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モンサント訴訟に対するバイエルのプレスリリースについて:よくあるご質問(FAQ)
Q 和解ということは、グリホサートの発がん性を認めたということでしょうか?(バイエルはモンサント訴訟で和解を選択した)
A そうではありません。
訴訟ビジネスが横行する米国では、弁護士事務所がラウンドアップ訴訟を増加させるために、ネット広告からテレビ、ラジオCM、YouTube広告を活用して原告を応募しています。そのため、ラウンドアップ訴訟の原告数は増加しています。
それに米国の裁判の特殊性も知る必要があります。アメリカでは民事訴訟の場合、陪審員を51%の心証割合で説得できれば、被告の過失による不法行為が証明され、賠償金を支払うことになるのです。科学者ではない陪審員はどちらの主張が科学的あるいは医学的に正しいかを判断することはできません。つまり、裁判の結果も科学的ではなく、心象に左右されています。
このような背景から、今後も訴訟件数の増加や裁判での敗訴が想定されます。バイエルは、ラウンドアップ訴訟を継続する選択肢も含めてリスク評価をした結果「和解=訴訟の取り下げ」を戦略的に選んだのであって、グリホサートの発がん性を認めて、和解せざるを得なかったわけではありません。
Q ではなぜ、発がん性を認めていないのに1兆円も支払うのでしょうか。
A リスク評価の結果、ラウンドアップ訴訟を継続するリスクが、和解金とそれに伴う関連費用を大幅に上回る可能性があるからです。
米国では、訴訟ビジネスにより原告数は増加を続けています。このまま「もし、あなた自身あるいは愛する人がラウンドアップに接触したことがあれば、補償される権利を有するかもしれません」 といった原告募集の広告が流され続ければ、原告数はますます増加するでしょう。
また陪審員による裁判において、“健康被害にあった原告(ラウンドアップとがんの因果関係が証明されていなくても)”と、“ラウンドアップ製造企業”のどちらを信じる陪審員が多いでしょうか。心象を重視する陪審員制度において、バイエルは不利な状況であることは確かです。
そうなると、原告数も敗訴もさらに増加する恐れがあります。さらに、個々の長引く裁判や、風評によるビジネスへの悪影響など潜在的なリスクは計り知れません。そのコストは、今回の和解金とそれに伴う関連費用を大幅に上回る可能性があるため、バイエルは苦渋の決断で和解金を支払うことに踏み切りました。
今後のラウンドアップ訴訟については、個々ではなく原告になりうる集団の設立と、ラウンドアップとがんの因果関係を科学的に判断する独立した「サイエンス・パネル」が設立されます。さらに今後の訴訟は、陪審員ではなく、サイエンス・パネルが判断します。サイエンス・パネルがラウンドアップとがんの因果関係がないと判断した場合は、集団訴訟メンバーは、同社に対する訴訟において因果関係の主張ができなくなります。
つまり、現時点での原告については和解金を支払い、訴訟を取り下げてもらいますが、今後はグリホサートの安全性の議論を、訴訟ビジネスを行う弁護士と陪審員による裁判という「心象に左右される判断」から、サイエンス・パネルによる「専門家集団による科学的判断」に移行したいというのがバイエルの和解に踏み切った理由です。