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残留基準値以下の食品が安全な理由
ある食品から「農薬が検出された!」「食品添加物は微量でも危険だ!」と声を上げる人がいますが、これはフェイク情報です。作物ごとに定められた残留基準値以下の農薬が検出されても安全性にはまったく影響しません。
農薬をはじめ化学物質には「大量なら有害、微量なら無害」という「用量作用関係」があります。私たちの社会はこの関係を利用して、ヒトの健康、環境に無害のレベルまで残留量を下げることにより食品の安全を守っているのです。
農薬の残留基準値を定めるにはいくつかのプロセスがあります。まず農薬の有効成分である化学物質について、実験動物を対象に確実に毒性(有害作用)が出るまで投与量を増やしていき、何の有害作用もない「無毒性量」を推定。これにヒトと実験動物の種差を10、ヒトの性差、年齢差などの個体差を10とする「安全係数」の0.01をかけて、「一日摂取許容量(ADI)」を求めます。例えば無毒性量が1㎎/kg(体重1kgあたり)の食品では、1/100の0.01㎎/kgが一日摂取許容量になります。
一日摂取許容量は「生涯にわたって毎日摂取し続けても健康への悪影響がない量」なので、体重60kgの人なら一日に0.6mgが毎日摂取し続けても安全な量なのです。
そして内閣府食品安全委員会が決めた一日摂取許容量は厚生労働省や農林水産省に通知されます。
厚生労働省は農薬の残留量が一日摂取許容量を超えないよう作物ごとに農薬の残留基準値を設定します。食品添加物についても同様に、その化学物質を食品添加物として使用する食品をすべて同時に食べても一日摂取許容量を超えることがないよう食品ごとに使用基準値を設定します。
作物ごとの農薬の残留基準値は一日摂取許容量の範囲内であり、すべての作物を同時に平均的な量食べても一日摂取許容量を超えないように設定されているのです。言い方を変えると、一日摂取許容量はコップであり、作物ごとの残留基準はコップに水を入れるスプーン。すべての作物のスプーンでコップに水を入れても、絶対にあふれ出ないようスプーンの水の量を決めているのです。一部の作物のスプーンの水の量を変更しても、コップの容量を超えない限り、健康への影響はありません。
参考
※『フェイクを見抜く「危険」情報の読み解き方』(ウェッジ、唐木英明・小島正美、2024年)を許可を得て一部転載(再編集)