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農業に関するデマで打線組んでみた!〈パート44〉【ナス農家の直言】
少し間が空きましたが、
今回も、
「農業に関するデマで打線組んでみた!〈パート44〉」をテーマに、
SNS等に溢れる農業デマを、私が分かりやすく紹介していきます!
1.(中)国民全員が農業をすればいい!
1億総農家という発想はとても自由で、ある意味、理想的に聞こえます。
しかし残念ながら、一次産業の従事者が多いというのは、GDPの低い新興国の特徴です。
アメリカなどの先進国を見ても、一次産業の従事者は少なく、産業別GDPの高い工業やITの就労人口が多いです。
だから国民全員で農業をするというのは、国のGDPを低くする行為であり、農業は少ない従事者が行うことで、産業のバランスが成り立っているとも言えます。
私個人の意見としては、農家にならずとも、全国民が家庭菜園レベルで野菜を作れる技術を持つべきだとは思います。
都市部オンリーの生活では、土に触れる機会すらなく、どうやって作物が育っているかも分からないまま大人になっていくことも多いからです。
「農薬は悪だ!」みたいな周回遅れのデマは、農業の難しさを知っていれば、簡単に看破できるレベルなのですから。
「農薬が!化学肥料が!」とか、レベルが低すぎます。
2.(二)雨にも殺虫剤が入っている!
某教授の論文によると、雨水に最大1.72ng/L(= 0.00000172 ppm)のネオニコチノイド系農薬が検出されたそうです。
この論文に関して、私は某教授にいくつか質問があります。
①検出されたとされるネオニコチノイドの最高値は1.72 ng/L、これは一般的な残留農薬の濃度(数 ppm)と比べて 10万〜100万分の1です。
厳しい残留農薬基準の、さらに100万分の1、全く恐れる必要はないのでは?
雨に一滴も触れずに、生活できる人がいるのでしょうか?
②超高感度の質量分析によって、雨中のネオニコチノイドが検出されたということですが、農薬以外の他の化学物質も当然検出されます。
カフェインやニコチン、化粧品由来の成分なども、当たり前に検出されるそうです。
雨水中には他の化学物質も存在するのに、教授の研究ではそれらを除外しているということ。なぜネオニコチノイドを狙って、分析したのでしょうか?
③この論文の研究テーマは、「農薬が環境中にどう循環しているか」であって、ネオニコチノイドや農業を否定するものではありません。
にもかかわらず、某教授はこの論文を引用する形で、
「虫が少ないのは、雨中のネオニコチノイドのせいかも。」
という趣旨の投稿をしています。
残留農薬基準の100万分の1で影響が出るのであれば、世界中の虫は全滅しているのでは?
農薬に対して、ミスリードを狙っていると思われても仕方がないと思います。
3.(右)節水型乾田直播は、モンサントの陰謀だ!
「節水型乾田直播は発芽するまでに、雑草の防除をする必要がある。ラウンドアップが使用される農法で危険だ!」
と危惧されている方もいるかもしれません。
たしかに過去の記事でも紹介した通り、バイエルは乾田直播を推奨しています。
節水型の乾田直播となれば、雑草管理に農薬が使用されることもあるでしょう。
しかし除草剤は適切な使用方法に限られるため、コメが収穫される時期には、一日摂取許容量(ADI)以下の数値になります。
消費者が、過度に除草剤を怖がる必要はありません。
田植えが主流の日本で、省力化ができる乾田直播の研究が進むのは、農業にとっては良いことだと思います。
4.(三)カエルの鳴き声が減ったのはネオニコのせい!
「せっかくアマガエルががん細胞を死滅させる細菌を持っているのに、ネオニコのせいで個体数が減っている! 日中にカエルの鳴き声が聞こえない!」
某教授の投稿ですが、間違っています。
農薬が生態系に影響を与えることはあるかもしれませんが、だからといってカエルが減った原因を、ネオニコチノイドだけのせいにするのは暴論がすぎます。
都市開発や河岸整備など、農業以外でも、思い当たる原因がいくつも考えられます。
そもそもアマガエルは、夜に鳴きますよ?
5.(左)自然栽培のデータはあるけど出せない!
某政党の党首が、自然栽培の推奨に関してトーンダウンしています。
「自然栽培でも(慣行農家並みの)収量を出すことは可能だけど、農家ごとの収量にばらつきがある。何百万も払って自然栽培のデータを出すのは、政治のやることなのか?」
という趣旨の発言をされていましたが……。
農薬批判を繰り返してきたのは誰あろうあなた自身ですから、データを出すことが説明責任を果たすことになると思います。
何百万を払ったとしても、農薬批判を支持している党員は納得するはずです。
6.(一)ちょっとくらい畑に入ってもいいだろ!
農家でない方が、興味本位で畑に入って来ることがあります。
それ、農家にとっては死活問題になり得ます!
靴裏についた泥の中の病原菌が畑に移ります。圃場(ほじょう)内で病気がまん延し、全滅することが考えられます。
畜産農家にとっても、病気を持ち込まないように、関係者以外は立ち入り禁止のところがほとんどです。
知り合いの畜産農家は、タイヤと人間の足が圃場内に入る時は消毒します。
新生姜農家は、機械を徹底的に洗浄して土を洗い流し、別の圃場に持ち込まない工夫をしています。
絶対に許可を取ってください!
7.(遊)磁石の力で作物を元気に!
「圃場に磁石を埋めて、引きつけ合う力で作物にいい影響が出そう。」
たしかに磁力で作物が育つなら夢がありますが、磁石の力で作物が育つ効果は、化学的に証明されていません。
加えて、作物や土壌に影響を与えるほどの磁力を出すには相当大きな磁石が必要であり、営利的な農業では現実的ではありません。
今後の研究で、磁力と農業の関係が証明されれば別ですけどね。
8.(捕)大量に農薬を買ったから、小分けにしてあげるよ。
昔の農家の中には、農薬を使う量を小分けして管理していたかもしれません。
しかし農薬の小分けは、農薬取締法に違反しています。
つい最近も、誤って小分けした農薬が消費者に渡ってしまい、ニュースになっていました。
万が一、消費者の口に入ってしまったら取り返しがつかない事故になるところでした。
9.(投)農薬や化学肥料を使うから、生理障害になりやすい!
作物の不調には、病害虫の他にも生理障害というものがあります。
曇天が続いた後に晴れると、作物が慣れておらず、一時的に萎れる症状などがそうです。
しかし、作物の生理障害は環境条件によって引き起こされるものであり、ある意味では防ぎようがありません。
作物の生理障害は、農薬や化学肥料は関係ないケースが多いです。
まとめ
SNSやネット、口コミを介して見聞きした不安を煽る情報は妄信せずに、一度立ち止まって冷静になり、AGRI FACTや公的機関が発信する情報を調べてみてください。
筆者ナス男(ナス農家&サイト「農家の決断」管理人) |



