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2020年はGM食品からゲノム編集食品への分岐点か!?(後編)

食と農のウワサ

遺伝子組み換え食品(作物)が1996年に国内外で流通し始めて25年が経った。当初こそ大きな話題になったが、ここ数年、ニュースの頻度は非常に少ない。論点を日本国内に絞れば、研究開発にせよ、世間の話題にせよ、2020年は遺伝子組み換え(GM)食品からゲノム編集食品に切り替わる分岐点になったのではないか。
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日本の社会的受容度は高いか

結局、どうなったか。日本はただ単にGM作物を大量に輸入するだけの国になった。日本でGM食品(もしくは作物)が受け入れられた(成功した)と判定してよいかどうかは、何をもって「成功」とみなすかによる。国内ではまだ、だれ一人として商業目的でGM作物を栽培した実績はない。日本発のGM作物が世界の市場に出た実績もない。アンケートではいまなお半分以上の消費者が「不安」だと答え、社会的な理解はほとんど進んでいない

この状況では、とても社会的受容が進んだとは言えそうにないが、かといって受け入れていないわけではない。海外から大量に輸入されたGM作物は、表示義務のない「食用油」「家畜のえさ」「清涼飲料の甘味料」などに幅広く利用されているからだ。消費者の目に触れない形で大量に流通しているという現状も、一種の社会的受容ではあるが、多くの国民が実態を熟知した上での利用ではないことは明らかだ。

メディアと世論は今後も変わらない

GM作物が安全かどうかについては、小泉望・大阪府立大学教授(生命環境科学)は「もはや科学者の間では決着がついていて、食べて危ないという根拠はない」と話すが、メディアの思考は科学者からは程遠い。市民団体はいまだにセラリーニ氏(フランスのカーン大学教授)が行った「GMトウモロコシを食べて、ラットががんになった」という実験結果を信じている。さすがに「GM食品をたべるとがんになる」という記事を書く記者は、ほぼゼロだが、市民団体の不安な気持ちに共感して、「GM作物は自閉症の原因」などと市民団体の言い分をそのまま記事にする記者はいまもいる。GM作物に関するニュースがないからといって、理解が進んだわけではない。

参考記事


結局、ごく少数の市民団体や一部生協の無言の反対圧力が、いまも世間の空気を支配しているといってもよいのではないだろうか。

今後の主役はゲノム編集食品

こうしてみると、日本国内に限れば、ことGM食品では明るい展望はゼロだといってもよい。しかし、この閉塞した状況を打ち破る可能性を示しているのが、消費者へのメリットをうたったゲノム編集食品の登場である。狙った遺伝子を効率よく書き換えられるゲノム編集技術は、突然変異で生まれた従来の品種改良と変わらないため、国の方針で安全性の審査は不要と決まった。

研究開発の主体がGM作物と異なる点もゲノム編集食品の特色だ。血圧を下げる成分(ガンマ-アミノ酪酸)を多く含むゲノム編集トマトの例のように、国内でゲノム編集食品を研究しているのは巨大企業ではなく、主に大学の研究者である。大手食品企業が全く手を出さない中で、研究者が情熱を傾けて創り出したゲノム編集食品への風当たりは、いまのところ、GM作物ほど冷たくはない。もし日本発のゲノム編集食品が世界に普及していけば、むしろ日本の誇りだという意識は筆者だけでなく、他の消費者にもあるのではないか。

世界ではまだGM食品は伸びる

とはいえ、外部の生物の遺伝子を利用しないゲノム編集食品では、GMほど多様な形質を作り出すことは難しい。

米国では、21年には成長の速いキングサーモンの遺伝子を入れた大西洋サケ(遺伝子組み換えサケ)が市場に登場しそうだ。食べてもアレルギー(アルファ・ガル症候群)を起こさないGM豚も開発されている。こういうGM技術の面で日本はさらに世界から遅れをとりそうだ。

21年以降は、大豆を使った代替肉など新しいフードテック製品が次々に登場してくる。代替肉の中には遺伝子組み換え酵母を使った調味料も使われている。こうした新しいテクノロジー食品が社会に広まるのをきっかけにGM食品への理解も進むことを期待したい。

(了)

(写真:「シシリアンルージュ ハイギャバ」(サナテックシード提供))

前編はこちら

※本記事は、ウェルネス・デイリー・ニュースに掲載された『2020年はGM食品からゲノム編集食品への分岐点か!?(後)』を小島氏の許可を得て転載。

筆者

小島正美(「食品安全情報ネットワーク」共同代表)

 

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