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IARCのデータ隠蔽と法律事務所とのマッチポンプ – グリホサートの真実とは2【完全版】(vol.3)

食と農のウワサ

生産現場のリアルな声を発信する日本有数の農業チャンネル「トゥリーアンドノーフ」を運営する徳本修一氏が、グリホサート問題の歴史的経緯から背後で蠢くビジネス人脈、科学的評価や対立の解決法まで、食の安全安心の権威・唐木英明氏に聞きまくった1時間。グリホサートの真実とは2【完全版】をAGRI FACT用に再構成してここにお届けする!(vol.3)

IARCのデータ隠蔽と法律事務所とのマッチポンプ

唐木 さらにIARCの評価とラウンドアップ裁判(集団訴訟)の裏側にいろんな疑惑があることが徐々にわかってきました。ロイター通信のケイト・ケランドという女性記者がこの問題を追及しています。彼女が最初に告発したのはクリストファー・ポルティエという科学者で、彼はIARCワーキンググループの外部特別顧問であり、グリホサートをグループ2AとしたIARCグリホサート会議で唯一の外部専門家顧問でした。経歴を調べると反農薬、反GM団体であるアメリカのNGO、環境防衛基金で協力科学者として働いていた根っからの反農薬、反遺伝子組み換え思想の人だったのです。

その彼がIARCに入り込んで「グリホサートに発がん性がある」ということを言い出した。ポルティエ氏は科学的な評価試験を経てグリホサートの安全性を認めたヨーロッパの評価機関に対して、「IARCが発がん性ありと評価したのだからヨーロッパの評価機関も発がん性を認めろ」と主張し、ほかの科学者と一緒に申し入れた。ロイター通信のケランド記者は「ポルティエ氏の立場は利益相反ではないか。反農薬、反GM団体のため、自身の思想信条のためにIARCを利用し、評価を歪めているのでないか」と記事で疑義を呈したわけです。

さらに理解を深めたい場合は

続いてケランドさんが追及したのは、IARC評価委員長のブレア博士です。彼は「実はラウンドアップに発がん性がないことを知っていたが、彼はグリホサートとがんは関係がないことを証明した重要な論文を評価から除外して、そのデータを隠蔽した」ことを告発しました。記事が出たのは2017年で、ラウンドアップ裁判が始まったのは記事より後でした。裁判でこの問題が取り上げられ、証人として出廷したブレア氏はデータ隠しを認め、「もしこの論文を評価に取り入れていれば、グリホサートにはおそらく発がん性があるという評価にはならなかった」と証言しました。IARCの評価は間違いであったことをラウンドアップ裁判で当のIARC評価委員長が認めているのです。

ケランド記者の3番目の追及は、「実はIARCの原稿にもグリホサートとがんは無関係と書いてあった。ところがその後、ある時点で書き直され、おそらく発がん性がある=グループ2Aになった。誰がどういう証拠を持ってこれを書き直したかをIARCは明らかにしていない」と記事で告発しました。

その後、別の記者が衝撃的な事実をスクープしました。さきほどIARCが評価した数日後に米国の法律事務所がグリホサートを使用したがん患者の募集を始めたと言いましたが、実は、IARC外部特別顧問のポルティエ氏がその米国の法律事務所のコンサルタントに就任していたのです。もちろん高額の報酬で雇われました。ポルティエ氏はもともとこの法律事務所に協力をしていて、別のIARC関連の訴訟のためのコンサルタントもしていた事実が発覚しました。ラウンドアップ裁判における法律事務所、環境団体、科学者の関係性資料 ラウンドアップ裁判における法律事務所、環境団体、科学者の関係性

2人の名前が出てきました。ポルティエ氏は米国の法律事務所のコンサルタントをし、ブレア氏は環境保護団体の研究員をしている。そしてポルティエ氏はこの環境団体とも協力関係にある。ブレア氏はグリホサートの発がん性評価の会議に、IARC評価委員長として参加した。ポルティエ氏はと唯一の外部専門家顧問として参加した。

この2人がIARCでグリホサートの評価をするときに、発がん性がないというデータが無視されました。しかも発がん性がないという最初の結論も途中でなぜか見直されました。その結果、おそらく発がん性があるグループ2Aに分類されてしまいました。そしてその数日後にポルティエ氏をコンサルタントに迎えた弁護士事務所が集団訴訟を起こして大々的に原告を募集し、巨額の収益を上げたのです。また環境保護団体も、グリホサートには発がん性があり、だからGMOと共に禁止すべきとの主張の正しさが証明されたということで、いろんな団体から寄付を得て、さらに活動を続ける資金を獲得しました。

ラウンドアップ裁判をめぐるこうした図式から見えてくるのは、ラウンドアップ(有効成分グリホサート)には発がん性がないにもかかわらず、自分たちのビジネスや活動資金目的の人たちが運動した結果、発がん性があることにされてしまった。これがラウンドアップ裁判の裏側にある事実ということだろうと思います。

グリホサートの真実とは<2> -「食の安全」の世界的権威に聞いてみた!〜完全版

 

【グリホサートの真実とは2】記事一覧

プロフィール

唐木英明(公益財団法人食の安全・安心財団理事長 東京大学名誉教授)
徳本修一(トゥリーアンドノーフ株式会社代表取締役)

 

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