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なるべく農薬を減らす! 天敵生物を利用した、現場の取り組み【落ちこぼれナス農家の、不器用な日常】
今回は、僕ナス男が実践している、
「なるべく農薬を減らす! 天敵生物を利用した現場の取り組み」
を紹介します。
農家全員が努力している、減農薬の工夫の一つです。
消費者の方にも、今の現場の取り組みを少しでも理解してもらえたらと思います。
天敵生物とは
天敵生物を簡単に言えば、害虫を食べてくれる益虫を農薬として利用することです。
害虫を捕食してくれるので、殺虫剤の使用回数の削減が期待できます。
近年では害虫が農薬の抵抗性を持ってきていて、なかなか農薬を使っても防除できないという問題があります。
しかし天敵生物であれば確実に害虫を捕食してくれるので、抵抗性をもってしまうということはありません。
栽培方法が確立されつつある今の農業では、今後の切り札になりえる存在なのです!
ただし益虫も農薬の影響を受けるので、使える農薬の選択肢が狭まるというデメリットもあります。
天敵生物は死なず、かつナスに有効な農薬は、現在は数えるほどしかありません。
つまり天敵より害虫の方が増えてしまって、収拾がつかなくなってしまえば失敗です。
農家によっては、天敵生物を利用する栽培を難しいと感じる方もいます。
タバコカスミカメ
天敵生物にもいろいろ種類がありますが、僕のナス栽培ではタバコカスミカメという天敵生物を利用しています。
コナジラミやアザミウマといった、ナスの害虫を捕食してくれる頼もしいやつです。
そして餌となる害虫がいなくても、ナスの葉を吸汁したりして生き延びることができます。(ナスの収量に影響はほぼないと言われている)
写真の葉の黄色い点が、タバコカスミカメが吸汁し定着し始めたサイン。
ハウス全体のナスの葉にこの黄色いサインが広がり、害虫を見かけなくなれば、定着成功です。
天敵導入のきっかけ
僕はナス栽培1年目は、タバコカスミカメを利用していませんでした。
天敵を利用しなくても栽培はできますし、周りに天敵を利用している農家が少なくなかなか難しそうに感じていたからです。
しかし、一年目の春。
油断している間にアザミウマが大量発生してしまいました。
● 防除暦どおりの農薬は使っていて、それゆえ「まあ何とかなるっしょ!」と油断していたこと
● 観察不足で初期発見できなかったこと
● 暖かくなる春以降に、害虫は爆発的に増えることを知らなかったこと
これらの要因が重なって、気づいた時にはもう末期で取り返しがつかないくらいの被害になりました……
「もうほとんど採れるナスがないよ~!勘弁してくれ!」ってくらい、ボロボロにやられました……
50万円くらいの売上が吹っ飛び、絶望したのは苦い経験です。
次の作はタバコカスミカメを導入しようと決意した瞬間でした。
その苦い経験をした一年目以降、タバコカスミカメを導入してからは害虫の被害はほぼなくなり、殺虫剤の使用回数は4割ほど削減できました。
まさにカスミカメ様様です。
天敵温存ハウス
タバコカスミカメを十分に活用させるポイントは、
1. 十分な個体数を投入できるか
2. ハウスの土壌消毒期間と冬の期間に個体数をキープできるか
大きくこの2つです。
十分な個体数をハウス全体に投入できなければ、害虫の繁殖スピードが早く抑えきれなくなります。
タバコカスミカメは12℃~28℃くらいが活動温度帯です。
なので、太陽熱消毒をしている50、60℃の蒸しきったハウス内や、5℃を切る冬の環境では、タバコカスミカメは生きられません。
この2つのポイントを解決する方法が、天敵温存ハウスを設けることです。
僕はナスのハウスとは別のハウスに、好物のクレオメなどを植えてタバコカスミカメを温存培養しています。
● 冬の寒さを乗り越えることができて、
● 個体数を減らさずに温存ができる
● 好きなタイミングで十分な個体数をハウスに投入ができる
常にタバコカスミカメがいる状態をキープすることで、天敵利用栽培の成功率をあげることができます。
まとめ
今回は
「なるべく農薬を減らす!天敵生物を利用した現場の取り組み」
を紹介しました。
タバコカスミカメの利用法については地域や個人で違います。
あくまでも僕の一例です。
ちなみにタバコカスミカメは特殊な生物ではなく、温暖な地域には野外に生息しています。
家庭菜園でも、ナスのそばに好物のクレオメを植えておけば寄ってくるかもしれません。
ぜひ試してみてください。
天敵生物や農薬を減らす取り組みに興味を持ってもらえたら嬉しいです。
筆者 |