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化学物質が身体に悪いかどうかは量で決まる – グリホサートの真実とは2【完全版】(vol.9)

食と農のウワサ

生産現場のリアルな声を発信する日本有数の農業チャンネル「トゥリーアンドノーフ」を運営する徳本修一氏が、グリホサート問題の歴史的経緯から背後で蠢くビジネス人脈、科学的評価や対立の解決法まで、食の安全安心の権威・唐木英明氏に聞きまくった1時間。グリホサートの真実とは2【完全版】をAGRI FACT用に再構成してここにお届けする!(vol.9)

化学物質が身体に悪いかどうかは量で決まる

徳本 ラウンドアップに関する疑問や批判を、農業生産で使用する我々も数多くいただくのですが、唐木先生の解説でもわかるように、それらのベースになっているのはフェイクニュースや、科学的根拠のない言説が引用されて批判に使われているようです。そしてそういう方たちの不安の根本を突き詰めていくと、やはり「本当に安全なのか」「人体に影響はないのか」に行きつくと思います。発がん性、あるいは子どもの発達障害との関連性といった具体的な健康不安の懸念です。

唐木 これは非常に深刻な問題で、化学物質すべてに共通する問題です。化学物質は多量を食べると必ず何かの障害が起こります。例えば塩化ナトリウムという化学物質の食塩でも200g~300gを一度に摂ると死にます。では食塩は毒なのかというと、1日に5g~7gであれば、一生の間毎日食べても安全です。つまり農畜産物に残留する化学物質そのものが毒かどうかではなく、どれだけの量を摂取するのかで人体に無害か悪影響かが決まる「用量作用関係の原則」があります。この基本原則がなかなか理解されていません。

さらに理解を深めたい場合は

ですからラウンドアップの有効成分グリホサートについても量で安全かどうかを決めているわけです。それがグリホサートの1日許容摂取量、ADIです。一生の間毎日食べ続けても何の影響もない量のADIは、1日あたり体重1kgあたり1㎎と決められています。体重50kの人は1日に50mg以下であれば無害です。もちろん発がん性もありません。

さらに残留農薬に対する不安の一つに、「体内に蓄積するのでは」、あるいは「複合作用があるんじゃないか」があると思います。複合作用の不安というのは1種類の化学物質だけでなく、何種類もの化学物質を一緒に摂ると予想外の悪影響が起こるかもしれないという不安ですね。

この不安に対しては、こうお答えします。体に悪いかどうかは量で決めますが、化学物質は大量に摂取するとヒトの細胞に作用して悪影響を起こします。しかしヒトの細胞に作用する量の手前に「閾(しきい)値」と呼ばれる限界の量があります。この限界の量より少なければ細胞には作用しないのです。ADIはその限界の量と考えられていて、これ以下であればヒトの細胞には作用しないから、体に悪いことは一切ないのです。

そしてもし動物実験の結果、発がん性がある物質、あるいは体内に蓄積するような化学物質があれば、農薬としても添加物としても登録承認されず、一切禁止になります。ですから発がん性のある化学物質、体内に蓄積する化学物質が農薬として使用されている例は1つもありません。むしろ使用が疑われるのは、有機や無農薬・自然農法で登録農薬以外を使用しているケースでしょう。

それから複合作用については先ほどの量と作用の関係です。これ以下の量であれば細胞に作用しない量の化学物質を何種類一緒に摂ろうと、もともと細胞に作用しないので複合作用もあり得ません。微量しか残っていない残留農薬あるいは添加物では複合作用を心配する必要はないのです。

グリホサートの真実とは<2> -「食の安全」の世界的権威に聞いてみた!〜完全版

 

【グリホサートの真実とは2】記事一覧

プロフィール

唐木英明(公益財団法人食の安全・安心財団理事長 東京大学名誉教授)
徳本修一(トゥリーアンドノーフ株式会社代表取締役)

 

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