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【誤り】検証内容「きちんと欧州という大陸が政策を決定するうえで根拠となりうると判断した論文に基づいた情報」レムケなつこ氏(オーガニック専門家)

食と農のウワサ

「きちんと欧州という大陸が政策を決定するうえで根拠となりうると判断した論文に基づいた情報」レムケなつこ氏(オーガニック専門家)

【AGRI FACTによるファクトチェック結果】

事実関係に誤り

【その理由は?】

報の出典元に「DISCLAIMER(免責事項)」として明記されている通り、この報告書の内容は著者の責任による見解であり、いかなるEU議会の公的な見解を示すものではないこと。 報告書の結論が「オーガニック食品が慣行農業食品と比べて健康によいとする研究論文はほとんどない」としているから。

AGRI FACTのファクトチェック【対象と選択基準】
AGRI FACTのファクトチェック【評価基準と判定】


以上の要旨はAGRI FACT事務局が作成したものです。
詳細は以下でご確認ください。

農と食にまつわる噂・ニュース・風評の「ウソ?本当?」を検証するサイトAGRI FACT(アグリファクト)は2020年12月31日、「きちんと欧州という大陸が政策を決定するうえで根拠となりうると判断した論文に基づいた情報」レムケなつこ氏(オーガニック専門家)との発言についてファクトチェックを行い、「事実関係に誤り」とする調査結果を発表した。

ファクトチェックした発言内容

「きちんと欧州という大陸が政策を決定するうえで根拠となりうると判断した論文に基づいた情報」 

発言内容の原文(検証対象は太字部分)と出典

情報の出典なんですけど、2016年12月に欧州連合が発表した「有機食品と有機農業の人の健康への影響」と呼ばれる公的ペーパーが元になっています。欧米の研究者が400近い論文を集めて包括的にレビューしたもので、ここからEU政策への提言などが行われています。つまり私が勝手にですね、好きなようにランダムに論文を選んで持ってきて、お話をしているわけではないよということ。きちんと欧州という大陸が政策を決定するうえで根拠となりうると判断した論文に基づいた情報をみなさんにお伝えしようとしているということをここで強調しておきます。

出典:レムケなつこ氏(オーガニック専門家)のYouTube投稿「農薬が『子どもの脳』に及ぼす影響とは!? 今すぐ知るべきオーガニック食品の真価」(2020年12月20日公開)内の発言

ファクトチェックの検証結果

ドイツ在住のオーガニック専門家でドイツオーガニックビジネス研究所(IOB)代表のレムケなつこ氏は、エビデンスのあるオーガニック情報の発信を強調している。「オーガニック先進国欧州の学術論文や研究・リサーチを元に、日本では得られないエビデンスのあるオーガニック情報が学べます」(IOBのWebサイトより)とも謳う。

そのレムケなつこ氏が2020年12月20日にYouTubeに投稿した動画「農薬が『子どもの脳』に及ぼす影響とは!? 今すぐ知るべきオーガニック食品の真価」の出典としているのが、2016年12月に欧州議会リサーチサービスのユニットチームが発表した報告書(study)「有機食品と有機農業の人の健康への影響」(Human health implications of organic food and organic agriculture)である。彼女は同報告書という「エビデンス」に基づき、「農薬は子どもの脳に影響をもたらす可能性があるから、子どもはなるべくオーガニック食を摂るべき」と動画で結論を述べている。

結論を先に述べたうえで「つまり私が勝手にですね、好きなようにランダムに論文を選んで持ってきて、お話をしているわけではないよということ。きちんと欧州という大陸が政策を決定するうえで根拠となりうると判断した論文に基づいた情報をみなさんにお伝えしようとしている」という発言につながる。

レムケなつこ氏の言説をファクトチェックするため、報告書「Human health implications of organic food and organic agriculture」の原文を確認した。すると報告書の2ページ目に「DISCLAIMER」(免責事項)とあり、「この報告書の内容は著者の責任による見解であり、いかなるEU議会の公的な見解を示すものではない (The content of this document is the sole responsibility of the author and any opinions expressed therein do not necessarily represent the official position of the European Parliament.)」と明記されている。

欧州連合(EU)の立法府であるEU議会は報告書の内容にいかなる責任も負っていないので、レムケなつこ氏の「きちんと欧州という大陸が政策を決定するうえで根拠となりうると判断した論文に基づいた情報」との発言は、検証対象の情報・言説(仮説)に関して、著しく妥当性・信頼性を欠いていることから、「事実関係に誤り」(定義:【評価基準と判定】)と判断される。

また、レムケなつこ氏は同じ動画内において、化学農薬と化学農薬を使用する慣行農業食品の人体への悪影響を指摘する半面、オーガニック食品の安全性を報告書の「エビデンス」に基づいて強調している。しかし、報告書17ページ目の結論(Conclusions)は、「(400近い論文を集めて包括的にレビューしたが)全体的に、オーガニック食品が慣行農業食品と比べて健康によい(有意差がある)とする研究論文はほとんどない。(Overall, there is a scarcity of studies investigating the potential beneficial effects of organic compared to conventional food consumption on health through a direct estimation of the consumption of organic food.)」である。

つまり彼女が動画内で言及する「エビデンス」とは、報告書の結論に反するごく一部の論文で示された定説ではない「エビデンス」であるといえる。たとえば、メキシコで行われた発達障害に関する学術論文の結果として、胎児・乳児期のときに農薬に曝露した4、5歳の子どもが描いた絵の比較を紹介している。「人の絵を描いてください」とテストしたところ、農薬に曝露した子どもの絵は、農薬に曝露していない子どもの絵と比べて、人の形をしていないほど稚拙に見えるというもの。レムケなつこ氏は動画で「ショッキングですね」と視聴者の不安を煽っている。

この「エビデンス」とされる1998年の論文 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1533004/?page=1は、そもそも疫学調査ではなく、文化人類学のアプローチで行われている。メキシコの部族が調査主体で、調査数はわずかに数十名規模、見た目のインパクトで「ショッキング」と評される絵に関しても同年代の子ども1名ずつ(谷1名、麓1名)の比較にすぎない。

絵の技術に大きな影響を及ぼすのは絵画教育の程度である。しかも、絵の評価は多様であり、評価者の主観が大きく影響する。これらの農薬以外の影響を排除し、統計的に意味がある客観的な「農薬の影響」を検出するためには、少なくとも数百人単位の子どもの絵を、統計学的に認められた方法に従って比較する必要がある。したがって、レムケなつこ氏が「エビデンス」とするメキシコの論文は、農薬の曝露(残留農薬)と発達障害を結びつける科学的および統計学的根拠にはなりえない。

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