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除草剤グリホサートに耐性のある植物の自然への影響は?【解説】
こんにちは、コロです。前回は除草剤グリホサート耐性の遺伝子組換え作物はどのようなものなのかをお話しました。そして、その除草剤グリホサートはどんな植物でも枯らせてしまうとても恐い除草剤に思えますが、実はそうではないということも説明しました。今回は、除草剤グリホサートに耐性のある植物がほかの植物と交雑した場合自然への影響はあるのか、また、グリホサートに抵抗性のある雑草についてお話しましょう。
ルル:まず、遺伝子組換え作物は交雑するのかについて、教えてください。もしするのなら、環境への影響が心配です。
コロ:植物は何とでも交雑するのではなく、交雑できるのは「近縁種」に限られます。遺伝子組換え作物の主なものには、ダイズ、トウモロコシ、ナタネがありますが、例えばダイズは日本で交雑できるのは「ツルマメ」だけですし、トウモロコシに交雑できる「近縁種」はないんですよ。
ルル:ツルマメとはどれくらい交雑するのですか?もともと、ダイズとツルマメが混ざっているという植物は聞いたことがありません。
コロ:そうですね、自然にはほとんど交雑しないと考えて良いと思いますよ。例えば、実際にダイズとツルマメをほとんど強制的な条件で交雑させる実験が行われていますが、その結果では、調べた種の数3万2502粒中、自然に交雑していた種はたったの1粒でした。自然環境下ではさらに交雑する率は下がります。
ルル:ナタネはどうなのでしょうか? ナタネはアブラナ科に属する植物で、その仲間にはキャベツやコマツナなどがあると聞きました。
コロ:ナタネにはいくつか交雑する可能性のある近縁種があります。ただし、例え交雑しても、「交雑」=「悪影響」ではありません。大切なのは交雑した後に、それでできた子孫(交雑体といいます)が広がって、環境に影響することがないかを確認することです。これはきちんと法律に定められた方法で確認されています。例えば、除草剤グリホサート耐性ナタネでは、仮に近縁種と交雑が起こったとしても、作られる雑種の稔性は、非組換えナタネと近縁種の雑種と同様に低下することなどから、自然界に広がって行くことはないことが確認されています。また、除草剤グリホサートの使用が予想される田畑の路傍などにこの雑種が生育していた場合でも、除草剤はこの世にグリホサートしかないというわけではありません。従ってグリホサート以外の除草剤の散布、もしくは刈り取りなどによって十分管理することができます。万が一、除草剤グリホサートだけを使用して、雑種のみが残ったとしても、前に言ったように除草剤グリホサートが使用されない自然条件で広がって、環境に影響することはありません。
ルル:そうですか、それではグリホサートに抵抗性になった雑草が増えるという心配はしなくてよいのですね?
コロ:1つだけ、これは遺伝子組換えということではなく、同じ農薬を使い続けることによって植物がその農薬に抵抗性を持つということは実際に起こります。これは、害虫抵抗性の遺伝子組換え作物について、その抵抗性が効かなくなる害虫が出てくるので、それを抑えることが必要だというお話と良く似ています。あの時も、これは遺伝子組換えの作物だからということではなく、農薬を使うときに一般的に起こることでしたね。
ルル:思い出しました。確か……「緩衝区」を使って、うまく抵抗性害虫を抑えるのでしたね。
コロ:その通りです。遺伝子組換えの除草剤耐性ダイズでは、グリホサートという同じ除草剤を使うことになるため、雑草がグリホサートに対して耐性を持つことは起こる可能性があります。生物の特性上、同じ成分の農薬を使う場合は抵抗性雑草が出てくることは起こり得ることで、使用基準(量や散布回数)をきちんと守って使用することで、耐性が生じにくくすることが大事なんですよ。
ルル:害虫抵抗性のときもそうでしたね。そういうことが起こらないように、そして起こったときにはきちんと対応することが大事でしたよね。どのような対応をすることができるのですか?
コロ:除草剤抵抗性とは言っても、除草剤の種類によって抵抗性のできやすさに大きな差があります。グリホサートの場合、抵抗性を獲得するまでにいくつもの変異を起こす必要があるとか、抵抗性の仕組みからほかの除草剤に比べ比較的に抵抗性が起こりにくくなっています。30年にわたり使い続けても抵抗性があることが確認されている雑草の種類は、世界中でも14種程度で面積もあまり広がっていません。グリホサート抵抗性雑草はグリホサートが効かなくなるだけで、ほかの除草剤には抵抗性はありません。だから、まず、ほかの除草剤を使って枯らせてしまうということをします。ほとんどの場合は、それで解決します。また、種を農家の人に売るときに、抵抗性の雑草が出てきたかな、と思ったときに対応するマニュアルのようなものもあります。
筆者コロ(穀物関係機関勤務) |
※このコラムは「FoodScience」(日経BP社)で発表され、同サイト閉鎖後に筆者の了解を得て「FoodWatchJapan」で公開(公開日:2008年9月1日)しているものを許可を得て転載。
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