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第6回 最高裁判決で訴訟は終わるのか──集団訴訟6万件超のゆくえ【ラウンドアップ米最高裁判決】
バイエル勝訴の最高裁判決が出てもラウンドアップ訴訟は終わりではない。判決を受けて新たな法廷闘争がすでに始まっている。今後の訴訟の行方、農業界への影響、日米法制度の比較など、最新トピックを追いかけつつ、問題の本質をさらに深掘りするため、連載を当初予定の5回から12回へと増やして対応する。
「最高裁でバイエルが勝訴したのだから、ラウンドアップ訴訟は終わりだ」
そう受け止めた人は少なくないだろう。しかし、現実はそれほど単純ではない。
2026年6月26日の米連邦最高裁判決は、ラウンドアップ訴訟の流れを大きく変えた歴史的判決だったが、それは「すべての訴訟が終わった」ことを意味するわけではない。事実、判決を受けて新たな法廷闘争が始まっている。
最高裁判決で何が変わったのか
今回の判決で最高裁が示したのは、EPA(米国環境保護庁)が承認したラベルについて、州法に基づき「発がん警告を追加すべきだった」と企業責任を問うことはできない、という判断である。
つまり、「警告義務違反(Failure to Warn)」を根拠とするラウンドアップ訴訟の中核部分は、大きく揺らぐことになった。
一方で、最高裁はラウンドアップに関するすべての請求を否定したわけではない。設計欠陥や虚偽表示、不正行為など、別の法的構成による請求まで判断したわけではなく、既に確定した判決や成立済みの和解が覆ることもない。
したがって、今回の判決は「全面終結」ではなく、どの請求が排除され、どの請求が引き続き審理されるのかという、新たな争点を生み出したのである。
バイエルと原告側、次の争点は何か
最高裁判決から間もなく、バイエルはこの判決を武器に、新たな攻勢に出た。
同社は、約3,900件が係属する連邦集団訴訟(MDL)について、「ラウンドアップ訴訟の本質は『警告義務違反』であり、設計欠陥や過失などの請求も、実質的には『警告が不十分だった』という主張の言い換えにすぎない」と主張する。そのため、最高裁判決によってこれらの請求も排除されるべきであり、MDLはもはや存続する理由がないとして、訴訟全体の終了を求めている。
これに対し原告側は、「最高裁が判断したのは警告義務違反だけであり、設計欠陥や過失などは独立した請求原因として引き続き審理できる」と反論している。
つまり現在の争点は、「最高裁判決があったかどうか」ではない。最高裁判決の効力が、設計欠陥や過失といった他の請求原因にまで及ぶのかという点へ移っているのである。
焦点は下級審の判断へ
もっとも、この問題については、まだ裁判所も結論を示していない。
連邦集団訴訟(MDL)を担当するヴィンセント・チャブリア連邦地裁判事は、7月の審理で、設計欠陥などの請求が最高裁判決によってどこまで排除されるのかについては、なお法的検討が必要との認識を示した。
今後は、連邦地裁や州裁判所が個々の事件について、「警告義務違反」と実質的に同じ請求なのか、それとも独立した請求原因なのかを判断していくことになる。
ラウンドアップ訴訟は、最高裁で一つの大きな節目を迎えた。しかし、法廷ではすでに「最高裁判決をどこまで適用するか」という第二ラウンドが始まっているのである。
6万件超の訴訟はどうなる!?
現在も全米では約6万件のラウンドアップ関連訴訟が残されているとされる。そのすべてが最高裁判決によって直ちに終結するわけではない。
一方では、警告義務違反を中心とする請求について、最高裁判決を理由に棄却されるケースが増える可能性がある。他方で、設計欠陥や過失などの請求については、下級審の判断が積み重ねられる中で、その射程が徐々に明らかになっていくことになる。
その意味で、今回の最高裁判決は終着点ではない。「最高裁判決を各裁判所がどう具体的に適用していくのか」という、新たな司法判断の積み重ねが始まったのである。
次回予告
なぜラウンドアップ訴訟は、10年以上にわたり世界最大級の製造物責任訴訟へ発展したのか。
第7回は「ラウンドアップ裁判はなぜ10年間も続いたのか──IARCから最高裁判決までの全記録」と題し、2015年のIARC評価からジョンソン事件、モンサント買収、巨額和解、そして2026年最高裁判決に至るまでの10年間を時系列で振り返る。
第7回へ続く〉〉
筆者浅川芳裕(農業ジャーナリスト、農業技術通信社顧問) |
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