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活動家が描く「農業消滅」の世界:14杯目【渕上桂樹の“農家BAR Naya”カウンタートーク】

コラム・マンガ

『農業消滅』という書籍を発行した東京大学教授・鈴木宣弘先生のオンライン講演会が開かれるというので、トンデモハンターとして潜入した渕上さん。冒頭から驚きの内容に気分は高揚。質疑応答では種苗法について質問するも、種子法に話題が移ったりで訳が分からないまま時間切れ。そこに見たのは活動家・鈴木先生の姿でした。

『農業消滅』発行

『農業消滅』というショッキングなタイトルの本が登場しました。

帯には「農業従事者を苦しめる政策が続くと、日本は必ず、飢餓に陥る」という、恐ろしいフレーズも書かれています。

農業が消滅してしまったら誰もが困りますよね?

この本にはどんなことが書かれているのでしょうか?

警告のようなものが書かれているのでしょうか?

著者・鈴木宣弘東京大学教授のオンライン講演会に参加

そんなことを思っていたら、著者である東京大学教授の鈴木宣弘先生によるオンライン講演会が開かれるというので参加してきました。

冒頭、鈴木先生は早速タイトルについて話してくれました。

「『農業消滅』というタイトルは私の意向ではないんですよ。インパクトを重視したい出版社が決めたんです。私自身はむしろ逆で、農業が消滅するとは思っていないし、消滅させたくありません」だそうです。

え? 出版業界のことよく知りませんが、一生懸命書いた本のタイトルなのにそんなことあるんですか⁉

誤りと検証された、
アメリカ産輸入小麦の話題を持ち出す

初めに話題に上ったテーマは輸入食材の安全性について。

「輸入小麦で製造したパンから除草剤の成分グリホサートが検出された」というおなじみの話題からスタートしました。

実際の商品名を並べて、この製品からは○○ppm検出!というもの。

検査をした機関は厚生労働省に登録されておらず、活動家グループ「デトックス・プロジェクト・ジャパン」の一員でした。

おや、一気にトンデモの匂いがしてきましたよ。

ちなみに鈴木先生、“検出された数値がどのくらいのものなのか”というところまでは話さなかったので、自分でググってみました。

すると、一番高い数値のパンでも、厚生労働省が定める基準値の100分の1以下とかそのレベル。

毎日パンを何百キロとか食べなければ気にしなくていい量です。

せっかく数字まで出したならここまで話してもらえると手間が省けるんですけどね。

さらに鈴木先生は「アメリカは自国民が食べない危険な小麦を日本に輸出している」「腸内細菌を殺して脳に影響が」という主張を展開。

あれ? これには私、見覚えがありますよ。

鈴木先生が以前書いた記事で読んだ覚えがあります。

しかも、その内容は農業ジャーナリストの浅川芳裕さんに検証され、誤りであることが判明しています。

鈴木先生本人もそれを認めて、「私じゃなくて編集部が書いた」と言っていたはずですよ。

まさかそのネタを使い回すとはなかなかやりますな(……それにしても鈴木先生、編集部が勝手に書いたり、出版社が勝手に決めたりが多すぎないですか?)。

学者の講演会なのか
活動家の集会なのかわからない展開

講演は次第に勢いを増し、「アメリカの言いなりで危険な食品を押し付けられている」「今の政府は命を犠牲にしている」「農薬メーカーが日本人を病気にして、薬を売って儲けようとしている」「農薬の真実を知ったジャーナリストが潰されている」など、特に証拠も示さず色々な方面を次々と犯罪者扱いする始末。

こういう事言っていい時代だったっけ?とヒヤヒヤして眺めていたら、徐々に「オスプレイを導入する場合ではない」「防衛費を下げて農業に回そう」「早急に行動を起こそう」という政治的な呼びかけが入ってきました。

コメント欄には「今の政府は許せん!」「次の選挙で政権交代!」のような声が次々と書き込まれ、もはや学者の講演会なのか活動家の集会なのかわからなくなってきました。

種苗法を質問したのに種子法が飛び出すありさま
続きは私のラジオでお聞かせ願えませんか?

最後の質疑応答では私も質問してみました。

質問したのは講演で少し触れられた種苗法ネタ。

渕上「種苗法改正で農家はタネを買わなければならなくなり経営が成り立たなくなる、と言っていましたが、それは何を作っている農家ですか?」

鈴木「それはコメ農家です」

渕上「え? コメ? コメ農家は法改正前も普通にタネを買っていましたよね? 今までと変わりませんよね? なんで困るんですか?」

鈴木「それは種子法が廃止されたからです」

渕上「え? 種子法? 全然ちがう法律ですよね? それじゃあ、種子法に関係ない(コメ・麦・大豆以外の)農家は種苗法改正の影響を受けないんですか?」「そもそも種子法に自由な自家採種を促す機能なんてありましたっけ? むしろ逆じゃないですか?」

鈴木「種子法があったおかげで農家はタネを安く買えていたのです」

渕上「ええ? 種苗法と種子法、ごちゃまぜになってませんか?」

こんな具合に、ひとつ答えるたびに何個も疑問が湧き出てくるので、一つ一つ突っ込んでいるうちに時間切れになってしまいました。

続きはぜひ私のラジオ番組「Naya・Radio」にご出演いただいて詳しく聞きたいものです。

今回の講演では、鈴木先生の学者としてではなく活動家としての側面を多く見ることができました。

鈴木先生は「今だけ、金だけ、自分だけ」という厳しい言葉で政府や企業の仕事を糾弾します。

ですが、情報を恣意的に捻じ曲げ、学問や農業を政治活動のネタとして消費するなら、その言葉が自分に向けられると覚悟した方がいいでしょう。

筆者

渕上桂樹(ふちかみけいじゅ)(農家BAR NaYa/ナヤラジオ)

 

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