会員募集 ご寄付 お問い合わせ AGRI FACTとは
本サイトはAGRI FACTに賛同する個人・団体から寄付・委託を受け、農業技術通信社が制作・編集・運営しています

世界の流れはグリホサート禁止ではない EU加盟国とメキシコの動き【ニュース】

ニュース

オーストリアは全面使用禁止措置が頓挫

USDA(米国農務省)のレポート *1によると、オーストリア議会では2021年5月、グリホサートを部分的に使用禁止とする農薬法の改正案が全会一致で採択され、遊び場や公園などの公共の場所、医療機関や老人ホームなどの敏感な場所でのグリホサートの使用が禁止されることになる。家庭菜園やコミュニティガーデンでの使用や、個人・非専門家による使用も禁止されるが、農業分野での使用を含む業務用グリホサートの使用は引き続き認められる

これまでオーストリアは社会民主党や緑の党が中心となり、グリホサートの全面禁止を盛り込んだ改正案を採択しようと二度試み頓挫している。一度は議会を通ったがEU法に違反するとしてEUに却下されている。そのため今改正案ではEU法上で例外的に認められている特定の地域での使用制限・禁止に限定した「部分禁止」の範囲に変更し、ようやく採択されたというのが実態である。現在のところ、与党オーストリア人民党と連立を組む緑の党はともに全面禁止を推進していない。

USDAのレポートは、オーストリアの農家はグリホサートの使用が可能であることに「安堵している」と報告している。全面禁止になると、農業市場での競争力を失うことになるからである。オーストリア農業会議所のヨゼフ・ムースブルガー会長は、「EU法に則った今回の部分的な使用禁止は、特に注意を要する用途のリスクを排除するもので、同時に、農業分野では引き続き適切な手段を確保することができる。このアプローチは、国民の安全保障上のニーズと、土壌を守る農業の必要性を考慮したものだ」と述べている。

EU法違反の可能性があるルクセンブルクと本末転倒のメキシコ

EUの小国ルクセンブルクではたしかに、グリホサートの全面禁止法案が議会を通り、実行されている。しかし、EU本部が首都ブリュッセルに置かれる隣国ベルギーの農業大臣はLuxemburger Wort紙のWeb記事 *2によると「ルクセンブルク大公国は不適切な方法でグリホサートの使用禁止を実施したと考えています」と公式にコメントしている。「言い換えれば、この措置は欧州の法律に反しているため、ブリュッセルから異議を申し立てられる可能性がある」とも同記事は伝えている。

メキシコでは左派のオブラドール大統領が2024年までにグリホサートを禁止する法令を発表しているが、メキシコの「農業生産に影響を与え、その結果、食料安全保障と主権に影響を与える」リスクがあることから法律施行の凍結を求める訴訟が提起されている

また代替手段としてグリホサートの400倍近い毒性を持ち、土壌微生物活性に影響を及ぼす可能性が高くグリホサート以上に厳格な管理が求められる除草剤が推奨されていることから、2024年までの施行には紆余曲折があると思われる。

原文

*1 Austrian Parliament Adopts Partial Ban on Glyphosate
https://apps.fas.usda.gov/newgainapi/api/Report/DownloadReportByFileName?fileName=Austrian%20Parliament%20Adopts%20Partial%20Ban%20on%20Glyphosate_Vienna_Austria_06-01-2021.pdf
「オーストリア議会がグリホサートの部分禁止を採択」(米農務省2021年6月2日公開) 」を翻訳・編集した。
*2 https://www.wort.lu/fr/luxembourg/premiere-dans-l-ue-le-luxembourg-defend-son-interdiction-du-glyphosate-60c08bc8de135b9236dea651

  会員を募集しています 会員を募集しています

関連記事

検索

Facebook

ランキング(月間)

  1. 1

    第50回 有機農業と排外主義①【分断をこえてゆけ 有機と慣行の向こう側】

  2. 2

    日本の農薬使用に関して言われていることの嘘 – 本当に日本の農産物が農薬まみれか徹底検証する

  3. 3

    【特別セミナー】グリホサート評価を巡るIARC(国連・国際がん研究機関)の不正問題  ~ジャンク研究と科学的誤報への対処法~

  4. 4

    【誤り】検証内容「豚のへその緒に(ラウンドアップの主成分グリホサートが)蓄積するということは、人間にも起こりうることを意味する。もし妊娠している女性が摂取すれば、へその緒を介して胎児にも深刻な影響を与えかねない」山田正彦氏(元農水大臣)

  5. 5

    VOL.22 マルチ食品の「ミネラル豚汁」が被災地にやって来た!【不思議食品・観察記】

提携サイト

くらしとバイオプラザ21
食の安全と安心を科学する会
FSIN

TOP
CLOSE