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第12回 メディアが持ち上げる「石破前総理のコメ増産方針」は虚構の産物【浅川芳裕の農業note】
【NHK】コメ政策をめぐり、自民党の石破前総理大臣は日本のコメは海外にも需要があり農業政策を転換する必要があるとして、自身の政権で打ち出した増産にかじを切る方針は正しかったという認識を示しました。コメ政策
石破氏はコメ増産方針を自らの手柄のように語るが、事実に反する。
氏が25年8月に増産発言をする以前から、5年に一度改定される「食料・農業・農村基本計画」においてコメ増産政策は決定済みだった(別表1)。

https://www.maff.go.jp/j/keikaku/k_aratana/attach/pdf/index-61.pdf
この増産計画について、農水官僚に取材したところ、「輸出目標35万トンが前提で、その数値は石破政権前から策定してきたもので、石破前総理と関係ない」と明言する。
コメ増産の政策ベースは安倍→菅政権期に確定済み
コメ増産政策の起点は石破氏ではなく、安倍政権の2020年、関係閣僚会議で決定された「2030年に5兆円の農産物輸出を目指す」方針である。
続く菅政権時に「農産物の輸出拡大実行戦略」が取りまとめられ、コメの輸出数値目標が具体的に定められた。
農水官僚は「石破さんはその間、何も関与してない」と証言している。
現行の増産数値は岸田政権期に策定されたもの
安倍・菅路線は岸田政権に引き継がれ、今回の2030年コメ輸出目標の策定時期は岸田政権期である。
その数値が食料・農業・農村基本計画に盛り込まれた。
計画が閣議決定されたのは石破政権時だが、内容自体は「過去からの延長線上のもの。石破首相にレクしたが、本人から目標引き上げや増産の話は一切なかった」(農水官僚)という。
法律改正も岸田政権期にスタート
コメ増産の法律上のベースである「食料・農業・農村基本法」改正案が国会で審議入りしたのは2024年3月で、当時は岸田政権だった。
同法では、コメの国内消費が減る中、輸出を新たな軸に「食料供給の維持を図る」ための規定(第2条4)が盛り込まれた。
「国民に対する食料の安定的な供給に当たっては、農業生産の基盤、食品産業の事業基盤等の食料の供給能力が確保されていることが重要であることに鑑み、国内の人口の減少に伴う国内の食料の需要の減少が見込まれる中においては、国内への食料の供給に加え、海外への輸出を図ることで、農業及び食品産業の発展を通じた食料の供給能力の維持が図られなければならない。」(第2条4)
石破氏の25年8月発言は既定路線の踏襲にすぎない
基本計画を閣議決定した後の25年8月、米の安定供給等実現関係閣僚会議で、石破氏は
「増産に舵を切る。増産に向けた政策強化のため、増産の出口として輸出の抜本的拡大を図る」
と述べた。
しかしこれは、安倍・菅・岸田政権から続くコメ輸出拡大戦略と基本計画を踏襲したものにすぎず、石破氏独自の方針では全くない。
メディアが“虚構の功績”を後押しする構図
問題は、石破政権も高市政権も安倍・菅・岸田政権からの農業政策を引継いでいるにもかかわらず、メディアが「石破氏が増産方針を打ち出した」「高市政権がそれを撤回した」という誤った印象を助長する論調を取る点だ。
この論調で事実と異なる構図がつくられ、高市政権への粗探しのナラティブ形成に利用されている。
その結果として、メディアが石破氏の“虚構の功績”を後押しする形になっているのだ。
編集部註:この記事は、『浅川芳裕氏のnote』 2025年11月29日の記事を許可を得て、一部編集の上、転載させていただきました。オリジナルをお読みになりたい方は浅川芳裕氏のnoteをご覧ください。
筆者浅川芳裕(農業ジャーナリスト、農業技術通信社顧問) |



