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トンデモ国会議員誕生を追い、発達障害児支援にたどり着く:15杯目【渕上桂樹の“農家BAR Naya”カウンタートーク】

コラム・マンガ

「食の安全が売り渡される」「F1品種で不妊に」「発達障害の原因は農薬」「種子法廃止でコメが高騰する」など、ありとあらゆる農業のトンデモを拡散していた人物が、とうとう国会議員になってしまいました。その人物とは、山田正彦元農林水産大臣の息子山田勝彦氏。今回のコラムでは、トンデモ国会議員が誕生するまでに私が体験したことをお話しします。

トンデモ議員が長崎から衆院選に立候補

私は同じ長崎県に住んでいるので、勝彦氏の(トンデモな)影響を実感していました。

バーに来たお客さんや知人の中には、講演会やSNSでの発信を真に受けた人もいて、「タネが外国に支配されるらしいけど、農業は大丈夫なの?」「最近の野菜は食べ続けると不妊になるの?」と聞かれることもありました。

確かに、勝彦氏の拡散するトンデモはインパクト抜群で、聴き手の不安を効果的に掻き立てます。

ですが、ウソの情報で農業の不安を煽り、不妊や発達障害などと結びつけるやり方は間違っています。

なぜなら、農業関係者の仕事を貶め、消費者に無用な不安を抱かせるだけでなく、不妊に悩むカップルや発達障害当事者たちを傷つけるからです。

私は非常に心配していました。

それは、このまま勝彦氏が国会議員になってしまうとトンデモを公約に当選したことになり、主張の修正が極めて困難になってしまうからです。

そもそも、勝彦氏が講演会などでコラボしたりオススメしている活動家は、ことごとく反ワクチン運動などの非科学的な思想と関連しているので、情報源からして信ぴょう性に乏しいのです。

言い換えると、このままではあらゆる農業トンデモに加え、多くの反医療活動に国会議員のお墨付きが付くことになります。

ですが、どんな人でも情報源の選択を誤ることはあります。

そのため、私はずっと話し合いを求めてきました。

選挙に出る前に意見を聞いてもらえれば、トンデモに頼らないまっとうな議員の誕生を応援できるかもしれないと思ったからです。

しかし、対話は最後まで拒まれました。

トンデモ主張の修正を依頼

そして2021年10月、とうとう選挙戦が始まり、あろうことか地元紙長崎新聞にトンデモ主張が掲載されてしまいました。

それは、「弱い人に寄り添う山田勝彦氏、国政へ。発達障害の原因は食にあり。危険な農薬の輸入をやめなければ」という内容です。

私が一番心配していたものでした。

これでは、農業の風評被害だけでなく、発達障害への誤解が広まるだけです。

発達障害は食べ物が原因ではありません。

そもそも、発達障害は減らすべきものではなく、理解を深めるべきものではないでしょうか。

私はまず新聞社に連絡して記事の修正をお願いしましたが、通らず。

次に補足を入れることを要望しましたが、これも聞き入れてはもらえず。

結局、戻ってきた回答は「ご指摘は本社と共有します」というものでした。

こうなったら勝彦氏の事務所に直接乗り込んで声を届けるしかない!と思った私は、手紙を携え選挙事務所に乗り込みました。

あいにく勝彦氏は遊説中で不在だったので、みかんやお茶をごちそうになりながら帰りを待ちました。

事務所にいた人たちとはついつい話もはずみ、「AGRI FACTというサイトでコラムを書いてるんですよ~」と名刺を配ったり、ポスターの前で写真を撮ったりしていました(はしゃぎすぎ)。

しばらくして勝彦氏が戻ってきましたが、スケジュールの都合上話はできず、一緒にいた仲間の人に手紙だけを渡しました。

受け取ってくれたのはなんとトンデモ大集合「くるくる村」のオーナー。

「手紙は受け取るけど、忙しいから当分の間は返事もできないよ」と言われました。

選挙期間中ですし、それはそうかもしれません。

こうして、回答のないまま迎えた投開票当日。

10月31日はハロウィンだったので、私はこんな恰好で勝彦氏比例当選の知らせを聞きました。
山田勝彦氏比例当選

選挙戦の一方で、発達障害関係者との出会い

一方で、私の元には全国からメッセージが届くようになりました。

それは、新聞記事を読んでショックを受けた地元の人の声、農業関係者からの励ましの声、発達障害児を持つ母親たちからの切実な声でした。

メッセージをくれたみなさんはトンデモに苦しみ、トンデモハンターに想いを託してくれたのです。

会ったこともない人に心の声を届けるのには、きっと勇気を要したことでしょう。

私はその声にどう応えられるでしょうか。

一人一人の声を聞いているうちに、発達障害児と親たちを支援する地元のグループと仲良くなり、定例会に招待してもらいました。

そういえば私は、今まで農業については多少学ぶ機会がありましたが、発達障害についてはあまりよく知りませんでした。

これはきっと新しいことを知る良い機会になりそうです。

というわけで、話を聞きに行くことにしました。

こうしてトンデモハンターは、農業の風評を追うだけでなく、発達障害当事者たちの声に応える役割を担うことになったのです。

筆者

渕上桂樹(ふちかみけいじゅ)(農家BAR NaYa/ナヤラジオ)

 

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