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セラリーニ教授、セネフ博士が流すフェイクニュース – グリホサートの真実とは2【完全版】(vol.5)

食と農のウワサ

生産現場のリアルな声を発信する日本有数の農業チャンネル「トゥリーアンドノーフ」を運営する徳本修一氏が、グリホサート問題の歴史的経緯から背後で蠢くビジネス人脈、科学的評価や対立の解決法まで、食の安全安心の権威・唐木英明氏に聞きまくった1時間。グリホサートの真実とは2【完全版】をAGRI FACT用に再構成してここにお届けする!(vol.5)

セラリーニ教授、セネフ博士が流すフェイクニュース

徳本 これも僕らのYouTubeのコメントに多いのですが、ラウンドアップの安全性を動画にすると、ネットの記事とかのURLを貼り付けて「これを読め!」という形の反論があります。貼り付けた記事にいくと、「論文によると~」とあるのですが、科学者の論文はすべて正しいのでしょうか。

唐木 それは大事なポイントです。ラウンドアップの発がん性を指摘した一番有名な論文は、フランス・カーン大学のセラリーニ教授が2012年に発表した論文で、ラウンドアップの有効成分グリホサートがラットの乳がんを引き起こすという内容でした。ラットにできた大きな悪性腫瘍(がん)の画像とともにショッキングな発表をして世界を驚かせました。セラリーニ教授がラットに遺伝子組み換えトウモロコシとグリホサートを与え続けると、「こんな大きな乳がんが数多く発生した」という論文を発表したところ、世界中のメディアが飛びついて一斉に報道しました。そのせいで、遺伝子組み換え作物(GMO)には発がん性がある、ラウンドアップには発がん性があるという噂ができてしまったわけです。

ところがこの論文は大間違いだったことが証明され、撤回されました。しかし撤回された論文をセラリーニ教授はすぐに別の科学雑誌に載せたので、今でも読むことができます。何が間違っていたのか。まずラットを各群10匹ずつ実験に使いました。最初の無処置群は遺伝子組み換えでない普通のエサを食べさせ、グリホサートを混ぜない普通の水を飲ませたラットを2年間飼い、無処置群のラットですからがんはできないと思っていたら、10匹中5匹に乳がんができた。我々専門家からすると、こんながんのできやすい種類のラットを使うのはおかしい、発がん性の実験なんかできないと常識で考えるわけです。これがまず第一点。

それから一番わかりやすい間違いは、0.000000011%のグリホサートを含む水を10匹のラットに飲ませたら9匹に乳がんができた。しかもがんが20個できたと論文に書いています。エサにはGMO濃度の高いものを食べさせたら8匹のラットに15のがんができ、GMO濃度の低いエサ+グリホサート含有水だと6匹のラットに10のがんができたなどと書いています。発がん匹数・発がん数を見ても統計学的には有意差があるとは考えられないし、グリホサート含有水はこれだけ濃度が低いと普通の水と同じですが、9匹にがんができていて、デタラメなデータだとわかります。こうした点を批判されてセラリーニ教授の論文は撤回されました。

ではなぜ彼がこんな論文を書いたのか。論文発表後の経緯を見ると動機がわかるのです。セラリーニ教授が論文を発表したのが2012年9月19日で、彼は世界中の記者を呼んで会見して論文を大々的に発表しました。そして世界のメディアに取り上げられました。その一週間後、この論文を題材にしたドキュメンタリー映画『世界が食べられなくなる日』が上映されたのです。ということは論文発表の前から映画を制作していて、論文発表の記者会見とメディアの報道を映画の宣伝材料にする目論見だったということです。

論文を後日撤回(2013年11月28日)しても、もうラウンドアップの危険性を伝えるニュースは世界にばら撒かれたあとなので、セラリーニ教授側としては痛くも痒くもない。『世界が食べられなくなる日』や『不自然な食べ物』などの映画が彼の論文を取り上げ、その内容が正しいかのごとく伝えました。セラリーニ教授は遺伝子組み換えとラウンドアップ反対のためにインチキ論文を作り、これを利用して商業映画を作り、ラウンドアップの悪評を広げていったのです。

こういう科学者はセラリーニ教授だけではありません。セラリーニ教授の共同研究者ロビン・メネージ氏も、ラウンドアップをターゲットにして、セラリーニの主張とは内容を変えて、ラウンドアップの有効成分グリホサートにはあまり危険性はない。しかしラウンドアップ製品に使用されているグリホサート以外の界面活性剤が危険だと言い出しています。

もう一人、ステファニー・セネフ博士というコンピュータ学者兼評論家がいます。彼女はコンピュータ学者なのでラウンドアップの動物実験は一切しませんが、いろんなデータを他所から持ってきては、彼女独自の間違った三段論法を駆使してラウンドアップ・グリホサートの危険性を指摘しています。彼女曰く「グリホサートが自閉症を起こす」「自己免疫疾患を引き起こす」、痛風や腎機能障害、最近では新型コロナで亡くなるのもラウンドアップのせい、グリホサートのせいだと主張しています。さすがにここまでくるとメディアも相手にしないのですが、環境団体、反GM・反グリホサートの人たちには都合のよい存在なので、彼女の本は売れていますし、彼女の言説も広まっています。富や名声のためにフェイクニュースを垂れ流す科学者・研究者がいることも事実なのです。

グリホサートの真実とは<2> -「食の安全」の世界的権威に聞いてみた!〜完全版

 

【グリホサートの真実とは2】記事一覧

プロフィール

唐木英明(公益財団法人食の安全・安心財団理事長 東京大学名誉教授)
徳本修一(トゥリーアンドノーフ株式会社代表取締役)

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