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VOL.20 炎上マフィンでもみられた「食の民間資格」【不思議食品・観察記】
科学的根拠のない、不思議なトンデモ健康法が発生する現象を観察するライター山田ノジルさんの連載コラム。驚くべき言説で広まる不思議食品の数々をウォッチし続けている山田ノジルさんが今回注目するのは、マフィン騒動でも注目されていた「食関連の民間資格」について。巷に数あるその資格、本当に役立ち、かつ根拠あるものなのでしょうか……?
その肩書、実は「毒メシ」のヤツでは
小学校で配られるプリントの中には、授業や行事に関するお知らせだけではなく、地域の催し物のお知らせもどっさり含まれています。スポーツクラブやイベント情報、そして時には、子育てに悩む保護者に向けた講座なども。
先日学校で配布され、子どもが持ち帰ってきたチラシは、区の教育委員会が共催している、家庭教育なんちゃら講座でした。見出しはこんな感じです。
「キモチを落ち着かせるごはん」
「親のイライラ・子どもの癇癪は食べ方次第!」
この見出しに、ピンとくる人いませんか? 数年前、ネットに現われた某漫画でも似た表現がありました。塾で見られる、落ち着きのない子ども。成績が上がらない原因は「から揚げ弁当」! から揚げ弁当をはじめ、「毒メシ」を食べているからだ!というヤツ。マフィンほどではないにせよ、そこそこ燃えたあの出来事を思い出します。おそらく、毒メシ漫画の元ネタは「オーソモレキュラー(分子栄養学)」という、医学的には根拠がないとさんざん言われているヤツです。
から揚げ弁当を「毒メシ」呼ばわりして(料理雑誌なのにぃ)、あちこちから怒られた記事はそこそこのスピード感で削除され、「から揚げを否定するようなコンテンツを掲載してすみません」的な謝罪が出ていましたが、「そこじゃなくて、科学的根拠のない健康情報を載せることが問題なんだ」と多数つっこまれていましたね。数年前の話を引っ張り出して、寝た子を起こすようなマネをして申し訳ない気持ちはありつつ、性懲りもなくこうしてシレっと教育現場を介在して日常にトンデモ的なものが紛れこんでいるのを見ると、リメンバー毒メシ。つい、言いたくなってしまいます。
参考
星の数ほどの民間資格にはトンデモも
少なくとも「こういう考えに基づいた栄養指導です」と明記してあれば、モヤりませんでした。市民講座の中に、一般的な科学・医学と違う考え方のものがあっても、それは問題ないでしょう(例えば食なら薬膳やマクロビなどもあるでしょうし)。しかし、一見普通の栄養学と変わらないように見える肩書(なんちゃら栄養カウンセラー)をかかげるのは、何かを隠しているような意図を感じてしまう。「分子栄養学」「オーソモレキュラー」と明記したら、都合が悪いのでしょうか(講師の名前から、それがベースであることは確認済み)。そこから、こうした民間資格を掲げて行われる講座の信頼性に、疑問が生じます。
2023年11月に、多方面の学びを我々に与えてくれたデザフェスのマフィン騒動でも、店主の食関連資格に一部で注目が集まりました。
「アレルギー対応食アドバイザー」「上級食育アドバイザー」
この資格を有効に活用している人は、もちろんたくさんいるでしょう。しかし、それが安全やおいしさにつながるかというのは、また別問題であることも、デザフェスのマフィンが教えてくれた大切なことです。
お金を払えば手軽にとれる民間資格は、食分野だけでも星の数ほど(食系以外でもそうなのはいわずもがな)。キャッチーなそれっぽく見える資格をいくつかとれば、特殊スキル搭載感が演出でき、勝負(=商売)の場で多少効果を発揮できることもありそうです。しかし専門知識や技術が、付け焼き刃感があるケースも散見。さらには質が微妙どころか、マルチ商法団体と深くかかわっている食資格も存在しています(怖!)。民間資格であっても、その食文化をじっくり学び、仕事や生活に生かそうといういい資格講座もたくさんあるようですが、その逆もしかり。
その資格で相手の信頼得られてますか?
だいぶ昔の話ですが、女性の健康を応援するといった趣旨の某協会の認定資格講座のお試し版のようなものを受講しました。そこでは協会の代表女性が「チョコレートを食べるとチョコレート嚢胞(のうほう)になる!」「だからうちの子供はまず食べない」のような話をしていて、さすがにそれは言い過ぎぃ……と若干引いてしまった思い出があります。こうした知識が詰め込まれる資格、少なくとも私は欲しくないな。
民間資格の需要には、セカンドキャリアやそれ以前の雇用問題などが関わり、どうにか手に職をつけ活路を見出そうとする切迫した事情もあるのでしょう。でもそれ、本当に役立つのでしょうか。それで信頼が得られるのでしょうか。技術や知識の向上に役立つのか。楽しみで取得するという場合は、特に問題ないと思いますが。
なんちゃらマイスター、アドバイザー、カウンセラー、トレーナー。名刺やSNSのプロフィールがInstagramのハッシュタグかという勢いで謎の資格(=肩書)が埋め尽くされているほどに、信頼とは逆の微妙さ(うさん臭さかも)が漂ってはいないでしょうか。子どもが持ち帰った1枚のプリントから、そんな雑感があふれた年末でした。
来年は資格を!という豊富を抱く方、正月休みの間に、その内容や資格保持者の活動をよーく吟味されても遅くはありません。
それでは皆様、よいお年を。
*一部文字訂正(23.12.21)
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