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第7回 所有する森林の経営管理権を市町村から “強制的に剥奪される”のか【鈴木宣弘氏の食品・農業言説を検証する】

鈴木宣弘氏の食品・農業言説を検証する

農と食を支える多様なプロフェッショナルの合理的で科学的な判断と行動を「今だけ、金だけ、自分だけ」などと批判する東京大学の鈴木宣弘教授。その言説は、原典・元資料の誤読や意図的な省略・改変、恣意的なデータ操作に依拠して農業不安を煽るものが多い。AGRI FACTはブロガー晴川雨読氏の協力を得て、鈴木教授の検証記事をシリーズで掲載する。第7回は、2018年に成立した森林経営管理法に関する鈴木氏のごく基本的な解釈誤認言説を取り上げる。

森林経営管理法の解釈を誤る

森林経営管理法は2018年に成立し、2021年4月1日に施行された新しい法律である。鈴木氏はコラムで同法の問題点を以下のように指摘している。【鈴木宣弘・食料・農業問題 本質と裏側】類似の手法に注意 ~畜安法・森林管理法・種子法・漁業法をめぐる類似性~(JAcom 2018年9月6日)

森林経営管理法の19条には、本人の同意がなくとも、『不同意森林の自然的経済的社会的諸条件、その周辺の地域における土地の利用の動向その他の事情を勘案して、当該確知所有者不同意森林の経営管理権を当該申請をした市町村に集積することが必要かつ適当であると認める場合には、裁定をするものとする。』

とあり、『経営意欲の低い経営者』として強制的に経営権を剥奪するかどうかは、いかようにも恣意的に判断可能なものとなっている

森林経営管理法の規定では、本人の同意がなくても恣意的な判断で「経営意欲の低い経営者」と認定されれば、所有する森林の経営管理権を市町村に剥奪され、「意欲と能力のある」受託企業がそこの木を伐採して収益を得ることができるという。「その最大の受け皿は大手リース企業が展開する木材チップによるバイオマス発電事業といわれ、これを支援するために、森林環境税(1人1000円)も投入される。」。事実であれば、由々しき問題だろう。
しかし、やはり大事なことが、おそらく意図的にだろうが省かれている。森林経営管理法の第十九条は以下の通りである。

第十九条 都道府県知事は、第十七条の規定による申請に係る確知所有者不同意森林について、現に経営管理が行われておらず、かつ、前条第一項の意見書の内容、当該確知所有者不同意森林の自然的経済的社会的諸条件、その周辺の地域における土地の利用の動向その他の事情を勘案して、当該確知所有者不同意森林の経営管理権を当該申請をした市町村に集積することが必要かつ適当であると認める場合には、裁定をするものとする。

重要ポイントである「現に経営管理が行われておらず」が抜け落ちている。
「経営意欲の低い経営者」と「現に経営管理が行われておらず」では全く違う。後者は全く森林を管理していない森林所有者だ。
空き家などでも、今にも崩れそうで周辺に危険が及ぶ可能性が高く、行政が再三再四注意しても所有者が解体しない場合、仕方なく行政代執行で解体することがある。それと同じ考え方の法律だ。相続した森林を管理せずに放置したままのケースが増え、新たな法整備が求められていたということだろう。
きちんと法律の条文を引用して解説していれば、読者をミスリードすることはない。

所有者に利益分配するのに“盗伐者”呼ばわり

鈴木氏は、

「無断で人の木を切って販売して自分の利益にするというのは、盗伐に匹敵するほどの財産権の侵害で、憲法29条に抵触しかねない。既存漁業者から漁業権を剥奪するのと同様である。」

とも指摘する。

本当に経営管理権を制限された所有者は利益を得られないのだろうか。森林経営管理法第十九条2の五項には、

五 販売収益から伐採等に要する経費を控除してなお利益がある場合において確知森林所有者に支払われるべき金銭の額の算定方法並びに当該金銭の支払の時期、相手方及び方法

とあり、伐採等で得られる収益は所有者にも分配される制度設計だ。“盗伐者”呼ばわりはないだろう。

「しかも、伐採が増えてハゲ山を増やしかねない事業に森林環境税で手助けして、さらに、異常気象と洪水発生を頻発させていくという悪循環が増幅されかねない。」

という鈴木氏の懸念は憶測にすぎない。森林経営管理法に次の条項がある。

(計画的かつ確実な伐採後の植栽及び保育の実施)
第三十八条 林業経営者は、販売収益について伐採後の植栽及び保育に要すると見込まれる額を適切に留保し、これらに要する経費に充てることにより、計画的かつ確実な伐採後の植栽及び保育を実施しなければならない

ハゲ山にする前提の計画は認められないし、計画と違うことをすれば、罰則はないものの指定解除はできる。
企業だろうと個人だろうと、森林をハゲ山のまま放置していてはよくないのは同じで、森林行政の基本法である「森林法」にもそう規定されている。かりに罰則がないことを問題とするのなら、森林法の改正を主張すべき話で、森林経営管理法の問題ではない。

*晴川雨読氏のブログ「森林経営管理法でも大間違いを撒き散らす人」(2020年08月26日)をAGRI FACT編集部が編集した。

第8回へつづく

【特集 鈴木宣弘氏の食品・農業言説を検証する】記事一覧

協力

晴川雨読(せいせんうどく)

 

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