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外国人のお客さんに「日本はオーガニックだね」と言われて思ったこと:66杯目【渕上桂樹のバーカウンター】

コラム・マンガ

私の経営するバーでは、自家製果実酒や季節のカクテル、自家栽培の柑橘を使ったクラフトビールが人気です。カウンターでは生産現場の話や品種にまつわる話もよく紹介しています。最近では外国人のお客さんも多くお見えになるのですが、ある時メキシコ人のお客さんから「この店はオーガニックですごくいいね!」と言われました。私はとっさに「ウチは別にオーガニックじゃないんですよ」と答えましたが、お客さんの話を聞いて考えさせられたことがあるので、今回はその話をしたいと思います。

素材の美味しさを感じられるのがオーガニックという概念

私が「オーガニックじゃないんですよ」と答えたのは、有機JAS認証を取っているわけではなかったからです。日本の法律ではオーガニックと表示できるのは有機JAS認証がある場合に限られますし、私は食品スーパーで働いていた経験もあるのでとっさにそう答えてしまいました。

ですが、お客さんはこう話してくれました。「いや、この店はたしかにオーガニックだよ。僕はそう思う。この店だけじゃなくて、日本で食べる食事はすごくオーガニックだ。なぜなら素材の美味しさをしっかり感じられるから」と。

色々な国に行った経験があるという彼は「以前アメリカで暮らしていたことがあるけど、アメリカでは全然ちがった」とアメリカでの食生活を話してくれました。アメリカのスーパーは生鮮食品が少なく、加工品に頼った食生活になりがちだったこと。飲食店も画一的なものが多く、生産現場を感じる機会が少なかったこと。

鮮度や素材感を大切にしているのが日本への印象

それに比べて日本の飲食店やスーパーは鮮度感や素材感を大切にしていて、それこそが「オーガニック」なんだ。などと話してくれました。「ヨーロッパではどうしたか?」と聞くと、「うーん、ヨーロッパも国によっては良いけど、やっぱり日本が特別に素材の良さを感じる。どこで食べてもそうだ」と感想を聞かせてくれました。

オーガニックの価値は欧米で作られ成熟したと考えていましたが、もしかすると彼らが失い、懐かしみ、取り戻そうとする価値は日本では言語化されなくとも守られ続けてきたのかもしれないと思いました。それは、生産者の努力だけでなく、流通に携わる人たちやそれぞれ飲食店の努力の積み重ねでもあるでしょうし、食材を大切にする消費者のマインドによるものかもしれません。

そして、国土のちがいもあるでしょう。アメリカのような広大な国土で日本と同じような流通やサービスが適しているとは考えられません。しかし、だからこそ「オーガニック」に特別な価値を見出したのでしょう。

話の中で彼は、メキシコの故郷の話をいくつもしてくれました。日本とメキシコでは作られているものも全然ちがいましたが、日本の素材感・現場感で遠い故郷を思い出してくれたことは嬉しい出来事でした。私もメキシコに行ってパイナップルのカクテルを飲みたくなりました(ちなみに写真はメキシコではなくてペルーに行ったときのもの)。そうしたコミュニケーションが生まれたのは、日本独自の「オーガニック」な文化のおかげだと思います。

独自の「オーガニック」を作りたい

メキシコ人のお客さんの話を聞いて、誰かにとっての「オーガニック」って何だろう? 「オーガニック」に求めるものって何だろう? と考えさせられました。そして、日本を訪れる外国人のお客さんに日本独自の「オーガニック」を感じてもらうにはどうすればいいだろう? と思うようになりました。都会のど真ん中で「オーガニック○○使用」と表示して売るだけでは伝わらないと思いますし、最近流行りの“オーガニック給食運動”のように食材の一部をオーガニックに切り替えたと喧伝するだけでは足りないでしょう。答えはいろいろあるとは思いますが、私は既存の生産・流通にリスペクトを表しつつ、丁寧なコミュニケーションで素材感・現場感あるサービスを作っていきたいと思います。

 

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筆者

渕上桂樹(ふちかみけいじゅ)(農家BAR NaYa/ナヤラジオ)

 

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