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第13回 IARC分類にもとづく州の警告表示をEPAが無効化【IARCに食の安全を委ねてはいけない】

特集

米カリフォルニア州には「プロポジション65」という悪法がある。名目上は州知事だが実質的にはIARCが「発がん性がありそう」と判断すると、それを危険リストに追加して発がん性の警告表示義務を課す州の法律だ。今日ではもっぱら、金儲け主義の弁護士たちが大小の企業を相手に賠償金目的で訴訟を起こす口実に使われている。この悪法のグリホサートへの適用に、EPA(米国環境保護庁)が立ちはだかった。

カリフォルニア州の悪法プロポジション65

米カリフォルニア州の州法「プロポジション65」はまぎれもない悪法である。正式名称は「1986年安全飲料水及び有害物質施行州法」。ひとたび排気ガスがリストに追加されると、州内で事業を行っている人と企業、例えばロサンゼルスのディズニーランドでは、排気ガスの出る場所すべてに「発がん性があります」という警告を表示しなくてはならない。

参照

1986年の制定当時はカリフォルニア州の市民および飲料水資源を、がん、先天異常または他の生殖害を引き起こすことが知られている化学物質から保護することを目的として制定された。しかし財布や靴、ティファニーのランプ、鳥の餌箱、ホテルの部屋、遊園地などの無害な製品について「警告」しなかった企業を訴えることによって「公衆を保護する」目標を掲げているため、今日ではもっぱら、金儲け主義の弁護士たちが大小の企業を相手に訴訟を起こす口実に使われている。

訴えられた企業(その多くは小規模の家族経営企業)がなぜ十分な警告をしなかったのかというと、市民の健康を害する可能性のない製品に愚かなラベルを貼らない選択をしたからである。スターバックスのコーヒーに含まれるカフェ酸も警告表示義務を課されそうになったが、州を提訴して勝訴し、表示義務の撤回に成功している。

連邦政府が州の警告表示義務を完全無効化

2015年3月にIARCがグリホサートをグループ2A(おそらくヒトに対して発がん性がある)に分類すると、カリフォルニア州は2017年7月に、グリホサートを「発がん性のある有害化学物質リスト」に追加し、その成分の農薬に「発がん性」の表示義務を課した。

しかし、グリホサートの発がん性に関して、EPA(米国環境保護庁)はIARCとカリフォルニア州政府のようには考えていない。EPAは2019年8月、「カリフォルニア州がグリホサート含有製品のラベルに発がん性ありと表示をすることを認めない」と発表し、ラベル表示している農薬登録者に対して90日以内に警告表示を削除するよう指導した。連邦政府による州の警告表示義務の完全無効化である。

EPAの決定は科学的な知見にもとづくものであり、EPAのアンドリュー・ウィーラー長官は次のように述べている。

“カリフォルニアの欠陥プログラムが連邦政府の政策を左右することは許されない。”

グリホサートの発がん性を裏付ける「証拠」は薄弱であるだけでなく、IARCによる不正な研究の産物である。以下は、私の同僚であるアレックス・ベレゾフ博士のIARCとその調査結果に対する批判(グリホサート・ゲート IARCの科学的不正行為)の抜粋である。

“今、答えが出た…IARCの重要な顧問であり、グリホサートを発がん性物質としてリストアップされるよう働きかけたクリストファー・ポワティエ氏が、グリホサート製造業者を訴えることで多大な利益を得る立場にある癌患者を代表する裁判弁護士から16万ドルを受け取っていたと英タイムズ紙は伝えている。このような明らかな利益相反を開示しなかったポワティエ氏の行為は、科学的詐欺の教科書的事例として歴史に残る。”

IARCの主張する「エビデンス」なるものは、グリホサートを発がん性物質に指定した唯一の犯人であった。疫学的研究では、グリホサートを日常的に扱っている農業従事者の発がんとの関連は見つかっていない。DNAの損傷や突然変異を示唆する遺伝毒性の生化学的分析もすべて陰性であった。IARCのでっち上げを除けば、グリホサートががんを引き起こすことを示す有効な動物実験も存在しない。

米国、カナダ、EU、フランス、ドイツ、スイス、ニュージーランド、ブラジル、日本、オーストラリア、韓国の規制機関はすべて、グリホサートは毒性または発がん性のリスクをもたらさない、と発表している。にもかかわらず、カリフォルニア州はIARCの誤った評価のみにもとづいて、不正なラベルを貼ろうとしたのである。

*AGRI FACT編集部追記 その後、ラウンドアップ裁判そのものにも新たな動きがあった。子どもが発症したがんに関してバイエル社を提訴し、和解の枠組みから外れたカリフォルニア州の訴訟で、2021年9月に被告バイエル社勝訴の一審判決が初めて下った。

*この記事は、ジョシュ・ブルーム著 2019年8月13日公開 https://www.acsh.org/news/2019/08/13/epa-grows-pair-and-takes-stand-glyphosate-14221 をAGRI FACT編集部が翻訳編集した。

〜第14回に続く〜

 

【長期特集 IARCに食の安全を委ねてはいけない】記事一覧

筆者

AGRIFACT編集部

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