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第9回 どうやって分析するのですか【農薬について知ろう】

コラム・マンガ

農薬の安全性が気になる人の不安を解消すべく、残留農薬を中心に、農薬の使用目的や安全性、検出法などについて、サイエンスライターの佐藤成美がシリーズで解説していくこの連載。第9回では、農薬の分析方法を解説します。

分析のステップ

農薬の種類はとても多く、農薬の種類によって、性質はさまざまです。そこで農薬によって方法は異なり、農作物を直接分析機器に放り込めば、分析できるというわけではありません。どの農薬を分析するにも、共通して「前処理」「測定」「解析」という三段階のステップが必要です。農作物などに含まれている農薬は極めて微量なので、分析は難しく、いずれのステップにしても高度な技術が必要です。

農薬成分を取り出す

前処理のステップでは、農作物などの試料から農薬成分を取り出します。どの部分を分析するのかは、目的によって異なり、食べる部分だけを調べる場合もあれば、葉や皮の部分まで全体を調べる場合もあります。試料を細かく粉砕し、水や有機溶媒中に農薬成分を溶かし出します。さらに分析の対象となる農薬成分と測定の邪魔になるそれ以外の成分を分けて、目的成分を高濃度に含む状態にして、測定試料とします。

農薬の種類によって、水に溶けやすいもの、溶けにくいもの、変化しやすいものなどがあるので、その成分によって方法を変えなければなりません。操作によって、農薬成分が失われないように十分に注意する必要があります。

機器を使って測定する

「測定」のステップでは、目的成分のみを検出し、正確に定量することが求められます。測定機器には、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、質量分析装置などが使われ、単独、もしくは組み合わせて分析が行われます。これらの分析装置では、微量な農薬成分を検出し、検出される時間を測定します。あらかじめ標準の物質を分析しておき、検出される時間を確認することで、目的の物質がどうかを判断します。

一斉分析では、一度に多数の成分を検出することが可能な装置を使います。今では一度に100種類以上の農薬を分析できる装置が開発されています。その結果を、解析し、基準が守られているかどうか、妥当かどうかを判断します。

新しい方法も

前処理の方法や測定法は、公示法に示されていますが、新たな試験法も開発され、使われることがあります。たとえば、前処理は分析値に影響するので、とても重要なステップですが、手間がかかります。そこで、QuEChERS法(キャッチャーズ法)という簡便な方法が開発されています。名称は、「Quick(迅速)、Easy(簡単)、Cheap(効率的)、Rugged(頑健)、Safe(安全)の頭文字からつくられました。

いくら簡便な方法を開発しても、その方法で信用できる正確な測定値が得られないと困ります。そこで試験法が妥当かどうかのガイドラインを設けています。

また、厚生労働省も試験法の改良や新しい方法を開発しており、試験結果などとあわせて、随時公表しています。

【農薬について知ろう】記事一覧

筆者

佐藤成美(サイエンスライター)

 

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