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Vol.4 「弁護士vsバイエル」から「弁護士vs弁護士」の分捕り合戦へ【日本・世界の「反グリホサート運動」の真相】
AGRI FACT執筆者でもある農業ジャーナリストの浅川芳裕氏が「日本・世界の反グリホサート運動の真相」と題し、オンライン講演を行った(2021年6月20日「食のリスクコミュニケーション・フォーラム2021」第2回)。その中で、浅川氏はグリホサート問題の中心地IARC(国際がん研究機関)の内部と背後で蠢く人たちの腐敗ビジネスに鋭く言及し、食の不安を煽って農業や社会を歪める構造の正体を浮き彫りにした。今回は、Vol.4『「弁護士vsバイエル」から「弁護士vs弁護士」の分捕り合戦へ』をお届けする。(Vol.3はこちら)
「弁護士vsバイエル」から「弁護士vs弁護士」の分捕り合戦へ
その後のラウンドアップ裁判がどうなっているかというと、2020年にバイエルから和解金として最大109億ドル(1兆円超)が提示(※発がん性を認めたわけではない)され、被告の多くとは和解が成立しました。これまでは弁護士対バイエルの争いだったのですが、今は弁護士対弁護士の和解金分捕り合戦の段階に突入しています。
実は三つのラウンドアップ裁判に勝訴した結果、他の弁護士事務所も儲けたいというので、今この裁判に参加している弁護士事務所は500以上あります。そのうち主体的に訴訟弁護士をしたのは6弁護士事務所で、そこが和解金の分配を任されているのですが、そうすると後発組は割合が少なくなるのではないかと焦っているのです。先ほどビジネスモデルの説明をしましたが、多額のコストをかけているので分け前が少ないと利益が出ないからです。リッツェンバーグ氏は逮捕されていなくなりましたので、主体的にやってきたその他の弁護士と後発の500の弁護士事務所が分配をめぐって争っている。これも日本のメディアが一切報道しない情報です。
不法行為訴訟「広告ビジネス」としてのラウンドアップ裁判
米国ではラウンドアップ裁判のような不法行為訴訟はメジャーな訴訟ビジネスの一つで、関連のTV広告費の変動をみると、ラウンドアップ裁判の高額賠償を受けて2億ドル(200億円超)以上だった2019年には多数の弁護士が参入したことがわかります。それが12万5000人もの原告募集に成功した成果となって現れたわけです。しかし和解成立後の2020年にはTV広告費も激減しました。図の数字はTV広告だけなので、ネット広告やその他を含めればもっと多額になるはずです。
この悪影響は大量の原告募集の成功に加え、対象者以外の一般米国国民にもラウンドアップの「不安」を広げた宣伝効果です。
まさに弁護士の訴訟ビジネスと連動するのがこの不安ビジネスで、弁護士や訴訟マーケティング会社の広告が出ると、「ラウンドアップは危険だ」というイメージを普及させて儲けるビジネスが活発化して広告をどんどん出します。例えば、下の図のような反グリホサート広告です。
リスク管理の概念とはまったく異なる疑似科学を使って、乳幼児を抱える母親の不安を煽ったりします。下の図の広告は全米12州に99のビルボード、55の巨大な野外広告として展開されているもので、こうした広告のほとんどは反グリホサートの食と検査ビジネスに誘導されます。赤ちゃん、家族、ペットのグリホサートフリーの食品購入、体内残留農薬を計測する検査サービスに申し込ませることで不安を軽減させるビジネスモデルです。●●研究所といったもっともらしい名前を冠したりしていますが、もちろん科学的な研究所ではありません。そして反グリホサート・検査ビジネスもまたラウンドアップ裁判の判決・報道によって活性化していくわけです。
乳幼児を育てる母親をターゲットに全米12州に99のビルボード、55の巨大野外広告
Vol.5へ続く
- 食と農のウワサ, 日本・世界の「反グリホサート運動」の真相
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