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コラム4 除草剤と除草剤耐性作物【農薬をめぐる重要な10項目】
除草剤は、雑草を枯らすために用いられる農薬です。接触したすべての植物を枯らす「非選択性除草剤」と、対象とする植物だけを枯らす「選択性除草剤」に分けられます。たとえば、グリホサートは1970年代に導入された非選択性除草剤の有効成分で、植物に共通する代謝を阻害することで植物を枯らすので、植物の種類を選ばず枯らすことができます。一方、この代謝経路を持っていない哺乳動物や鳥類、魚類に対する生物には影響がなく、アミノ酸系の除草剤で土壌残留性が低いという特徴があります。
遺伝子組換え技術により、このグリホサートを有効成分とする除草剤(以下グリホサート除草剤)に耐性を持つ除草剤耐性作物が開発され、栽培されています。グリホサート除草剤を使うことを前提として、グリホサート除草剤の影響を受けないたんぱく質をつくる遺伝子を導入した作物です。農家は、除草剤耐性作物を栽培し、その作物が抵抗性を持っているグリホサート除草剤を使えば、作物を枯らさずに雑草だけを除草できます。さらに、農地を耕さない省力的で環境負荷の少ない「不耕起栽培(※)」での除草も可能となります。
世界で最も多く栽培されている遺伝子組換え作物の性質は除草剤耐性です。2015年に栽培された除草剤耐性作物はダイズ、トウモロコシ、ナタネ、ワタ、テンサイ、アルファルファで、除草剤耐性作物の栽培面積は9,524万ヘクタールで、害虫抵抗性と除草剤耐性を併せ持つ作物は5,850万ヘクタールでした。
また、これまでに日本での知見が蓄積されてきたことから、スタック品種に対する規制緩和の動きが出てきました(スタック品種についてはこちらを参照)。組換えDNA技術応用食品及び添加物の安全性審査の手続(平成十二年厚生省告示第二百三十三号)において、第6条が新設され、安全性の審査を経たことが公表されている品種同士を伝統的な育種手法で掛け合わせる品種(スタック)の一部に対しては、新たな審査を行わないこと が条文化されました。一部というのは、スタック品種において、組換えDNA技術によって付与された性質が変化していないこと、亜種間での交配が行われていないこと、人が摂取する量や食用部位、加工法などが変更していないことの3つの要件を満たした品種をさしています。
※不耕起栽培とは、種子をまく前に、雑草を防除するために畑を耕さない農法のことです。畑を耕すと、表面の肥沃土壌が軟らかくなり、風や雨で流されてしまいます。土壌中の農薬が川などに流れ出してしまうという問題がありましたが、不耕起栽培ではこれらの問題を改善することができます。
※この記事は、NPO法人くらしとバイオプラザ21発行の「『メディアの方に知っていただきたいこと』シリーズ 農薬編」を許可を得た上で転載したものです(一部AGRI FACTが再編集)。