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第8回 コメ農家が種苗法改正の影響が大きいは“事実”なのか【鈴木宣弘氏の食品・農業言説を検証する】

特集

農と食を支える多様なプロフェッショナルの合理的で科学的な判断と行動を「今だけ、金だけ、自分だけ」などと批判する東京大学の鈴木宣弘教授。その言説は、原典・元資料の誤読や意図的な省略・改変、恣意的なデータ操作に依拠して農業不安を煽るものが多い。AGRI FACTはブロガー晴川雨読氏の協力を得て、鈴木教授の検証記事をシリーズで掲載する。第8回は、鈴木氏が種苗法改正(2020年に成立)反対の根拠として挙げるデータの代表例、コメ農家は本当に種苗法改正の影響が大きいのかを検証する。

反対の根拠となるデータに問題が

鈴木氏の著書『農業消滅――農政の失敗がまねく国家存亡の危機』(2021年7月刊行)の第2章「種を制するものは世界を制す」で種苗法の改正(2022年4月1日に完全施行)に反対する言説を展開している。その理由の一つとして、以下のデータを根拠に挙げている。

「登録品種は1割程度しかないから影響ない、という政府が説明する根拠は図2の登録品種の占める割合を見ても崩壊しているということがわかる。」

青森県の資料(https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/nourin/nosui/files/041kome.pdf)によると、確かにコメの「まっしぐら」「青天の霹靂」は登録品種なので、一見すると上の図は正しそうに思える。ただし、上記の図の割合がいつの時点か明記されていないので厳密にはわからない。

鈴木氏は登録品種の数は全体の1割と少なくても、コメの栽培(作付)面積における登録品種の割合は高いのだから、種苗法改正による影響は大きく、コメ農家の種子コストが増加するなどと言いたいのだろう。

青森県で8割近く栽培されている、まっしぐらは、もともと「自家増殖を行わないよう指導」されている。おそらく県としてのブランド戦略・品質確保のためと思われる。

出典:農林水産省の改正種苗法についての資料内(https://www.maff.go.jp/j/shokusan/syubyouhou/

以前からコメ農家の約9割は毎年種子を購入している

そして、青森県の種子更新率は2017年度見込みが99.7%、2016年度実績は100%だった。つまり、ほとんどのコメ農家が改正種苗法の成立(2020年12月)以前から種を買って植えている(=種子更新)。全国平均での種子更新率は88%に達する。農家は総合的な経営判断にもとづいて登録品種か一般品種かに限らず、毎年種子を購入してきているのである。
なお、種苗法改正では一般品種の自家採種は改正前と変わらず自由で、登録品種についても許諾制(有償でない可能性もある)である。登録品種も登録期間がすぎれば、自由に自家採種可能となる。

出典:一般社団法人全国米麦改良協会

鈴木氏の言説は、根拠となるデータの扱いが恣意的で的外れである

 

*晴川雨読氏のブログ「東大農学教授の倫理消滅 ②種編」をAGRI FACT編集部が編集した。

第9回へつづく

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