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グリホサートに関するデマで打線組んでみた!【落ちこぼれナス農家の、不器用な日常】

農家の声

これまで農薬に関するデマで打線を組んできましたが、その中でも特に多いのがグリホサート(ラウンドアップ系除草剤の有効成分)に関するデマです。
グリホサートのデマだけで打線が組めてしまうほど、情報やデマが散見されているので注意が必要です!
ということで今回は、
「グリホサートに関するデマで打線組んでみた!」
をテーマに、グリホサートのデマを農家の僕ナス男が紹介します!

1.(二)グリホサートは枯葉剤と同じ成分で危険だ!

「グリホサートはベトナム戦争で使われた枯葉剤と同じ成分だ!」
一番と言っていいほど、多いデマがこれです。
ググってもすぐに分かることですが、枯葉剤とグリホサートは全くの別物です。
枯葉剤とグリホサートを意図的に混同させるような発言をしている方には、注意しましょう。

2.(遊)モンサントは危険な悪の組織だ!

何かにつけて、未だにモンサントを悪の組織のように言う方も多いです。
たしかに枯葉剤を製造していたのはモンサントというアメリカの企業で、グリホサートも製造していました。
ただし、モンサントはすでに存在しません(バイエル社に吸収合併されました)。
未だに「モンサントとググってみて!」と言っている人こそ、ちゃんとググってみるべきです。

3.(右)グリホサートには発がん性がある!

「グリホサートでガンになる!」
「発がん性があると研究機関が認定した!」
これも、よくある切り取り偏向報道です。
国際がん研究機関であるIARCが、グリホサートを「ヒトに対しておそらく発がん性がある=グループ2A」とカテゴリーしたことが疑義を呼ぶ原因になったかと思いますが……
これにはいくつかの誤解があります。

①あまり知られていませんが……

グリホサートと同じカテゴリーに、赤身肉やシフト勤務、熱い飲み物があり、
さらにグリホサートより上のカテゴリー(より発がん性の可能性がある)に太陽光や加工肉、たばこやアルコールがあります。

国債がん研究機関(IARC)が公表した発がん性分類

これらは日常に、ごく普通にありふれたものですよね?
発がん性の可能性がある物質を、完全に排除するような生活は不可能と言っていいです。
発がん性を恐れていたら、太陽の下を歩けませんし何を食べて生きていけばいいのでしょうか?
グリホサートの不安を煽っている方は、どのような生活を送っているのでしょうか。
ぜひご教授いただきたいものです。

②世界中の研究機関で「グリホサートに発がん性はない」と発表し、IARCの見解を否定しています。

反グリホサートの表層

IARC以外の研究機関が、何らかの勢力に操られていると言うのでしょうか?
「おそらく発がん性がある」としている、IARCの基準や過程を疑う方が自然だと私は思います。

4.(一)アメリカではグリホサートが原因で何百億円という訴訟が起きている!

「アメリカでは、ラウンドアップ裁判で何百億円という訴訟が起きた!」
「発がん性はないとされているのに、なんで裁判には負けるんだ!」
という意見も多いです。
グリホサートの裁判でモンサントが敗訴、何百億円という損害賠償が起きているのは事実です。
しかし裁判の中身や変遷を見ると、アメリカ特有の訴訟ビジネスの側面が見え隠れしています。

  • 莫大な費用をかけて、テレビCMでラウンドアップ裁判の原告を募集したこと
  • アメリカの裁判は陪審員制であること
  • 裁判の争点はグリホサートの発がん性の有無ではなく、発がん性の警告の過失であったこと
  • バイエル側が勝訴している近年の裁判もあること

など、ただ裁判に勝った負けたの事実だけでなく、注目すべき点はたくさんあるのです。
この事実を、活動家はなぜか取り上げません……

5.(三)グリホサートは世界中で禁止されている!

「欧米をはじめ、グリホサートは世界中で禁止されている!」
「なのに日本だけは、ホームセンターに溢れるほど並んでいる! 危険だ!」
クリーンアップにふさわしい?そのくらい多いデマがこれです。
しかし実際は禁止されている国はほとんどありません。
ちゃんとしたデータを調べればすぐに嘘だと分かるので、ぜひご自身で多角的にググってみてください。

6.(中)グリホサートの危険性を示す論文がある!

「実験用マウスがガンになった!」
「グリホサートの危険性を示す科学的な証拠だ!」
そういう論文があるのは事実ですが、実験内容まで見れば多くの研究者が疑問を呈しています。

  • ガンのできやすいラットの種類を使っていたり
  • 間違いも多く、取り下げられている論文もあったり
  • まるで自身の映画のPRだと言われても仕方のないようなタイミングであったり

ツッコみどころ満載なのです。
そして、グリホサートとガンの明確な因果関係を示す論文は現在でもありません。
信頼性が低かったり、専門家や一次データを読める人にはすぐにおかしいと気づく論文もあるということです。

7.(左)作物にグリホサートをかけている!

「日本の作物はグリホサートまみれだ!」
「農家はグリホサートを作物にかけている!」

なんていうツイートもありました。
いやいや、作物にグリホサート入りの除草剤をかけたら枯れちゃいますよ!
小学生でも分かる話です。
たしかにアメリカでは、プレハーベストといって収穫前の小麦にグリホサートを使用することはありますが、それは国の安全基準で認められていることです。
もし日本でグリホサートが意図的にかけられた野菜が売られているのなら、興味があるのでぜひ教えてください!

8.(捕)食パンを食べるとガンになる!

「アメリカ産の小麦には、グリホサートの成分が残留している!」
「食パンを食べ続けるとガンになる!」

こういう極端な主張は、量の概念を無視しています。
農薬全般に言えることですが、安全性は一日摂取許容量(ADI)なしでは語れません。
グリホサートのADIは、体重1㎏当たり1mgです。
体重50㎏の方であれば50mgということになります。
SNS等で取り上げられている食パンのグリホサートの残留値(0.05~0.18mg)と照らし合わせても、体重50㎏の大人であれば約277kgを毎日食べ続けなければ、健康に影響が出ないとされる数字です!
とても食べられる量ではないですし、もし食べられる方がいたとしても、農薬ではなく摂取カロリーとか他の要因の方がリスクが高そうですよね。
小麦のふすま入りのパンでも同じことです。水や塩を摂りすぎると危険なのと、全く一緒の考え方!
量の概念を飛ばして危険性を語る方には注意してください!

9.(投)髪の毛からグリホサートが検出された!

「採取した髪の毛から、農薬の成分が検出された! 農薬まみれの食に溢れている!」

と批判していた議員たちがいました。
これは間違いです。
過去の覚せい剤使用を調べる際は髪の毛を調べるほど、髪の毛は化学物質が尿や唾液より比較的長期に残るとされている部分で、体内に入った化学物質の一部は髪の毛に入って排出されます。廃棄物の貯蔵庫とも言える髪の毛から微量の化学物質が検出されても、人体の構造的に少しもおかしくはないのです。髪から検出されたグリホサートの量は0.01〜0.14ppmと記事にはあり、この量はADIよりはるかに少なく全く問題にならない量とされています。
体内に入ったグリホサートのほとんどは尿や汗、唾液と一緒に排出される、と考えられますよね。
グリホサートをよく政争の具にしている政党や議員がいますが、もう少し科学的な視点から発言していただきたいものです。

まとめ

農薬についての記事を書いていると、
「科学者でもないくせに、なんで農薬の安全性を語れるんだ!」
という批判をいただくこともあります。
たしかに私はただの農家であり、グリホサートは100%安全だと言える立場ではないし、そう思ってはいません。
グリホサートに関して個人の好き嫌いは当然あっていいと思いますが、あまりにもミスリードしまくっている活動家の方が多いので、この記事で科学的事実でないことをまとめているということです。
やはり多角的に情報を見ることが、大切ですね。
グリホサートに関するより詳しい内容は、このアグリファクトのサイトに詳しい記事がたくさんありますので、ぜひ見てください!

 

【落ちこぼれナス農家の、不器用な日常】記事一覧

筆者

ナス男(ハイパーナスクリエイター「いわゆるナス農家」)

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