を発信して稼いでいるアカウントなのに、農薬の基本的なことも調べられてないとなると、信用に値しません。
6.(右)中国の農地は、農薬を使いすぎて作物が育たなくなっている!
「中国では、残留農薬のせいで田んぼがやせて作物が育たない農地がある!」
という投稿を、これまた上記の健康系インフルエンサーが言ってました。
確かに中国では、重金属汚染がある地域では作物は育てられないという情報はありますが……
残留農薬のせいで微生物が死んで作物が長年育たない農地があるとは、農家の私も初耳の情報です!
情報の出所を尋ねましたが、案の定返信はありません!
間違った情報を連発するこのインフルエンサーの言うことは、何一つ聞かなくてもけっこうです。
7.(捕)米不足で、日本にはプラスチック米が出回る!
プラスチック米とは、一時中国で問題になった、米と似た色や形のプラスチックで米袋を嵩増ししていた問題です。
日本嫌いの方がプラスチック米を日本人に食べさせられていることにしたいのでしょうが……
もちろん今回の米の品薄でプラスチック米を食べさせられたという方は、ニュースやSNSでは確認されていません。
それとも、気づかないほどに巧妙な米に似せたプラスチックを食べてしまっているのでしょうか?
続報を知っている方は、ぜひ教えてください!
8.(遊)マイクロプラスチックを使った化学肥料を使うな!
「川辺や海岸にマイクロプラスチックが残っていて、環境問題になっている!」
「マイクロプラスチックで被覆した化学肥料は使用禁止にしろ!」
ニュースでも取り上げられたマイクロプラスチックの問題は、米農家にとっても大きな課題です。
マイクロプラスチックの被覆肥料の特徴は、徐々に肥料が溶け出す性質です。
田んぼに追肥するという重労働をなくせることと、必要量以上の肥料分を投入しない分環境負荷が減るという大きなメリットがあります。
しかし本来、光や水で分解されるはずの被覆部分のマイクロプラスチックが、溶け残ってしまっていることが問題になっているのです。
当然改善されるべき課題で、マイクロプラスチック被覆でない肥料も登場していますが……
これがマイクロプラスチック肥料を使っている農家だけのせいにされるのは、非常にもどかしい!
なぜなら、農家がマイクロプラスチック肥料を使う以上に、普段私たちもプラスチックの製品を捨てているのですから。
消費者の方にも、マイクロプラスチック肥料の問題は環境問題全体を見て考えていただきたい問題です。
9.(投)精米活性剤の入っていない米を買おう!
「市販の米には精米活性剤が入っているから危険!」
という主旨の投稿がありました。
私も初めて聞く単語だったので調べてみると、どうやら「精米改良剤」のことのようです。
精米改良剤とは、ざっくり説明すると、古米の見栄えを良くするための添加物のことです。
古米になると、
• お米の水分量が減少する
• 米が割れやすくなる
• 食味が落ちる
などの劣化がどうしても起きるのですが、精米改良剤を使用すると、
• 古米独特の匂いが消える
• 割れにくくなる
• 光沢が増して甘味が付く
という効果があります。
添加物や精米改良剤自体は、適切に使用されていれば安全は担保されています。
とはいえ平成16年の厚生労働省のページには、精米改良剤を使用しているにもかかわらず、原材料名に記載がない米の販売が疑われるケースもあるとのこと。
ほとんどの米農家が表示を守って出荷していても、ほんの一部の悪意を持って騙そうとする農家がいるのであれば、食の安心は守られません。
精米改良剤をどうしても避けたい、安心できる米が食べたいという消費者の方は、信頼できる農家さんから直接買うことしかないと思います。
農薬や添加物の不安が限りなくゼロに近づくように、一農家の私も常に心がけていきます。
まとめ
昨今の米不足報道に便乗してなのか、米に関するデマが増えた印象です。
スーパーに米が並び始めて米不足報道がなくなれば、米のデマも減ると私ナス男は予想します。
デマにもブームや法則性があるようなので、消費者の方も農業に関して不安を煽る情報があれば、まずは疑ってみてください。
筆者ナス男(ナス農家&サイト「農家の決断」管理人) |