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第8回 科学を受け入れない唯一の規制機関【IARCに食の安全を委ねてはいけない】
IARC(国際がん研究機関)が、グリホサートを含む3つの農薬をグループ2Aに分類する判断を下したのは2015年3月の会合だった。同時期にEUを代表する形でドイツの規制機関がグリホサートの詳細な再評価を行っており、その結論は発がん性を否定するものだった。世界各国の規制機関も同じ結論を出し続けている。IARCが科学を受け入れる組織なら、グリホサートに発がん性がないことを受け入れなくてはならない。
ドイツ規制当局の結論と真逆のグループ2A分類
2015年3月にIARCがフランスのリヨンで開いた会合では、環境と生活習慣における危険因子とがんの関係が議題となり、農薬に焦点が当てられていた。委員会は、評価した5つの農薬のうち、3つの農薬を、EPA(米国環境保護庁)やECHA(欧州化学機関)がいずれも発がん性を否定しているにもかかわらず、「ヒトに対しておそらく発がん性がある=グループ2A」と結論づけ、3月20日に公表した。
2A分類は、グループ1(ヒトに対して発がん性がある)の一歩手前の分類である。新たに分類された農薬の一つが、グリホサートである。グリホサートは、モンサント社の除草剤ラウンドアップの有効成分で、何十年も前から農業用(家庭用も含む)除草剤として広く使用されている。
直近の2015 年1月には、ドイツ政府がEUを代表した4年間にわたるグリホサートの評価を完了している。ドイツ規制当局は、IARCが考慮したデータに加え、さらに多くの入手可能なデータ、研究を精査した。そのうえで、グリホサートがヒトに対して発がんリスクを有するとは考えにくいと結論づけた。
規制機関の中でも最悪の部類に属する
元ACSH(全米科学健康評議会)理事でFDA(米食品医薬品局)職員のヘンリー・ミラー博士がフォーブス誌で説明しているように、IARCはグリホサートを発がん性物質に分類する決定を、実際の害のリスクではなく、その潜在的危険性に基づいて行っている。データによると、グリホサートは極めて高用量で害をもたらす可能性があるが、ミラー博士が言うように、用量が毒を作る(低用量なら無毒)のであって、現実には、グリホサートは、製品のラベルに沿った条件下で起こる人間の曝露の100倍以上のレベルでも、健康へのリスクはない。
ドイツの規制当局が再評価を行った時点では未発表のため評価していなかった新しいデータでも、グリホサートとがんとの関連性を見出すことはできなかった。それが『Critical Reviews in Toxicology』2015年3月号の論文による結論である。グリホサートの発がん性や変異原性を示すものはなく、実験動物ではグリホサートが生殖、胚・胎児発生に有害であることもなく、ヒトでの疫学研究でも統計的に有意な偏りのない発がん性の証拠はなく、ヒトにおける発がん性の可能性に関して懸念を示さないという結論が支持された。
世界各国の規制機関はグループ2Aに分類された農薬の安全性を確認し続けているが、IARCは科学に依存することなく同じ結論を出し続けるだろう。
ACSHは、長年にわたってIARCの活動を注意深く観察してきているので、今回の判断は規制政策の基礎となる健全な科学を信奉する者にとっては残念なことではあるが、驚くには値しない。なぜならIARCという組織は、規制機関の中でも最悪の部類に属し、(間違った)予防原則に基づく政策のために最新の科学やコンセンサスを無視するという評判を確立しているからだ。
*この記事は、Dr.Gilbert Ross 2015年3月23日公開https://www.acsh.org/news/2015/03/23/iarcs-ruling-on-glyphosate-ignores-the-science
をAGRI FACT編集部が翻訳編集した。
筆者AGRIFACT編集部 |