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【誤り】グリホサートが蝶の激減に影響している 印鑰智哉氏(民間稲作研究所・種子の会とちぎアドバイザー)

食と農のウワサ

「グリホサートが蝶の激減に影響している」
印鑰智哉氏(民間稲作研究所・種子の会とちぎアドバイザー)

AGRI FACTによるファクトチェック結果

事実関係に誤り

その理由は?

近年の研究でグリホサート単独原因説が否定されているから。

AGRI FACTのファクトチェック【対象と選択基準】
AGRI FACTのファクトチェック【評価基準と判定】


以上の要旨はAGRI FACT事務局が作成したものです。詳細は以下でご確認ください。

農と食に関する事実をフェアな立場で提供するサイトAGRI FACT(アグリファクト)は2021年6月1日、「グリホサートが蝶の激減に影響している」印鑰智哉氏(民間稲作研究所・種子の会とちぎアドバイザー)との投稿についてファクトチェックを行い、「事実関係に誤り」とする調査結果を発表した。

ファクトチェックした投稿内容

「グリホサートが蝶の激減に影響を与えている」

投稿内容の原文(検証対象は太字部分)と出典

グリホサートが与える広範な影響も明らかになってきている。米国の裁判ではグリホサートがガンの原因となったことが争点になっているが、人の健康に悪影響を与えるだけでなく、ハチや蝶の激減(1)、さらには土壌の中の微生物にも悪影響を与え(2)、そして害虫や病原菌への植物の防御機能にも悪影響を与えることが指摘されるようになった(3)。
出典:印鑰智哉氏(民間稲作研究所・種子の会とちぎアドバイザー)のFacebook投稿(2021年4月22日 午前10時32分)

ファクトチェックの検証結果

民間稲作研究所・種子の会とちぎアドバイザーの印鑰智哉氏は、グリホサートが与える広範な影響の一つとして「蝶の激減」を挙げている。この蝶が具体的に何を指すのかについて、註(1)を見ると、「ラウンドアップ(グリホサート)は除草剤であって、殺虫剤ではないのだけれども、オオカバマダラが激減した主要因はグリホサートにあると考えられる。そしてハチの生存にも影響があるという研究 New Study: Undisclosed Inert Ingredients in Some Popular Roundup Products Found to Be Highly Toxic to Bumblebees https://www.centerforfoodsafety.org/…/new-study… と書いていることから、「オオカバマダラ」であることがわかる。

このオオカバマダラは比較的大型の蝶で、長距離の渡りをすることで有名だ。北米のオオカバマダラは5000kmに及ぶ長距離を移動し、大集団でメキシコなどの森で越冬する。北米では大変にポピュラーな蝶であり、Monarch(皇帝)あるいはTigerの俗称で親しまれている

2000年代初頭、除草剤ラウンドアップ(有効成分名グリホサート)とそれに耐性を示す遺伝子組み換え作物のラウンドアップレディが開発され、2007年までに米国の大豆のほぼ100%とトウモロコシの50%以上がラウンドアップレディになった。グリホサートの使用により、畝間にはえるトウワタは根絶され、農家は多大なメリットを享受した。同時期に一部地域でオオカバマダラの減少がみられたため、オオカバマダラの激減は、グリホサートとラウンドアップレディ作物の使用による食草のトウワタ激減に起因するというグリホサート単独原因説が研究者や自然保護団体、反農薬、反GM活動家から主張された。それがメディアで拡散された結果、一般の人々の中に一定の説得力をもって浸透していった。

しかし、グリホサート単独原因説は個体群動態の説明として単純すぎる。実際、ニューヨーク州において農地は、牧草地、放牧地、その他の生態系に囲まれているのでトウワタは絶滅しない、また北部のオオカバマダラの生息数がこの21年間で減った証拠はないという論文などが次々掲載された。そのほかにも、メキシコの越冬個体がどこで餌を取ったのかについて調べた論文や、森林密度と個体数の相関関係、オオカバマダラに寄生する原虫Ohpryocystis elektroscriira)のレベルについての論文など、グリホサート単独ではない「複合的な要因」の追究が始まっている

つまり、研究が進んだ近年では、オオカバマダラ激減の原因はグリホサート使用によるトウワタの減少が唯一の原因という説は否定され、気候変動、寄生虫、森林面積の減少など複数の原因がかかわっているという説が主流である。グリホサートに歪曲化すべきではない。オオカバマダラ激減問題の詳細については「旅する蝶オオカバマダラ激減の原因はグリホサートだけではない【解説】」を参照されたい。

したがって、近年の研究成果・最新の知見を無視した「グリホサートが蝶の激減に影響を与えている」という印鑰氏の投稿は、「事実関係に誤り」評価基準と判定)と判断される。

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