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第2回 枯葉剤「エージェント・オレンジ」の実態と構成成分【ラウンドアップ「枯葉剤」説の虚構 “反農薬・反GMO・反資本主義” 活動家が作った構造的デマ】
除草剤ラウンドアップ(有効成分グリホサート)ほど誹謗中傷される農薬はない。とくにインターネットを中心に流布されているのが「ベトナム戦争の枯葉剤と同じものだ」「ダイオキシンが含まれている」という類の言説だ。むろんこれら「ラウンドアップ≒枯葉剤」と見なす言説はすべて、科学的・歴史的根拠に基づかないデマである。しかも成分・作用機序・開発経緯が異なる二つを同一視して不安を煽ることは現代の農業技術・農業経営への不当な攻撃であり、絶対に見過ごすことはできない。
猛毒ダイオキシンはなぜ混入したのか
ベトナム戦争で使われた枯葉剤「エージェント・オレンジ」は、人体への深刻な被害を引き起こした悪名高い兵器として今も語り継がれている。深刻な人体被害を引き起こした毒性の正体は、軍用製剤エージェント・オレンジの製造過程で混入するダイオキシンである。
エージェント・オレンジは、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(通称2,4-D)と2,4,5-トリクロロフェノキシ酢酸(通称2,4,5-T)の1:1混合剤である。どちらも第二次世界大戦期から存在するフェノキシ酢酸系除草剤だが、問題は2,4,5-Tの製造過程で副産物として生成される「ダイオキシン(TCDD)」である。微量でも強い毒性をもち、発がん性や催奇形性が指摘されている。
このダイオキシンは意図して生成されたものではなく、製造工程の高温・高圧条件により結果的に不純物として生じたものであった。つまり、2,4,5-Tそのものではなく、不十分な品質管理が毒性問題を生んだのである。
枯葉剤は軍用化学兵器
さらに重要なのは、エージェント・オレンジが「戦術的除草剤」として特別に軍用開発された製剤である点だ。単に市販品を軍が買い上げたのではなく、米陸軍化学兵団が管理する「フォート・デトリック研究所」で処方や散布手法の設計が行われた。その後、航空機から広範囲にわたり空中散布され、推定で約5000万ℓ、約170kgのダイオキシンがベトナム全土に投下された。人体被害もベトナム全土に及んだ。
悪名高い「枯葉剤」は歴史的にも化学的にも、非常に特殊な事情と構成成分を持った軍用化学兵器なのである。農業用に民間企業で開発された除草剤ラウンドアップとは、構成成分はもちろん、開発の意図・経緯、製造過程、販売・使用目的等すべて異なる。同列に語られるべきではない。