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農薬の安全性はこうして保たれている – グリホサートの真実とは2【完全版】(vol.11)

食と農のウワサ

生産現場のリアルな声を発信する日本有数の農業チャンネル「トゥリーアンドノーフ」を運営する徳本修一氏が、グリホサート問題の歴史的経緯から背後で蠢くビジネス人脈、科学的評価や対立の解決法まで、食の安全安心の権威・唐木英明氏に聞きまくった1時間。グリホサートの真実とは2【完全版】をAGRI FACT用に再構成してここにお届けする!(vol.11)

農薬の安全性はこうして保たれている

徳本 基本的な質問になりますが、農薬の安全性はどのように審査されているのでしょうか。

唐木 グリホサートをはじめ農薬の安全性を日本で評価しているのが食品安全委員会です。食品安全委員会がグリホサートを評価するのにどれだけの試験をしているかというと、これだけの試験をしています。

農薬評価書農薬評価書

具体的には、動物に食べさせたときにどんな症状が起こるのかを調べる一般薬理試験、多量を飲ませたときにどんな毒性が出てくるのかを調べる急性毒性試験、目や皮膚にアレルギーなどが起こらないかを調べる試験、それからラットやマウス、犬に30日、90日、6カ月といろんな期間食べさせたときにどんな悪い影響があるのかを調べる試験、さらに1年2年と長期間食べさせて、体に悪影響があるのか、がんができるのかを調べる試験、それから子供や孫に悪い影響が出ないかどうか調べる遺伝毒性試験、あるいは子どもに奇形が出ないかどうか調べる生殖発生毒試験、神経毒性を調べる試験などがあります。

これらの試験をすべて行った結果、各種毒性も発がん性も一切なかったということです。動物に食べさせて何の影響もない無毒性量が動物1kgの体重あたり100mgという量で、これ以下であれば動物には何の影響も出てこないということがわかっています。そのうえで、念のために種差と個体差を考慮して、その量の1/100の1㎎/㎏/日を1日許容摂取量(ADI)に設定するというのが、食品安全委員会の結論です。科学の知見にもとづく常識的な判断として、この接種量さえ守っていればグリホサートはヒトに何の悪い影響もないとされたのです。

【編集部註】 改正農薬取締法の施行により農薬は概ね15年ごとに再評価する制度が導入され、2021年度以降にグリホサートの再評価が行われることが決定している。

ただ毎日100mg以上の多量を摂取すると、おなかが痛くなったり、肝臓に障害が起こるといったことが実験動物では起こることがわかってます。ですからグリホサートも、1㎎/㎏/日以下の量なら安全だが、100mg以上であればリスクがあるのです。そこでどの数値=残留基準値で規制するのかが大きな問題になります。

我々科学者は動物実験のデータを使って、「これ以上なら体に影響が出る可能性があります」「これ以下ならその可能性はありません」という限界を示し、農水省、厚労省に届けます。実は農水省、厚労省は科学者が示した安全の限界よりも、ずっと安全なところで規制値を決めます。これがADIであったり、あるいは農作物ごとの残留農薬基準値になるわけです。

化学物質の安全化学物質の安全とは何か?

ところが、私もそうですけが、誰でもが食品の中に化学物質が入っていてほしくないと直感的に思います。さらに行政の判断は本当に正しく、信用できるのかという疑いも生じますから、科学が示す安全の限界では安心できない人が大勢います。そういう人たちは相当安全なところで規制値を決めてほしい、できればゼロリスクにしてほしいと思うわけです。行政の判断は科学の言うことを根拠にしていますが、多くの人が望むことも参考にしなければなりません。国民・住民が安心する(科学的に「安全」ではない)ために民意を重視して、科学が示すよりもずっと安全なところで規制値を決めている。これが日本の現状であり世界の現状でもあるわけです。

先ほど世界の中ではラウンドアップを禁止しているところもあると言いました。実際に少数の国や地域では使用を禁止している、あるいはしようとしているところがあります。それは科学ではなく民意を重視して、住民が相当不安がっているから仕方なく規制しましょうというきわめて政治的な行政判断なのです。反GMや反ラウンドアップ活動家は規制のラインを動かすのは科学でなく民意であると知っているので、フェイクニュースであってもそれを利用し、ポピュリズムに働きかけようとしているのです。

さらに理解を深めたい場合は


グリホサートの真実とは<2> -「食の安全」の世界的権威に聞いてみた!〜完全版

 

【グリホサートの真実とは2】記事一覧

プロフィール

唐木英明(公益財団法人食の安全・安心財団理事長 東京大学名誉教授)
徳本修一(トゥリーアンドノーフ株式会社代表取締役)

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