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そんな成分で効くの? 農薬っぽくない農薬【落ちこぼれナス農家の、不器用な日常】
農薬という言葉を聞くと、
「なんか良く分からないけどヤバい薬!」
というイメージがある消費者の方もいると思います。
確かに化学的に作られた農薬は、成分名を聞いてもイメージができないものも多いです。
しかし、生活の中でもよく耳にするものすごく身近な成分で出来ている農薬もけっこうあるんです!
ということで今回は、
「そんな成分で効くの? 農薬っぽくない農薬」
というテーマで、身近な成分で出来ている農薬を農家の僕ナス男が8つ紹介します。
①ハーモメイト
ハーモメイトは殺菌剤で、
農薬名は聞いたことがない消費者が多いでしょうが……
その主成分は、「炭酸水素ナトリウム」いわゆる重曹です。
そう!
食器洗いに使われたり、ふくらし粉の原料になっている身近な成分です。
主にうどん粉病や灰色カビ病に効果があります。
②BT剤
BT剤と呼ばれる農薬は、バチルス・チューリンゲンシス(BT)という枯草菌の仲間が合成する成分を抽出したものを指します。
40種類以上の系統があり、そのほとんどが自然界から見つけられたものです。
鱗翅目(チョウ・ガの仲間)害虫に効果を発揮します。
③サンクリスタル乳剤、ハッパ乳剤
これらの農薬の特徴は、身近にある油が主成分であること!
サンクリスタル乳剤はヤシ油より精製した油である脂肪酸グリセリドが主成分です。
この油の成分が、ハダニやコナジラミの害虫、うどん粉病にも効果がある殺虫殺菌剤です。
ハッパ乳剤の有効成分は、天然のなたねより抽出したなたね白絞油です。
同じくハダニやうどんこ病に対して高い効果があります。
④ボトキラー水和剤
バチルスズブチリス芽胞という、自然界から分離した安全性の高い有用細菌(バチルス ズブチリス:枯草菌、納豆菌の仲間)を有効成分とする微生物防除剤です。
水に希釈して散布する方法もありますが、暖房機のダクトの風を利用してハウス内全体に飛散、循環させる使用方法もあります。
毎日継続してダクト内投入を行うことで、有効成分のバチルス菌を圃場全体にムラなく隅々まで定着させることで、うどん粉病や灰色カビ病などの病気を予防します。
⑤エコピタ
エコピタ液剤は「食品」が有効成分です。
主成分の還元澱粉糖化物は、オリゴ糖を高温高圧下で水素還元することにより得られる多糖類で、「還元水あめ」とも称されます。
種々の食品に甘味料として使用されている成分が原料のこの液剤は、うどん粉病やハダニやコナジラミなどの害虫に効果を発揮します。
⑥天敵生物
害虫を食べてくれる益虫「天敵生物」の中にも、農薬登録されている生物がいます。
前回の記事でも紹介したタバコカスミカメも、2021年7月に農薬登録されて農薬扱いになりました。
天敵生物について詳しく書いたこちらの記事も、ぜひご覧ください。
⑦カリグリーン
カリグリーンはうどんこ病などの病気対策に使用する農薬です。
加えてカリグリーン殺菌剤の主成分である炭酸水素カリウムは、植物の栄養成分のカリウムが含まれています。
つまりカリグリーンを使えば、殺菌+肥料として栄養補給もできるということです。
⑧レンテミン液剤
レンテミン液剤の主成分はシイタケ菌糸体培養物です。
抗ウイルス剤で、モザイク病感染防止の効果があります。
また株分けや管理作業時に、手指やハサミ等の器具の消毒としても使用できます。
⑨石灰窒素
石灰窒素は、カルシウムや窒素が含まれる肥料です。
また肥料としてだけではなく農薬としても登録されていて、太陽熱消毒の時によく使われています。
太陽熱消毒の時に石灰窒素を利用すると以下のような効果が見込めます。
● 連作障害である青枯れ病の原因であるセンチュウ類を熱で死滅させる。
● 稲わらや作物の残渣などの有機物と一緒に鋤きこむと、発酵熱によって高い地温を保つことができる。
● その後で有機物は微生物によって分解され、地力の向上に役立つ。
要するに石灰窒素は、
1. 肥料成分も計算出来て、
2. やっかいな連作障害対策にも使え、
3. 土づくりにも役立つ
万能な農薬肥料です!
僕も毎年ナス栽培で石灰窒素を利用しています。
まとめ
今回は、
「本当に効くの? 農薬っぽくない農薬を紹介」
というテーマで農薬をいくつか紹介しました。
最後に断っておきたいことは、現代の農薬は高い安全性と厳しい安全基準が設けられているということです。
紹介した農薬以外も、適切に使用すれば安全です。
「なんとなくヤバいイメージの農薬も、ちょっとはマシになったかも?」
「むしろ、こんな身近な原料で害虫を駆除できるの? 農家って大変…」
という農薬についてのイメージを少しでも転換できたなら嬉しいです。
筆者 |