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秋田県のお米だけを執拗に攻撃する変な団体:60杯目【渕上桂樹のバーカウンター】

コラム・マンガ

全国各地でお米が栽培されていますが、その中でもなぜか秋田県のお米、しかも新しい「あきたこまちR」だけを執拗に攻撃する変な団体があります。それは「OKシードプロジェクト」なる団体です。謎に満ちたこの団体、「食の危険が危ない!」というレベルの怪情報をばら撒きながら、以前は「学校給食をオーガニックに!」と活動していました。その前は「日本のタネが危ない!」という活動をしていた記憶があります。まあ基本的に「○○が危ない!」という活動を、テーマを変えながらやっている団体のようです。

「あきたこまちR」がターゲット

OKシードプロジェクトが今もっとも力を入れている運動が「あきたこまちRを食べたくありません!」という署名活動です。
「え? 危険だ! 食べるな! とは言わないの? なんか弱くない?」と思ったあなた、なかなか勘が鋭い方です。
あとでその辺りも説明します。

一番初めに「あきたこまちR」って何? と説明すると、秋田県内などでが広く作られてきたお米「あきたこまち」の今年から切り替わる新品種です。
栽培の際に重金属「カドミウム」の吸収を抑えられることで安全性と、生産性が向上したバージョンと言われています。

詳しい情報は秋田県の公式にとてもわかりやすく解説されてあるので、そちらを参考にしてください。

なぜ「あきたこまちR」が団体のターゲットにされているかというと、放射線育種された品種だからというのもあるのでしょうが、これは根拠としてはとても弱いんです。
なぜなら、食べるお米に直接放射線を当てているわけではないし、放射線育種なんてあきたこまちRよりずっと前から、それこそ60年近く前から使われている技術です。
しかも、あきたこまちRに限らず様々なお米やお米以外の作物にも使われています。
私の住む長崎で作られる「にこまる」もそうですし、果物で言えば「二十世紀梨」も同様です。

団体が本当に放射線育種を不安に思っているなら「60年前からやっている!」「あきたこまちRだけじゃない! それら全部を食べたくありません!」と言えばスケールも壮大で良いと思うのですが、それだとアホっぽくなるのでダメなんでしょう。
やっぱりここは、今年切り替わることになる「あきたこまちR」だけにターゲットを絞った方が真面目っぽく見えるってわけです。

でもね、ターゲットにされた秋田県の人たちはたまったもんじゃないですよ。
実際、その動きに賛同して正義感をたかぶらせたネット戦士たちが秋田県の米農家に怪文書を送ったり誹謗中傷したり、一部の情報によると暴力に訴えたり問題になっているのです。
秋田県にクレームを入れる人も出現して、職員さんにも迷惑をかけています。

危険だと勘違いさせるゲーム

ところで、冒頭で触れた「食べたくありません!」という署名の件ですが、なぜ「危険です!」でも「食べないで!」でもないのか?
団体に聞かないと本当の理由はわかりませんが、団体の記事に書いてあること(書いていないこと)を読めば輪郭が見えてきます。
これは、「あきたこまちR」の何が問題か? ―科学的解説― だそうです。
科学的解説か。
きっと安全性について書かれているんだろうなと思って見てみると……。

何が問題か? わかりましたか?
実はこの人たち、正確には「危険だ!」とは一言も言ってないんですよ。
「危険だ!」とは言わずに仄めかす大体のスタイル、この記事だけではないんです。

団体の情報発信はパターン化されていて

① なんか危険っぽい科学的っぽいキーワードを出す
(遺伝子が改変される!)(重イオンビームが使われている!)

② それが前から普通に使われていることを伏せる
(どんな品種改良でも遺伝子は変わる)(食べるものに当てていないし、全国各地でずっと前から使われている)

終始こんな感じです。
つまり、「危険と直接言わずにいかに危険だと勘違いさせるゲーム」をやっているのです。
まるで普通の水をDHMOと言い換えてあたかも危険であるかのように表現する古典ネタのようです。
ご存じない方はこちらを参考にしてください。

DHMOは今となってはジョークとして楽しむネタかもしれませんが、団体の発信する「あきたこまちR」のネタは秋田の人たちを傷つける深刻な加害行為です。
秋田県も公式でお願いを発表するほどです。

でも、やはり私が一番気になるのはそのやり方です。

もしも本気で危険だと思うなら「危険です! 食べないで!」とはっきり真剣に言えばいい。
危険だと思わないなら、誤解した多くの読者に「危険だという意味ではないですよ」と言えばいい。
しかし、団体は責任を負う覚悟も誤解を解く努力もどちらもしていません。

署名に賛同する声を見ると「遺伝子組換え米は食べたくありません!」「ワクチンが入っている!」という、明らかな誤解や曲解がゴロゴロ並ぶ地獄絵図のような様子が広がっています。
しかしながら、団体が誤解を解く素振りは全く見えません。
「自分は危険だと言っていないけど読み手が勝手に判断した」ということにして人々を扇動し、秋田県への迷惑行為に対して責任を放棄しているのです。
これは、発信の内容が正しい正しくない以前にきわめて卑怯なやり方だと思います。

私の住む長崎のお米はたまたま(注目度などの関係で)ターゲットになりませんでしたが、全く他人事とは思えません。(過去記事にも書きました)

OKシードプロジェクトは活動を元にカンパを募ったり、「OKシードマーク」なる独自の認証マークを普及させようとしています。
私は署名活動などをするつもりはありません。
誤情報で他者を下げて商売する団体のマークが付いた食品なんぞ、食べたくありません。

 

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筆者

渕上桂樹(ふちかみけいじゅ)(農家BAR NaYa/ナヤラジオ)

 

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