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トンデモ要素のない本気のオーガニックマルシェ:65杯目【渕上桂樹のバーカウンター】

コラム・マンガ

つい先日、近所で開かれたオーガニックマルシェに行ってきました。以前のコラムで「オーガニックマルシェでは誤情報や不誠実な売り方が散見される」と書いたことがありましたが、今回行ったオーガニックマルシェでは以前より安心して見ていられるようになっていたので、そのときに感じたことを書こうと思います。

オーガニックマルシェあるある

オーガニックマルシェは私も出店したことがありますが、職業柄、どうしても気になるのが誤情報や不誠実な売り方、トンデモビジネスです。

たとえば、以前訪れたオーガニックマルシェでは「ゲノム編集のタネは使っていません」という出店がありました。(ゲノム編集作物なんてむしろどこで買えるんだよ!(笑)と思いつつ、「あのー、ゲノム編集作物って普通に売ってるんですか?」と尋ねると、(どうするよ? 誰が答えるよこれ)みたいな顔でお互いを見た後、「……今は売ってませんけど、将来はわかりません」という苦しい回答でした。

ほかには、「これって有機JAS(認証)取ってるんですか?」と聞くと、「えっと、有機JASですか? そもそも有機JASというのはですね……」と関係ない説明が始まり、有機JASがあるのかないのか教えてくれない人。そして、スーパーでは絶対売れないような低品質の野菜を「これはスーパーの野菜と違って無農薬ですから」と高い値段で売ろうとする人。さらには、有機農産物と関係ないのになぜか出店している謎のヒーリンググッズ屋さんや、「ガンが治る」など変な健康法の勧誘をする人、オーガニックを看板にしてマルチ商法のアロマを売る人など、普通にスーパーや商店街で買い物をするならなかなか出会えないトンデモ商法が一カ所に集まり、オーガニックマルシェでは瞬間的にトンデモの濃度が高くなっていることが少なくなかったのです。

真っ当な売り方に感激

ただ、それも変えることができるかもしれません。先日訪れたオーガニックマルシェでは、自分たちが売る野菜の価値を工夫を凝らして伝えようとするところが目立ち、昨年訪れたときのようにむやみに農薬の不安を煽ったり、あたかも市販の野菜が危険であるかのように誤認を狙うような売り方はほとんど見かけませんでした。まあ、それを喜ぶのも変な話かもしれませんが、以前が以前だっただけに嬉しく思ってしまうのです。

伝統野菜を美味しく食べるためのワークショップ、ほかで買えない珍しい品種の紹介、農場運営の面白エピソード紹介、おまけしてくれるフレンドリーなおばちゃん、どれも良い思い出になりました。私はやっぱり変な情報で他者を下げる売り方より、こっちの方が断然好きなのです。

本気の農家が多く参加すればトンデモ系は淘汰される

では、どうしてこんなに変わったかというと、それは本気の農家が多く参加していたからだと思います。農家はどこも本気なんじゃない? と思うかもしれませんが、農産物の出荷よりも思想の発信を優先している農家? 的なビジネスもたまにあって、マルシェなどに出没しているのです。そういうところの話を聞いていると、ゲノム編集作物がどうこうでタネが危ない! 農薬はこんなにも危険! など、本当に大切な農産物はそっちのけで変な話になってしまうのです。だから、普通に農産物を作って普通に出荷する農家は本気の農家で、彼らの普通の話こそ現場を反映する大切な話だと思うのです。

ですが、普通の農家はなかなかマルシェに来てくれません。それもそのはず、農家は生産で忙しいのでマルシェに出る時間を作るのはなかなか大変なのです。マルシェを主催する人から「出店する農家さんを集めてくれませんか?」と頼まれることがありますが、出店できる野菜があるときは農家は忙しいですし、暇なときは持っていける野菜がないことが多いのです。

しかも、大抵の農家は農産物の売り先が確保されているので、わざわざマルシェに出店するメリットが薄いのも事実です。マルシェでお客さんと直接話すことで刺激になったりヒントが得られるかもしれませんが、同時に慣れない業務の大変さもついてくるので出店に前向きになれない気持ちはよくわかります。ですが、農家の人からは「お客さんは現場のことわかってないなあ」という声もよく聞きます。いろいろ大変な面も多いかもしれませんが、マルシェは現場のことを率直に伝える良い機会になるはずです。そして、リアルな農家の出店が増えれば、トンデモ系の出店も自然と少なくなっていくでしょう。

何気ないことでも、キラキラしていないことでも、言葉巧みでなくても、正直に丁寧に話せばきっと伝わります。私たちの食や文化を支えているのは、一風変わった思想を発信する農家ではなく、普通の農家だと思います。出店を通じてリアルなコミュニケーションが増えることで、生産現場のリアルな情報が伝わることを期待したいと思います。

 

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筆者

渕上桂樹(ふちかみけいじゅ)(農家BAR NaYa/ナヤラジオ)

 

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