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農業に関するデマで打線組んでみた!〈パート39〉 【ナス農家の直言】

農家の声

今回も、
「農業に関するデマで打線組んでみた!〈パート39〉」をテーマに、
農家の私ナス男が紹介していきます。

1.(中)キャベツは中の方まで農薬がかかってる!

「キャベツは中身まで農薬がかかってるから、1枚ずつ葉っぱを洗う方がいい!」
という投稿を見かけました。

丁寧に洗うのは自由ですが、キャベツを栽培した経験がある私は、中の葉っぱまで農薬が付着していることはないと思います。
というのも、キャベツの結球の仕方は、外葉が丸まっていくのではなく、内側から結球していくからです。
定期的な農薬散布はあれど、内側の方の葉っぱまで農薬がかかっているとは考えにくいです。

2.(二)代掻きの時の農薬が流れて、魚に影響が出ている!

「田んぼの代掻きが始まる4月は、なかなか魚が釣れない! 代掻きの時に農薬をまいているのでは?」
という、釣りに関する投稿が議論を呼んでいました。

代掻き(しろかき)とは、田植えの時に苗を活着や生長しやすい状態にするために、水を張った状態で田んぼを耕すことです。
ですから代掻きで土壌を撹拌(かくはん)することで、田んぼの水は濁り、濁った水が川に流れるのは事実です。
しかし代掻きの時に、除草剤や殺虫剤を使っている水稲農家を聞いたことがありません。
田植え後に農薬を散布することはありますが、魚毒性が強い農薬は、現在では使用できません。
私は釣りには詳しくないですが、濁った水が魚のえら呼吸に影響して釣りにくい状態になるという意見もあるようです。
田植えの時期に釣りにくくなれば、農薬が原因とも思われるかもしれませんが、冷静な解釈が必要です。

3.(三)ゴルフ場の周辺は農薬被害の危険性がある!

ゴルフ場の芝や木々に農薬散布しているから、ゴルフ場の周辺住民はパーキンソン病が多い傾向にある!
という調査結果を、某東大教授が投稿していました。

たしかに海外では、ゴルフ場周辺住民とパーキンソン病の関連性を調べる研究結果は公開されています。
その結果によると、「ゴルフコースのある水道サービスエリアから飲料水を得ている人は、ゴルフコースのない水道サービスエリアから飲料水を得ている人と比較して、パーキンソン病のオッズがほぼ2倍である。」
とされています。

「ゴルフ場の管理のために使われる農薬が地下水に浸透している」との考察があるようです。
でも、私は異議ありです。

①日本のゴルフ場は、環境省から水質及び周辺生態系への影響を考慮した、農薬取締法に則った行動指針が示されています。
この研究報告の中で「パラコートやロテノン」という成分が出てきますが、芝に適応のないこれらの成分の入った農薬は、日本のゴルフ場では使用はできません。

②それに加えて、この調査の結果考察として、「農薬とパーキンソン病の因果関係についてはさらなる調査が必要。」との結論があります。
つまりこの研究結果1つだけで農薬とパーキンソン病を結びつけるのは早急すぎます。

「農薬そのものの危険性」と言うより、「ゴルフ場管理者の農薬の適切な使用」が問題なのでは?
東大教授としては、論理のボールがOBではないかと私は思います。
https://www.env.go.jp/content/900544198.pdf

4.(一)お金を払ってもらえれば、農薬が危険だというデータを出せる!

農薬に関するレスバトルの中で、
「調査フィーをいただければ、弊社のグローバルな専門機関が、農薬の危険性を調査しますよ?」
とコメントしている方がいました。

いやいや……、真に農薬の危険性が分かるデータは、お金を払える一部の人にしかアクセスできないのでしょうか?
誰でもアクセスできて、検証可能な論文しか評価されないと思うのですが……。
ビビらせて相手に引かせるのが狙いと言われても、仕方がないように思えます。
個人的には、その調査フィーとやらが、いくらかかるのかが気になりますね。

5.(左)除草剤が原因で犬が死んでしまった!

「散歩中に除草剤がかかった草むらを犬が歩いたらその後、犬の体調が悪くなって死んでしまった! 除草剤許すまじ!」
という投稿がありましたが、果たして本当でしょうか?

実際、ゴキブリやナメクジ、ネズミなどの駆除を目的としたベイト剤(有効成分に害虫・害獣が好む誘引成分を加えた餌タイプの製品)を犬が誤食する可能性はあります。
しかし犬の急性中毒に関する動物病院からの相談事例1,623件のうち、除草剤が原因の中毒事例は14件しかありません。
さらに有効成分のグリホサートが原因物質だったのは、わずか7件とされています。
除草剤がペットに対して危険であれば、農村の犬は等しく健康被害に遭っているはずです。
しかし現実はそうはなっておらず、ペットの健康寿命も伸びているというデータがあります。

除草剤とペットの健康被害を結びつけるほどの証拠はないのです。

6.(右)灰を使えば種子消毒すら要らない!

「灰をもっと活用すれば、種子消毒どころか、農薬不使用で栽培できる!」
というような投稿がありました。

たしかに竹やバークなどの燃焼灰には、滅菌効果や消臭効果があることが分かっており、ウイルスや特定の病原菌に大して有効な効果を発揮するという研究結果があります。
燃焼灰が強アルカリ性であるという特性を活かし、鳥インフルエンザウイルスや豚熱の対策として、消石灰の代替として燃焼灰を有効利用する研究も行われています。
しかし種子消毒にも活用できるかどうかの研究は、私が調べた限りでは行われていません。

それに代替農薬として農薬登録のない燃焼灰を使用することは、農薬取締法に引っかかる事案です。
このコメント主は私が考えるに、闇で燃焼灰を使用しているか、もしくはエアプ(農業してないのに現場の知見があるかのような行動)ではないでしょうか?
ちなみに米農家によると、イネの種子消毒は、化学農薬もしくは温湯での消毒が一般的とのことです。

7.(捕)家庭用の殺虫剤を農業に使っていいのか。

ゴキブリや蚊の殺虫剤は、畑の害虫にも効くのかもしれませんが…
自家製の殺虫剤と一緒で、農薬登録されていないので、農業では使えません。

8.(遊)予防原則にのっとれ!

「1%以下でも安全性が疑わしい農薬は、許可するな!」
「何十年後、世代を超えて影響が出るかもしれないから怖い!」
と、予防原則を振りかざして農薬使用を批判している方がいます。

本来の予防原則とは「科学的な根拠が不確実で推測的である状況下でも、深刻かつ不可逆的な損害の脅威がある場合には、予防的な措置を講じるべきだ」という考え方で、深刻かつ不可逆的な損害の脅威がある場合に“限定的に”適用されるべきものです。
科学的な根拠はなくても安全性が疑わしいという理由で適用せよ!というのは、予防原則の乱用、暴走ではないかと感じます。
何十年も検証したものしか信用できないなら、何を食べてどのような生活をすればいいのでしょうか。
100%の安全性が証明されている食べ物はあるのでしょうか。
今手に持っているスマホだって危険かもしれないから、今すぐ投げ捨てたほうがいいということになります。

9.(投)農家の時給は10円だ!

共産党の某議員が「稲作農家の時給換算は10円で、低すぎる!」「農家の平均所得は1万円だ!やばい!」
という発言が間違って広まって、「農家の時給は10円!」と広まってしまっています。
というロジックには統計の切り取りがあります。

これは兼業農家を含む計算なのです。
30ha以上を生産する農業経営体では、300万円以上の利益が出ている統計です。
正直、利益度外視で農業をしている方もいますので、一緒くたにして計算されてもこまるのですよね。私も時給換算は低いんですけど。

まとめ

これからも農業デマの拡散を防ぐために、消費者の方に分かりやすく農業デマを紹介していきます。

 

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筆者

ナス男(ナス農家&サイト「農家の決断」管理人)

 

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