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第21回 れいわ新選組の終焉と、食のポピュリズムのゆく末【オーガニック問題研究会マンスリーレポート】
れいわ新選組の党名が、山本太郎氏の辞任にともない「いのちの党」へと変わりました。2019年の結党以来、左派ポピュリズム政党と称され話題を振り撒いてきた「れいわ」の歴史が事実上、幕を下ろしたことになります。
新代表に選ばれた山本譲司氏は会見で、これまでの「れいわ」が山本太郎氏のカリスマに過度に依存した政党であったことを率直に認めています。
山本太郎氏はれいわ新選組を立ち上げる以前から、福島第一原発事故由来の放射性物質による健康影響や、HPVワクチンの被害などについて科学的根拠に乏しい発言を重ね、その度に専門家らから多くの批判を浴びています。一方で、原発やワクチンに反対する立場の市民団体などからは強い支持を集めてきました。
結党後もその姿勢は一貫しており、食の分野においても様々な疑似科学・陰謀論的な主張が展開され、党としての政策にも反映されています。
参政党に奪われた「手札」
2025年には農業政策のブレーンとして、参政党と同じく東大教授の(誤情報と陰謀論で知られる)鈴木宣弘氏を講師に迎え、全国キャラバンを開催するなどして重用しました。
その影響からか、同年7月の参院選のマニフェストには「農薬と食品添加物の規制強化」「廃止された種子法の復活、種苗法における自家増殖禁止規定の見直し」「種子の自給率も高めていく」などの記述が並びましたが、具体的な根拠や方策については党の「農林水産政策」にも書かれておらず、最後まで不明瞭なままでした。
また当然のように「農薬と食品添加物の規制強化」とセットで、オーガニック給食の推進も表明しています。この両者を結びつけて記述している理由はやはり明示されていませんが、これまでの文脈を踏まえれば、オーガニック給食を「農薬は危険→有機は安全」という単純化された構図の上に位置付けていると理解するのが自然です。この点も、「オーガニック給食が健康な精子と卵子を育て、少子化対策になる」と主張した参政党と大差はないといえます。
2020年の種苗法改正が大きな話題となった際にも、山本太郎氏は前述の鈴木氏や元農水大臣の山田正彦氏らが中心となって流布した誤情報・陰謀論をそのままトレースする形で改正反対を表明し、当時の安倍政権を「火事場泥棒」と呼んで強く批判しました。
これらのことからも、山本太郎氏や「れいわ」にとって食の情報はコストをかけて精査する対象ではなく、最初から政治利用・政権批判の道具でしかなかったのだろうと言わざるを得ません。
その意味で、「れいわ」が徐々に勢いを失い衰退するのと入れ替わるようにして、参政党をはじめとする右派ポピュリズム政党が台頭し、そのなかで食の安全や農業陰謀論といったかつての「手札」を右派に奪われていった光景は、なんとも象徴的でした。
撮れ高の良い方へ逃げてゆく人々
食をめぐる不安はこれからも左右問わず、いいようにポピュリズムに利用され続けるのでしょう。
「種のほとんどが海外からの輸入に依存している」と煽る人々は、その種を海外で生産しているのが日本の種苗会社であることには決して触れません。
食料自給率の低さを声高に訴える人々は、品目ごとの自給率構成や、カロリーベースという計算方法については詳細な説明を避けます。
遺伝子組換え食品に反対する人々は、かつて110名ものノーベル賞受賞者がグリーンピースの遺伝子組換え食品反対運動を非難する共同署名を発表したことを自ら伝えようとはしません。(※1)
食や農へのステレオタイプな不安が相対化され健全な議論へと発展することを、彼らは望まないからです。
食料の確保そのものに強い不安を感じずに済んでいた時代には、その上で何を選ぶかという「食の安全」は、人々を煽動するのにリーズナブルで使い勝手のいいテーマだったのでしょう。
しかし国際情勢の変化や気候変動、著しい円安・物価高などの社会不安が高まっている今では、マッチポンプ的な「食の安全」よりは「食料安全保障」、もっと言えば「飢餓」の方が遥かに切迫感が強く、煽動したい側にとっては「撮れ高」の良いテーマになってきているのが現在の流れです。SNS等でなりふり構わずインプレ稼ぎに走る「インフルエンサー」たちの動きを見ていても、同様の実感を持っている人は多いのではないでしょうか。
また、日産化学株式会社が除草剤「ラウンドアップ」をめぐる誤情報の対策として法的措置を開始したことが、訴訟リスクを嫌う「インフルエンサー」たちの行動判断にも影響を与え、一定程度こうした流れを後押ししている可能性もあります。
「食の安全」程度で悠長に右往左往できていた時代はまだのどかだったと私たちが後悔する頃には、「食の安全」を散々煽っていた人々はとっくに「食料安全保障」の船に乗り換えたあとかもしれません。
食の情報を道具として利用する人々には、総じて口先ほど食への強い信念がないので、期待される「撮れ高」よりリスクの方が高いと見れば逃げていきます。そうなる前に彼らの首根っこをおさえられるかどうかは、私たち次第です。
それはとりもなおさず、あらゆるポピュリズムやアテンションエコノミー、レイジベイティングに飲み込まれない、乗り越えるための術(すべ)を、諦めず模索し続けていくということでもあります。
参照
(※1)ノーベル賞受賞者110名、「遺伝子組換え食品」反対運動を非難(Sustainable Japan)
筆者熊宮渉(ライター/オーガニック問題研究会) |



