TwitteアイコンFacebookアイコンユーザーボイス 取材リクエスト リクエスト回答 寄付のお願い AGRI FACTとは

Vol.6 米国農業界が反撃! 「もうひとつの」ラウンドアップ裁判【日本・世界の「反グリホサート運動」の真相】

食と農のウワサ

AGRI FACT執筆者でもある農業ジャーナリストの浅川芳裕氏が「日本・世界の反グリホサート運動の真相」と題し、オンライン講演を行った(2021年6月20日「食のリスクコミュニケーション・フォーラム2021」第2回)。その中で、浅川氏はグリホサート問題の中心地IARC(国際がん研究機関)の内部と背後で蠢く人たちの腐敗ビジネスに鋭く言及し、食の不安を煽って農業や社会を歪める構造の正体を浮き彫りにした。今回は、Vol.6『米国農業界が反撃! 「もうひとつの」ラウンドアップ裁判』をお届けする。(Vol.5はこちら


反グリホサートの不安ビジネスで活動家、政治家、消費者が結びつくと、反グリホサートに加えて、反バイテク(反農薬GM)系の活動家業界も活況を呈してきます。下図の左が反グリホサート、反農薬GMに寄付された額で大体1000億円のマーケットに拡大し、図右の寄付者数も順調に伸びています。まさに相乗効果です。

反農薬・GM寄付総額:約1000億円マーケット

反グリホサート、バイテク(農薬GM)活動家業界も活況、成長中

こうした活動家団体の資金源を調べた調査によると、ほとんどが相互に寄付し合っていて、情報を共有しながら資金も共有する。裁判や判決などにも逐一反応して、一斉にSNSで投稿するなど、いろんな団体の活動が一体化しているようです。さらに先述した日本の政治家にもみられる傾向ですが、不安を煽る活動に加担する政治家への政治献金もこの業界から提供されるという不安政治ビジネスの構造になってるということです。

米国農業界が反撃!
「もうひとつの」ラウンドアップ裁判

こうした不安ビジネス側の動きに対して米国農業界は黙ったままなのかということですが、そんなことはありません。

例えば米カリフォルニア州がIARCの発表を受けて、グリホサートを「発がん性のある有害化学物質リスト」に追加、その成分の農薬に「発がん性」表示義務を課したことに対して、全米小麦生産者協会をはじめ10以上の生産者団体が裁判を起こし、カリフォルニア州環境保健有害性評価局局長と州司法長官を訴えたケースがあります。共和党系の政治家たちも「憲法違反だ」と生産者団体を支援する声を上げました。

実はカリフォルニア州には「プロポジション65(1986年安全飲料水及び有害物質施行州法)」という悪名高い州法が存在します。簡単に言うとIARCが「発がん性がありそう」と言うと、それを危険リストに追加して発がん性表示義務を課すというものです。排気ガスがリストに追加されると、ロサンゼルスのディズニーランドに行けば、「排気ガスの出る場所すべてに「発がん性がありますという警告を表示しなくてはらなない」ルールなのです。スターバックスのコーヒーのカフェ酸も警告表示義務を課されそうになりましたが、提訴して勝訴し、表示義務の撤回に成功しました。

この裁判では、農業州11州の司法長官が農業者の主張を支持し、裁判所に意見陳述書を提出し、原告代表は「カリフォルニア州の違憲行為に対し、全米の州司法長官が農業者と消費者のために立ち上がったことを喜ばしく思う。カリフォルニア州の欠陥制度プロポジション65は農業経済に取り返しのつかない損害を引き起こし米国の生産者と消費者双方に悪影響を与える。」と語り、米上院・科学委員会(共和党議員)は「IARCから参考人聴衆。非科学的な見解により、米国の農業者に損害を与えるなら、米政府からの拠出金を大幅削減する」と警告しました。

2018年2月の判決は、表示義務の仮差し止めを求める原告側の主張を認め、「グリホサートが実際にはがんを引き起こすことが科学的に認められていないというエビデンスの重さを考慮すると、要求されている表示は事実上、不正確であり、誤解を招くものである」としました。この判決は日本でほとんど報道されませんでした。

2019年8月、アンドリュー・ウィーラーEPA長官はカリフォルニア州のグリホサートに対する規制を無効にする措置を発表。「カリフォルニア州のグリホサートに関する発がん性物質認定は誤り」「消費者に正確なリスク情報を提供し、製品の偽ラベル表示を停止するために行動を起こす」「EPAとして、グリホサートに発がんリスクがないことを知っているにも関わらず、(カリフォルニア州が)不正確なラベル表示を要求することは無責任である。我々はカリフォルニア州の欠陥制度が連邦政府の方針を左右するようなことは認められない」と理由を述べています。農業者の勝訴がついに規制当局を動かしたのです。

さらにラウンドアップ裁判そのものにも新たな動きがありました。子どもが発症したがんに関してバイエル社を提訴し、和解の枠組みから外れたカリフォルニア州の訴訟で、2021年9月に被告バイエル社勝訴の一審判決が下ったのです。

カリフォルニア州の陪審員は除草剤ラウンドアップが子どものまれながん(非ホジキンリンパ腫)の実質的な原因ではないことを認め、ラウンドアップががんを引き起こすと原告が主張する裁判に初めてバイエル社は勝訴しています。

バイエル社は声明の中で「この判決はラウンドアップの主成分であるグリホサートの安全性を示す数十年にわたる科学と研究と一致している」と述べています。

【出典】バイエル社、子供の癌に関する訴訟で初のラウンドアップの陪審員評決を獲得

Vol.7へ続く

【日本・世界の「反グリホサート運動」の真相】記事一覧

筆者

浅川芳裕(農業ジャーナリスト、農業技術通信社顧問)

編集担当

清水泰(有限会社ハッピー・ビジネス代表取締役 ライター)

関連記事

Facebook

ランキング(月間)

  1. 1

    第27回 オーガニック給食問題まとめ(前編)【分断をこえてゆけ 有機と慣行の向こう側】

  2. 2

    日本の農薬使用に関して言われていることの嘘 – 本当に日本の農産物が農薬まみれか徹底検証する

  3. 3

    世界がラウンドアップ禁止の流れになっているのは本当か – グリホサートの真実とは2【完全版】(vol.8)

  4. 4

    輸入小麦が危険は本当?「自国民は食べない」小麦を輸入する日本の末路(東京大学鈴木宣弘教授)を徹底検証

  5. 5

    Vol.8 彼女がマルチ食品を食べる理由~中編~ 【不思議食品・沼物語】

提携サイト

くらしとバイオプラザ21
食の安全と安心を科学する会
FSIN

TOP