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「タネを守ろう」と声を上げた人々【タネは命そのもの編】:19杯目【渕上桂樹の“農家BAR Naya”カウンタートーク】

コラム・マンガ

今回は、前回に引き続き、種苗法改正に「声を上げよう!」と集まったグループ『タネを守ろう(仮)』に参加していたときに感じたことに触れます。種苗法とは、ざっくり言うと「タネ(登録品種)の海賊版で商売したらいけないよ」という品種の著作権法のようなもの。ですが、このコラムは感想文のようなものなので、詳しい内容は公開されている情報や、AGRI FACTにある解説記事を参考にしていただきたいと思います。

タネを守ろう!≠種苗法の内容への関心

グループに参加していたとき、私のバーには種苗法に関心のある人が話を聞きに来ることがたびたびありました。

私は専門的な知識は持っていませんが、せっかく来てくれたお客さんには自分なりに説明するようにしていました。

ただ、前回のコラムでも述べましたが、種苗法に関心を持って「タネを守ろう!」と声を上げる人たちの多くは意外と法律の内容に関心を示さないので、「登録品種とはどういうものか」「法改正の変更点とは」といった話はあまり聞いてくれません。

また、「種苗法改正で大変なことに!」という方向で種苗法に興味を持ってくれた人には、法律の具体的な話をしても「なーんだ、普通の法律か」と急に興味が覚めてしまうことも多いのです。

そのため、私はあるときから説明の仕方を変えました。

品種開発の仕事内容を説明

どんな説明かというと、品種開発がどんな仕事で、どのように私たちの生活を支えているのかというもの。

たとえば、トマトの原種は味も悪く、毒も含んでいましたが、長年にわたる改良(時に突然変異)の結果、今のおいしいトマトが生まれました。

また、トウモロコシの原種(とされているもの)は食べるところがほとんどありませんでしたが、古代マヤの人々はそれを改良し、食料を増産して文明を育みました。

現代人はさらに改良を重ね、食用にとどまらず燃料や新素材などにも利用し、気候変動にも立ち向かおうとしています。

そして、私たち日本人はイネを改良しつづけてきました。

寒冷地でも栽培できるイネを開発し、多くの命が救われました。

1粒の種もみから収穫できるコメの量は江戸時代と比べて数倍になったことで、日本人は稲作の重労働から解放され、余った労働力によって工業やサービス業など多くの産業が発展しました。

このほか、花など観賞用の植物は、創造性にあふれる開発者の努力で多様性が広がり、私たちの生活は豊かになりました。

タネを守る

品種開発関係者への敬意

こうしたたくさんの恩恵は、品種開発に献身的に取り組んできた人たちによってもたらされました。

もちろん、現代でも品種開発は続いており、時間とお金をかけて新品種が作られています。

種苗法は、こうした仕事を守るためにあります。

農業関係者のほとんどは、種苗法に詳しくなくても品種が重要であることを経験で知っています。

ですので、一般的な農家はタネを買うのに対価を払うのは当然だと思っていますし、誰かが開発した登録品種を勝手に増やして商売しようとは考えません。

それは、農業を支え命と暮らしを守る品種開発の仕事に敬意を払っているからです。

私が「タネはみんなのものでしょ? なんでお金を払って買わないといけないの? そんな法律はおかしいよね?」というグループの主張にどうしても共感できなかった理由は、種苗法の知識ではなく、プロフェッショナルへの敬意があったからだと思います。

ここでいうプロフェッショナルとは、品種の開発者のみならず、種苗法制定・改正に取り組んだ人たちも含みます。

農業に関係ない一般消費者は、品種開発のことも種苗法のこともよく知らないかもしれません。

ですが、たとえ農業が身近でなくても、社会を支える仕事への敬意があれば、「タネが支配される! 独占される!」「さあ、大変なことになる前に声を上げよう」という話を聞いたとき、「大変だ! なんて悪い人たちだろう! よし、声を上げよう!」と思い立つ前に「タネを開発する会社ってどんな仕事をしているんだろう?」「法律について、農水省はどんな発表をしているんだろう?」と立ち止まることができるはずです。

本当の意味での「タネを守る」人とは種苗法を作った人

「タネは命そのもの」

このスローガンは、グループで何度か目にしたものです。

メンバーはどういう意味でこの言葉を掲げていたのでしょうか。

私は、この言葉には「タネは植物の命である」という意味の他に、「タネは命をかけて作ったもの」という意味があるように思えます。

開発者が心血を注いで作ったタネは命そのものであり、タネの海賊版は命の海賊版と同じです。

「タネを守ろう!」「(あなたが作った)タネは誰のもの?」というグループの活動は、タネの開発者の目にはどう映ったのでしょうか?

そもそも、「タネを守る」人とはいったいどういう人たちなのでしょうか?

「命の海賊版を作らせない」という思いを胸に、知恵を出し合い法律を作った人たちこそ、本当の意味での「タネを守る」人なのではないでしょうか。

さらに理解を深めたい場合は

【渕上桂樹の“農家BAR Naya”カウンタートーク】記事一覧

筆者

渕上桂樹(ふちかみけいじゅ)(農家BAR NaYa/ナヤラジオ)

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