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2015年、国際がん研究機関(IARC)は発がん性リスクを5段階のうち2番目に高い危険度で示したそうですが、やはりグリホサートには発がん性がありますか。

食の疑問答えます

国際がん研究機関(IARC)の発がん性分類は、発がん性の「根拠の強さ」を示すものであり、「発がん性の強さ」や曝露量にもとづく「リスクの大きさ」を示すものではありません。要するに、IARCは発がん性に関連する論文をもとに、注意を促す意図で分類をしているだけです。「そういう論文があるから気をつけましょう」という程度の予防措置だと理解してください。決して、グリホサートが「危険」で、「禁止すべき化学物質」だという意味ではありません。

実際、グリホサートと同分類のグループ2Aには、赤身肉、熱い飲み物、美容・理容など私たちの生活に身近な82種が含まれていますし、「ヒトで発がん性あり」のグループ1(筆者の言葉を借りれば、5段階のうち最も高い危険度)には、ハムやソーセージ等の加工肉など120種が含まれています。IARCは決してそれらを「食べてはいけない」とは主張していません。

さらに2016年には、世界保健機構(WHO)と世界農業機関(FAO)が共同で「グリホサートに発がん性はない」と発表し、IARCの見解を否定しています。IARC以外の世界の規制機関や研究機関も、「グリホサートはヒトに対して発がん性がある可能性が低い」などと結論付けています。

科学的な見地に立つべきIARCは評価にあたって「グリホサートとがんは関係がない」ことを証明した重要な論文を除外していました。これについて、米国でのラウンドアップ裁判に証人として出廷したIARC評価委員長のブレア博士は、もしこの論文を評価に取り入れていれば、「グリホサートにはおそらく発がん性がある」という評価にはならなかったと証言しています。つまり、IARCの評価が間違いであったことを裁判で認めてしまっているのです。

したがって「IARCがグリホサートをグループ2Aに分類したのだから、発がん性がある」という認識は間違っています。このように短絡的に主張する論説には注意してください。

参考


※(5月27日追加)週刊新潮ファクトチェックより抜粋(元記事がついておりませんでした。大変分かりにくくて申し訳ございません)

『週刊新潮』(2020年4月23日号)掲載 グリホサート/ラウンドアップに関する記述を徹底検証2

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