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Vol.11 IARCの活動資金を断つ グリホサート問題の打開策【日本・世界の「反グリホサート運動」の真相】
AGRI FACT執筆者でもある農業ジャーナリストの浅川芳裕氏が「日本・世界の反グリホサート運動の真相」と題し、オンライン講演を行った(2021年6月20日「食のリスクコミュニケーション・フォーラム2021」第2回)。その中で、浅川氏はグリホサート問題の中心地IARC(国際がん研究機関)の内部と背後で蠢く人たちの腐敗ビジネスに鋭く言及し、食の不安を煽って農業や社会を歪める構造の正体を浮き彫りにした。今回は、Vol.11『IARCの活動資金を断つ グリホサート問題の打開策』をお届けする。(Vol.10はこちら)
日米英が連携して拠出金をストップ
グリホサート問題をどう打開していくかですが、私はここまでくると性善説に基づくリスクコミュニケーションにはもう限界があると思います。不安ビジネス側の戦略、戦術がしっかりしてますから、私が打開策を講じるとすれば、ターゲットはIARCです。今、農薬規制におけるガバナンスの安定性が不安定化しているわけです。本当に規制機関を信じていいのだろうかと。本来はここでリスクコミュニケーションの出番なのでしょうが、問題を深刻化させているのはIARCのモノグラフに基づく訴訟による敵対的規制で、今はこれに対する抑止力がないことが大問題なのです。
抑止力がない状態で先述した不安ビジネス複合体が活動すれば永遠に続いていきます。そこできちんとしたガバナンスを得るためにはどうすればよいのか。戦術論としてはIARCを廃止する運動が一番早くて効果的だと思います。
手段としては日本からのIARCへの拠出金をストップするのが一番です。予算も少ない組織で、しかも日本がこの組織の最大の資金拠出国だからです。国民の税金で運営されてるIARCのポワティエ氏らを国会喚問して不透明な組織を追及する。
日本だけではできないなら米国、イギリスと連携する。すでにIARCに対する不信感は米国保守系の共和党議員にも広がっています。「非科学的な見解により、米国の農業者、ひいては消費者に損害を与えるなら、米政府からの拠出金を大幅削減する」という議論がまきおこっています。米上院の科学委員会(共和党議員)はさらに踏み込んで、IARCの人間を参考人として政府の委員会に召喚しました。しかし、IARCは「この委員会には政治的偏向性がある」という言い訳をして召喚に応じませんでした。
こうした言い訳を許さないためには、日本、アメリカ、イギリスなど拠出金のトップ5カ国などが連携し、「もう全部の予算を引くぞ」と圧力をかける。政治を動かせるのは、今風評被害に直面している各国の農業者です。地元選出の議員などに対して影響力を行使し、国際機関として国益、世界の食益のために活動しろという形で廃止運動にもっていく。
実際、ラウンドアップなどの除草剤が使えなくなった場合の経済損失は、米食品農業政策センター調査によると「米国の穀物農家の収入損失は年間210億ドル(約2兆3000億円)」で、アメリカ雑草科学学会の調査では「北米のトウモロコシ及び大豆生産に限っても経済的損失は430億ドル(約4兆7000億円)」になるという推計を発表しています。