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グリホサートとネオニコチノイド類の使用禁止は非現実的!

ニュース

アメリカの「Genetic Literacy Project(遺伝子リテラシープロジェクト=GLP)」は、資金の独立性を保ちながらバイオテクノロジーのイノベーションに関する情報を収集・分析し、調査結果を発表している。この記事はGLPの調査結果の一部抜粋である。

使用禁止は農家の繊細な病害虫管理を危うくする

除草剤グリホサートと殺虫剤ネオニコチノイド(ネオニクス)の使用をめぐって論議が続いている。それはつまるところ「禁止すべきだ」という意見と「禁止する必要はない」という主張の対立に行き着く。

8月31日、フランス政府は5種類のネオニコチノイドを農薬として使用することを禁止した。養蜂農家や環境問題の専門家はこの決定を歓迎したが、農家は反発した。一方、グリホサートについては少なくともヨーロッパではまだ論議が続きそうだ。当面の承認が下りたことで、ふたたび議論が沸騰し、緊張が生じている。

農薬をめぐる議論に対して、農家は二者択一で対応するべきだろうか? それは現実的ではないと農家や農業専門家は考えている。

どの農薬を、どの時点で、どのような農作物に、どのような害虫を駆除する目的で使用するかについては国や地域レベルでの規制がある。カリフォルニア州法では、市販されている農薬の散布について助言できるのは、認証を受けた害虫駆除アドバイザーのみとされている。したがって害虫駆除アドバイザーは最新の製品と規制の情報に通じていなくてはならない。

ネブラスカ大学の昆虫学研究者ジェフリー・ブラッドショー助教授(Jeffrey Bradshaw)は、農家が農薬の使用についてどのように考えているのかを、次のように述べている。

「殺虫剤をどのように使用するかは、農作物価格(または栽培コスト)とリスクへの認識に左右されます。一般的に、農作物価格が高ければ、作物を管理する側のリスク回避傾向も高くなります。リスクへの対応は、作物の種類、栽培体系、環境にもよっても変わります。種子処理用殺虫剤(ならびに遺伝子組み換え技術)はこのバランスを崩しかねません。なぜなら、(遺伝子組み換えされた種子や農薬処理済みの種子の場合)処理にかかるコストがわかりにくいからです。ですから、法的な決定に基づいてというより、畑の栽培履歴を根拠として殺虫剤使用の是非を決めているのです。ただし、害虫によっては、翌年の種子購入を決めるにあたり、栽培履歴が必ずしも正確な指標になるとは限りません」

ブラッドショー助教授は、ネオニコチノイドのような種子処理剤が禁止された場合には、次のような事態が起きる可能性を指摘する。

「種子処理剤の使用が禁じられた場合、より有毒な殺虫剤が使用されるようになるとは思えません。遺伝子改変形質を持つ作物や種子処理剤を受け入れるにあたり、多くの生産者は、インファロー技術設備(植付時植溝内土壌散布設備)を放棄してしまいました。今日の一般的な作物価格は、生産者が設備投資を増やすのに十分ではありません。アメリカ合衆国環境保護庁(EPA)が種子処理用殺虫剤を禁止したとしても、一部の生産者たちは古い散粒機の箱を引っ張り出したり、予備の施肥機と一緒においてある殺虫剤のミキシングタンクを覗き込んだりするでしょう」

農業改良普及機関もまた、洗練されたオンラインツールを提供することで農家が殺虫剤の種類を調べるのをサポートしたり、適切な解決策を見出す手がかりを提示したりしている。それゆえ、ある殺虫剤を候補から除外したとしても、農家が農薬の使用をやめることにはならないだろう。利用可能な他の農薬を使用するとというだけの話である。

その中には、他の化学物質に比べて選択性が低いため、益虫や他の作物を害する恐れがあるものもある。『遺伝子リテラシープロジェクト』Genetic Literacy Projectの記事において、「フードファーム・ディスカッション・ラボ」Food Farm Discussion Labの編集者マーク・ブラゾ―(Marc Brazeau)は、グリホサート除草剤禁止に対する農家の反応を下記のように引用している。

「発芽前管理において、2,4D、グラモキソン (パラコート)、或いはリバティー(グルホシネート)などを用いたものの割合が高くなりつつあります。しかし、これらはよりコストがかかります。我々は既にやり方を変えています。もしグリホサートでカバークロップを除去するのならば、発芽前にグラモキソンを散布するでしょう」

他の農家は下記のように述べる。

「今年、私は枯葉剤としてジクワットを使いましたが、不耕起栽培にはグリホサートを使っています。」

害虫対策コストに敏感な有機栽培農家

これらの問題は、有機栽培農家にとっても無縁ではない。カリフォルニア州オックスナードの有機栽培農家フィル・マクグラス(Phil McGrath)は、2013年のロサンゼルス・フードポリシー・カウンシルにおいて次のように述べている。

「私たちのような有機栽培農家では害虫対策は重要な課題です。しかし、市販の殺虫剤を害虫管理に用いるよりは、石鹸や油を用いるほうが安上がりなんです」。マクグラスは、イチゴ栽培に効果のある2種類の土壌燻蒸剤が禁止されて以来、多くの農家が他の作物栽培に転換するのを目の当たりにしてきた(多くは金銭的な理由での決定だった。なぜなら、イチゴは大変高価な作物だからである)。マクグラスの農場では作物の輪作を行うとともに、籾殻を有機燻蒸剤として用い始めた。「イチゴの苗床の下に籾殻を敷き込んで、土壌伝播性の病気や害虫を防ぐ方法です。初期試験をいくつか行いましたが、効果が3年間持続するという好ましい結果が得られました」

これまでに使用されてきたほぼすべての農薬が悩まされてきたのが耐性の出現である。これを回避するために重要なのが多様性で、多様な農薬の開発・使用が求められている。

種類に関わらず、農場で使われる農薬はすべてアメリカ合衆国環境保護庁を含む連邦機関による認可を受けたものである。これらの認可は毒性の全体量を評価するのみならず、農場で使用する推奨量を定め、最終的に、消費者に販売される食品において安全と見なされる残留基準を定めている。

一律禁止は農家の選択肢を狭めかねない

グリホサートの禁止のような法的決定は、合理的な理由なしに選択肢を狭めてしまいかねない。それによって総合的病害虫管理(IPM: Integrated Pest Management)は合理性を欠き、かえって環境に負荷がかかる。環境保護論者はIPMを好む。それは殺虫剤を使わずに食物を生産することが「より自然な」方法だと思われているからである。しかし農家の多くはIPMの全ての規則を取り入れているわけではない。一部の慣習を採用し、あとは無視するというように範囲を区切ってその手法を取り入れているのである。IPMに熱心な農家でも、農薬の使用は依然として不可欠な要素と考えられている。

テリー・デイナード(Terry Daynard)はオンタリオ州の穀物農家であり、オンタリオトウモロコシ生産者協会の副代表やゲルフ大学の食物科学教授を務めた経験のある人物である。あるインタビューで、彼は次のように述べている。

「私は、農業ビジネスに真剣に取り組んでいる全ての人に、IPMの要素をある程度は取り入れてほしいと思っています。というより、そうせざるを得ないと思います。雑草対策の例でいえば、まず、今年どのような雑草がどこに生えるかを記録し、翌年のために初期除草剤散布の計画を立てます。次に、定期的に作物を選択し、必要があれば雑草の性質に合わせた除草剤散布を行います。例えば、私はグリホサート耐性トウモロコシをこの春に植えましたが、最初の除草剤には別の化学物質を用いました。私の計画では、トウモロコシが膝丈くらいになった時、必要があればグリホサートを散布する予定でした。しかし、その時点で畑を見回したところ、雑草の密度は追加の除草剤散布が必要ない程度のものでした。それゆえ、2018年は、私のグリホサート耐性トウモロコシに対し、ついにグリホサートを散布することはありませんでした。

このように私たちは何らかの方法でIPMを用いることができます。通常、農薬散布計画は、年によって、また畑によって異なります。ある農薬が排除されたり制限されたりした場合、農家は可能な限り対応し、もし問題が解決できなければ他の作物へと転換します。作物の転換の例は北ヨーロッパで見られました。この地域では、ネオニクス処理種子が入手できなくなったために、ノミハムシによるアブラナへの被害が発生しました。その結果、一部の農家は他の農薬を以前より大量に散布して対応したのですが、その作物の栽培をやめた農家も多かったのです」

著者:Andrew Porterfield
ライター兼エディター、多くの生命科学関係の学術機関、企業、非営利団体で勤務。Twitterアカウント:@AMPoterfield

原文

Costs and benefits need to be assessed in weighing bans on glyphosate and neonicothinoids

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