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衝撃! 6割以上の消費者が「給食にオーガニックを使った方が良い」と回答?【オーガニック問題研究会マンスリーレポート19】
今年の3月に発表された有機農業についての意識調査では、有機食品を購入している消費者の大多数が「安全で健康に良い」というイメージを強く持っていることが、あらためて浮き彫りになりました。
※令和7年度 有機農業及び有機食品に関する意識・意向調査結果(農林水産省)
https://www.maff.go.jp/j/finding/mind/attach/pdf/index-86.pdf
千葉大学の深野祐也准教授はSNS上でこの調査結果に「20年以上ずっとこの誤認を放置したまま、有機推進しているのは、大きな問題」と指摘し、農水省の責任を問うています。これに対し、久松農園の久松達央さんは農水省以上に「有機だからおいしい、有機だから安全、を謳って安易に売ってきた生産者と小売の責任」が大きいと応答しました。
農水省から有機農業に対する意識調査の結果概要がhttps://t.co/SAeBA1vz9h
やはり、購入者の大多数は「有機食品は安全で健康に良い」という誤ったイメージを持っている。20年以上ずっとこの誤認を放置したまま、有機推進しているのは、大きな問題だと思います。科学に基づく有機推進を。 pic.twitter.com/eAbGwnLPmp— 深野 祐也 (@Alien_Evolve) April 11, 2026
これは農水だけを責めるのは酷で、一義的には「有機だからおいしい」「有機だから安全」を謳って安易に売ってきた生産者と小売(とりわけ大地、らでぃっしゅ)の責任で、改めて有機農産物はモノとしては何も優位性はないことの踏み絵を全員で踏むべき https://t.co/A9PI1wpBUo
— 久松達央 5/20発売即重版!『おいしい日本の野菜が消える日 二極化する農業の未来』(光文社) (@Kazedayori) April 11, 2026
一方で、回答した消費者のうち6割以上が有機やオーガニックという言葉の意味を理解していなかったことも明らかになっており、「安全で健康に良い」がいかに漠然とした曖昧なイメージに基づくものであるかを裏付ける格好になっています。
その影響は「オーガニック給食」に関する意識にも、ダイレクトに及んでいます。今回の調査では実に6割を超える消費者がまさしく「安全で健康に良い」を主な理由として「給食にオーガニックを使った方が良い」と賛成寄りの回答をしているのです。
「給食に有機食品を使わなくていい」は、わずか17.5%
「オーガニック給食」に関する消費者意識調査の結果は、なぜか農水省の発表資料では省略され、全く掲載されておらず、そのためか、報道やSNS上でもほとんど話題になっていません。
※【調査の概要】 と【統計表】から、該当の設問と調査結果を閲覧することができる。
国が有機農業推進の重要ツールと位置付ける「オーガニック給食」について、民意の後押しを得たという根拠にもなり得るデータを、なぜ調査結果に掲載しないのか、大々的に利用しないのか、その理由は色々考えられますが、今のところ憶測の域を出ません。まずは限られた統計資料から、この結果を読み解いていきましょう。
調査票によると、給食に関する設問は下記の3点です。
- 問6 学校給食で有機食品を使うことへの考え
- 問7 有機食品を「使ったほうがいい」と選択した理由(複数回答)
- 問8 有機食品を「使わなくていい」と選択した理由(複数回答)
※統計表をもとにAIで作成
その結果、「給食費が高くなっても、使ったほうがいい」15%、「給食費が高くならないなら、使ったほうがいい」47%を合わせ、前述の通り62%もの消費者が「オーガニック給食」に賛成寄りの回答を示しており、「使わなくていい」はわずか17.5%に留まっています。
さらに注目すべきは「使ったほうがいい」と選択した理由で「安全・安心・健康」を挙げる回答が、いずれも50%を上回っています。行政が建前として掲げることの多い「環境」や「地域の農業を応援」はわずか20%程度で、消費者との認識のずれが明らかになっています。一方で「安全・安心・健康」とセットで語られがちな「おいしい」はなぜか16%と低迷しているのも興味深いところです。
※統計表をもとにAIで作成
冒頭で述べたように、「有機食品は安全で健康に良い」という漠然と共有された社会的イメージが、そのまま給食に対する捉え方にも波及しているのがわかります。その意味では、あまり驚きのない結果といえるかもしれません。
調査フレームの問題点
気をつけたいのは、有機食品を「使わなくていい」と選択した消費者のうちでも、4人に3人(73.3%)がその理由に「給食費が高くなるから」を選択している点です。
ただでさえ少数の「使わなくていい」派も、コストの問題さえ解消すれば多くが賛成に転じ得るということなのでしょうか。
※統計表をもとにAIで作成
ここで、あらためて最初の設問(問6)を振り返ってみましょう。問の文面は「学校給食で有機食品を使うことについて、どのようなお考えをお持ちか、回答してください」というきわめて簡潔なもので、それ以上の情報は提示されていません。
そして回答の選択肢は、
- 給食費が高くなっても、使ったほうがいい
- 給食費が高くならないなら、使ったほうがいい
- 使わなくていい
- わからない
の4つです。
このように情報の限られた設問では、回答する側に何らかの予備知識がない限り、「なるほど、オーガニック給食の賛否を分かつポイントは給食費が高くなるか、ならないかにあるのだな」という視線誘導がはたらきます。これを「フレーミング効果」と呼びます。
有機食品を使うことと、給食費が上がることは本来必ずしもセットではなく別々に切り分けて考えられる問題であるはずなのですが、あえて両者を結びつけた上で「高くなっても、使ったほうがいい」という強硬な選択肢を最初に提示することで、まずは「高くなるか、ならないか」という論点を印象付けることになります。
ここで「給食費が高くなるのは、さすがにちょっとな」という抵抗感を引き出した上で、「高くならないなら」というマイルドな妥協案を示すことで、「高くなるか、ならないか」の論点を補強しながらも、より選びやすい「条件付き賛成」に回答を誘導することができます。同じ賛成でも「高くならないなら」の割合が明らかに多いのは、ひとつはこのようなフレーミングによるところが大きいと言えるでしょう。
言葉選びも重要です。仮に妥協案としての「高くならないなら、使ったほうがいい」を「高くなるなら、使わないほうがいい」と言い換えれば、どう見えるでしょう。ほとんど同じ意味なのですが、これを賛成派とカウントするのは難しいでしょう。
一方で反対の選択肢は、問6の時点では無条件での「使わなくていい」しか示されておらず、それなりの理由がなければあえて選択しづらい回答です。
ただ、ここでもフレーミングの影響は免れません。「使わなくていい」と回答した消費者のうち、理由として「給食費が高くなるから」が圧倒的に多くなっているのも、そもそも最初の設問で「給食費が高くなる」ことへの抵抗感を意識づけされた消費者が「使わなくていい」の選択肢に流入しているという構図のあらわれといえるでしょう。
こうして考えてみると、6割超の消費者が「オーガニック給食」に賛成しているという解釈自体も、一面的で危うく思えてきます。
(字幅の関係上、掘り下げることはできませんが、民間のWebモニターを対象にした調査であることなど、調査方法によるバイアスも一定程度考慮する必要はあるでしょう。)
調査によって不可視化される「オーガニック給食問題」
このような調査フレームの問題点が、恣意的に設計され、誘導されたものかは正直なところわかりません。ただ、こうしたフレーミングの影で、いくつもの論点が不可視化されていることは明らかで、指摘しなくてはなりません。
例えば最初の設問で誘導された「給食費が高くなるか、ならないか」にしても、オーガニック給食はこれから始まるまっさらな取り組みではなく、すでに全国各地で多数の事例があり、そこで給食費が「高くならない」理由としては交付金や自治体予算による差額補填がおこなわれていることが大半です。
逆に交付金が打ち切られ、自治体予算も確保できずにオーガニック給食が継続できなくなっているような地域もあるなかで、公金(税金)による補助がほとんどの事例で前提条件になっているという既成事実を開示することなく、「給食費が高くなるか、ならないか」だけを切り出して問うことはフェアでないばかりか、調査結果自体の有用性も低下させることになります。「そうと知っていたら、あの回答は選ばなかった」という消費者が相当数いたかもしれないと、言えてしまうわけです。
そしてもちろん、東京都の品川区の事例などを筆頭にこれまで報道等で指摘されてきたオーガニック給食の問題点についても、今回の設問内容では完全に不可視化されているという点は、言うに及びません。
オーガニック給食の賛否を直接的に問うておきながら、すでに社会的に一定程度認知されているはずの問題点に一切触れていない調査結果に、どこまでの価値があるのでしょうか。少なくともそれらの問題を認識している層からすれば、今回の調査はこれまで積み上げられてきた議論を単なるコスト増の賛否へと矮小化をはかっているようにも見えてしまいます。
結局のところ、どこかの場面で「国民の過半数が賛成している」というアリバイに使われるか、様々な問題点をオブラートに包む方便にされてしまうのであれば、どうぞこのまま、ひっそり隠しておいていただいた方が、と思わざるを得ません。
筆者熊宮渉(ライター/オーガニック問題研究会) |



