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第9回 グリホサート・ゲート IARCの科学的不正行為【IARCに食の安全を委ねてはいけない】

特集

世界の規制機関が否定しているグリホサートの発がん性を、IARC(国際がん研究機関)がおそらくヒトに対して発がん性があるとしている理由は時代遅れの分類法だけではなかった。グループ2Aを公表する同じ時期にIARCの外部顧問はラウンドアップ裁判の原告代理人を担当する法律事務所とコンサル契約を結び、多額の報酬を得ていたのだ。IARCの科学的不正行為とは。

IARC外部顧問がラウンドアップ裁判担当の法律事務所と癒着

IARC(国際がん研究機関)の初代所長ジョン・ヒギンソン博士は、ACSH(全米科学健康評議会)の科学顧問でもあった。 IARCはヒトの発がん性物質を特定してさらなる研究を行い、健康政策の指針を示すことを目的に設立された。この頃はまさに栄光の時代だった。

しかし残念ながら、IARCは1965年の設立から52年を経て、健康に対する現実の脅威を特定するよりも、いたずらに人々を怖がらせることに関心があるような組織になってしまった。ベーコンとプルトニウムを同じくらい危険だと宣言する(どちらも「ヒトに対する発がん性がある=グループ1」に分類しているような組織は完全に道を踏み外している。

IARCは、ラウンドアップ系除草剤の有効成分グリホサートという世界で最も使用量の多い除草剤について、「おそらくヒトに対する発がん性がある=グループ2A」と判断し、事態を収拾し始めた。EPA(米国環境保護庁)やEFSA(欧州食品安全機関)をはじめ、世界の主要な科学・規制機関はすべて発がん性を否定しているにもかかわらずだ。IARCの母体であるWHO(世界保健機関)でさえ、グリホサートががんを引き起こすことはないと考えている。一体、IARCはどうなっているのか。

私たちは今、その答えを手に入れた。サイエンス2.0のDavid Zarukの調査によると、グリホサートを発がん性物質に指定するよう働きかけたIARCワーキンググループの外部特別顧問で、IARCグリホサート会議で唯一の外部専門家顧問でもあるクリストファー・ポワティエ氏が、グリホサート製造業者を訴えれば大金を得られる立場にあるがん患者の裁判を担当する法律事務所からコンサル報酬として16万ドルを受け取っていたと英タイムズ紙が報じたのだ。こうした明らかな利益相反を開示しなかったポワティエ氏の行為は、科学的不正の典型的事例といわざるを得ない。

参考

科学者やジャーナリストにより悪い科学が広められる

さらにロイター通信のスクープ記事によると、ドラフト段階ではあったグリホサートが無害であるという証拠がIARCのモノグラフから意図的に編集・排除されていたのだ。例えば、グリホサートとがんとの関連性を発見したと結論づけたが、実際はその反対であったというものである。ロイターはまた、「IARCは、誰がなぜ変更したのかについては明言しない」と書いている。ロイターの取材に応じた16人の科学者は、この編集についての質問に答えることを拒否した。それは科学のやり方ではない。

参考

IARCとポワティエ氏が行ったことの重大さを言い表すことは困難である。Zaruk博士が自身のWebサイトで書いているように、このような行動はWHOだけでなく、科学そのものを蝕んでいるのである。健康に関するアドバイスをする規制当局が裁判弁護士に買収されるようなことがあれば、人々はどうやってそのアドバイスを信用することができるだろうか?

ACSHでは、良い科学は誰がお金を出すかに関係なく良いものであると信じている。科学研究は、その成果だけで判断されなければならないからだ。しかし、悪い科学は全く別の問題である。ほとんどの場合、悪い科学は、仕事ができないか、それ以上のことを知らない研究者やジャーナリストによって広められる。ときには、買収された人々によって悪い科学が広められることもある。IARCのグリホサート分類はその一つなのである。

IARCは、WHOの評判をひどく、そしておそらく回復不能なほど傷つけた。その上、アメリカやヨーロッパなどにすでに存在している膨大な数の規制官僚を考えると、IARCの役割は過多であり、混乱をもたらすだけである。私たちは米国政府に対してIARCの縮小廃止を勧告している。

*この記事は、Alex Berezow, PhD 2017年10月24日公開https://www.acsh.org/news/2017/10/24/glyphosate-gate-iarcs-scientific-fraud-12014 をAGRI FACT編集部が翻訳編集した。

〜第10回へ続く〜

 

【長期特集 IARCに食の安全を委ねてはいけない】記事一覧

筆者

AGRIFACT編集部

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