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国会議員の「発達障害の原因は農薬」「オーガニックで改善」発言で思ったこと:40杯目【渕上桂樹の“農家BAR Naya”カウンタートーク】
川田龍平参議院議員が自身の投稿で、発達障害の原因を食べ物と結びつけ、「オーガニックな食事で子どもの発達障害の症状も改善!」と発言して物議を醸しました。この発言は多くの記事で報じられ、専門家や当事者など様々な方面から反応がありました。今回はその件について述べたいと思います。
発達障害の専門家からは「オーガニックフードは『魔法の薬』ではない」「差別につながる心配もあります」という指摘がありました。
発達障害の当事者や親たちからは「誤解を広めないでほしい」「根拠のないことを言わないでほしい」「無責任である」といった切実な声が殺到し、本人のXは炎上状態になりました。
口をつぐむ同系統の人々
私はこの一件を見て思いました。
「まてよ、これは他にも言ってる人がいたよな?」と。
全国のあちこちで活動している「オーガニック給食運動」もそうですし、山田正彦氏の著書『子どもを壊す食の闇』もそうです。
他にも一般人向けのセミナーなどでも何度も見たことがあります。
農薬を悪く言いたいのか分かりませんが、安易に発達障害と結びつけて当事者を傷つけていた人は他にもいたはずですよ。
みんなどうしているんでしょうか?
いや、別に「他の人も炎上するべきだ」と言いたいわけではありません。
普段から自分が言っていることを、せっかく川田氏が言ってくれて、しかも大注目されたんです。
「よくぞ言ってくれた」「川田氏の言うとおりだ」と言うのかな? と思ったんです。
でも、みんな黙っていました。
特に、長崎には「発達障害の原因は食べ物」「子どもたちの未来や笑顔は守れない」と言って国会議員になった人もいます。
当時のこの記事を読むと、そのために国会議員を目指したかのようです。
私は本人に「そんなこと言って大丈夫なんですか?」と質問したことがありますが、「これは僕の信念なので!」とはっきり言われたんです。
そんな信念があるなら、今こそ川田氏を擁護すればいいじゃないですか。
「川田議員の発言は、僕が信念を持って言っていたことだ!」と。
しかも同じ政党で、同じ「オーガニック給食議連」でしょう?
理解促進のきっかけになれば
まあ、皮肉はさておき、私はこの一件をきっかけに、食や農薬の不安を煽るツールとして発達障害を利用するのではなく、当事者たちへの本当の理解が進むきっかけになればと思っています。
私は当事者や親たちのグループで話を聞くことがありますが、「発達障害の原因は食べ物」のような無責任な言説に本人たちは傷ついて疲弊しているんです。
発達障害の親たちやサポートする人たちの話を聞いていると、「この子の原因は何だろう?」と言っている人はいなくて、特性とどう向き合うか、世の中に存在する障害にどう対応するか、どんなサポートがあって、どう利用できるかについて話し合っています。
政治家だったら本来はそっちが得意なはずですよ。
農薬云々にうつつを抜かしている場合じゃないです。
私はなにも農薬が大好きで農薬の肩を持ちたくてこんなことを言っているわけではないです。
安易に原因を推測して無責任に発信することに反対しているだけです。
これは、発達障害に限った話ではありません。
今では信じられませんが、昔は性的マイノリティについても「原因は食べ物かも?」「どうすれば“改善”するんだろう?」と言っていた人もいたそうです。
いくら農薬を悪く言いたくても、今そんな恥ずかしいことを言う人はいないはずです。
「こんな論文があるんだぞ」と言う人もいないはずです。
たとえ一瞬思い浮かんだとしても、実際に口に出す前に誰もがちゃんと思いとどまっています。
それは、生きづらさや不便さの原因を、当事者の中ではなくて社会の中に見出すようになったからです。
発達障害についても、こうした過去の経験を頼りに世の中を変えていくことだってできるはずです。
政治家に求めたいのは、発達障害の原因をあれこれ推測することではありません。
様々な発達の人たちみんなが生きやすい社会を作っていくことです。
【渕上桂樹の“農家BAR Naya”カウンタートーク】記事一覧
筆者渕上桂樹(ふちかみけいじゅ)(農家BAR NaYa/ナヤラジオ) |