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第2回 評価プロセスを検証できないIARCは裸の王様だ【IARCに食の安全を委ねてはいけない】

IARCに食の安全を委ねてはいけない

がん対策の国際的なガイドラインを策定する世界保健機関(WHO)には早急に改めるべき問題がある。それはWHOの下部組織IARC(国際がん研究機関)のグリホサートに対する「グループ2A(おそらく発がん性がある)」というハザード評価である。

世界の研究・規制機関の結論は発がん性なし

全米科学健康評議会のACSHは2017年から科学的知見と根拠にもとづき、グリホサートに関するIARC評価の撤回または修正を求める記事を数多く発表している。

世界で最も売れている除草剤ラウンドアップの有効成分グリホサートに「発がん性はない」と結論づけた代表的な研究・規制機関は以下の通り。Efsa(欧州食品安全機関)、FAO(世界食料機関)、ECHA(欧州化学機関)、EPA(米国環境保護庁)、NIH(アメリカ国立衛生研究所)、カナダ保健省、APVMA(豪州農薬・動物用医薬品局等)、そして日本の食品安全委員会などだ。カナダ保健省はリスク評価の審査プロセスを次のように説明する。

「私たちの科学者は、グリホサートのリスク評価を行うにあたり、あらゆる手を尽くしました。彼らは、連邦政府や州政府、国際的な規制機関、発表された科学的報告書、複数の農薬メーカーから、すべての関連データや情報にアクセスすることができました。情報の公平な評価を確実にするために、カナダ保健省は2017年の再評価に関与していない20人の独自の科学者のグループを選び、異議告知書を評価しました」

EPAもグリホサートの発がん性の可能性を継続的に評価した科学諮問委員会の1201ページにわたる議事録を全文公開している。欧州の評価プロセスも日本の食品安全委員会と同じで、膨大な評価のプロセスを誰もがネットで辿ることが可能だ。審査プロセスを何も発表できないのはIARCだけなのだ。そうしたなか2015年に、IARCだけがグリホサートを「ヒトに対しておそらく発がん性がある」とグループ2Aに分類したのである。

なぜIARCの結論だけが異なるのか

フランスのリヨンに本拠を置くIARCは、1965年に設立されたWHOの半独立型の外部組織である。70年代からIARCは1000以上の化学物質について評価を行い、「IARC Monographs on the Identification of the Carcinogenic Risk to Humans」シリーズに収録している。IARCモノグラフ(専門書)プログラムの目的は、ある化学物質が「がん」を引き起こす可能性を判断するために、入手可能な科学的証拠を評価することだ。IARC分類の根拠に関する複数の疑問を提示したい。

1. ヒトにおけるエビデンス

IARCは、グリホサートへのヒトの曝露に関する最も包括的で信頼性の高い疫学研究である、NCIの科学者が主導した農業健康調査(Agricultural Health Study)の結果を除外した。この研究は、アイオワ州とノースカロライナ州の54,000人の農薬散布者(農業従事者)を調査したものである。その理由を、2015年にIARCのワーキンググループが開催されたとき、その結果がまだ公表されていなかったためとしているが、2018年にようやく結果が発表されると、非ホジキンリンパ腫を含む20種類の腫瘍に有意な増加は見られない(=発がん性なし)と論文で報告された。

参照



・しかし、少なくとも一人のグループメンバーは、未発表の結果を目にし、グリホサートとがんとの関連を示す証拠がないことを知っていたが、会議ではこの情報を明らかにしないことを選択した。

・非ホジキンリンパ腫のデータを含むドラフトペーパーが作成されていたにもかかわらず、なぜIARC会議前に公表されなかったのか疑問がある。

2. 動物実験から得られた結果の恣意性

IARCは、グリホサートの発がん性の評価を主にいくつかのげっ歯類の研究に基づいて行った。同じ研究の中で、IARCの専門家は腫瘍発生率の増加を示さないという結果を無視し、いくつかの肯定的な結果を選択した。

3. 草稿の変更点

IARCのグリホサート評価の草稿(ドラフト)では、グリホサートが動物実験で腫瘍を引き起こすという否定的な結論が差し替えられたり削除されたりし、代わりに中立または肯定的な記述が追加された。

4. ハザードとリスクの比較

大多数の科学機関と異なり、IARCはハザードを測定する。すなわち、化学物質が摂取量や暴露量によりがんを引き起こす可能性を判断するリスクではなく、いかなる状況下でも化学物質ががんを引き起こす可能性があるかを検討する

参照




擁護する科学者はIARC支援機関の資金に依存している

こうした世界の研究・規制機関および科学ジャーナリストなどのIARC批判に対して、一部の科学者たちは科学的な反論と対処ではなく、世論の感情に訴えかけた。

たとえばジャーナル『Environmental Health Perspectives』に掲載された2015年の手紙と解説では、124人の科学者が「声高な少数派」によるIARC批判は、長年公衆衛生に貢献してきたプロセスを否定しかねないと論じている。なぜこれほど多くの科学者がこの書簡に署名したのか、その理由は容易に理解できる。

IARCモノグラフプログラムの資金の3分の2は、米国国立がん研究所(NCI)および米国国立環境保健科学研究所(NIEHS)からの助成金で、年間約100万ドルとなっている。

評価は「独立した国際的な専門家からなるワーキンググループ」によって行われるとされているが、実際のところ、米国の科学者の多くは、IARCを支援するNCIやNIEHSといった米国機関からの助成金や契約に依存している。IARCに反対する発言をすることは無謀であり、科学界における自分たちの地位、ひいては生活を脅かしかねないからだ。

署名者の多くは、多くの化学物質とその影響に関する訴訟で原告の鑑定人を務め、またIARCモノグラフ作業部会の委員を務めたり、現在も委員を務めている人もいる。

IARCの基本原則のひとつに、作業部会に参加する専門科学者は利益相反のない独立した存在でなければならない、というのがある。このことはむしろ、産業界で働く科学者を作業部会から締め出す方便として利用されてきた。

米国は、IARCのハザード評価(モノグラフプログラム)の主要な資金提供者として、IARCが外部検証に耐えうる透明性のある審査と異議申し立てプロセスを開発するよう主張すべきである。さらに、米国はIARCの利益相反ポリシーが、裁判のコンサルタントとして働くような相反を含むように変更されることを保証する必要がある。そして冒頭でも述べたように、グリホサートに関するIARCの評価は撤回または修正されなければならない。

*この記事はSusan Goldhaber MPH 著 2021年6月14日公開の「The Emperor – IARC – Has No Clothes」をAGRI FACT編集部が翻訳編集した。

〜第3回へ続く〜

【長期特集 IARCに食の安全を委ねてはいけない】記事一覧

筆者

AGRIFACT編集部

 

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